Mahler/交響曲第1番 [交響曲(マーラー)]
更新頻度が大きく落ちたので2年以上かかりましたが、今回の第1番でマーラーの交響曲のサイクルがまた一回りします。例によって昔懐かしい録音をご紹介します。国内盤は現役でないようなので輸入盤です。
この録音当時(1981年)バリバリの壮年期だったアバドも、大病を経て、今や老境に入ってきました。マーラー・サイクルもベルリン等との2回目があるのですが、個人的には80年代を中心としたシカゴ・ウィーン等との1回目のサイクルのほうがインパクトがあったように思います。このシリーズは、鳥の羽をモチーフにしたジャケットも印象的でした。
デジタル録音の走りということもあり、当時は録音の良さも話題になりましたし、アバドの「清新な」解釈も「新世代の指揮者による新しいマーラー像」というイメージが強かったですね。アメリカ随一の若手指揮者として頭角を現してきていたレヴァインやメータ(NYPへ行って大コケになった時代でした)、小澤などとならんで、アバドが非常に注目されていた時期でもあります。シカゴ、LSO、ウィーン・フィルなどとのDGへの一連の録音は、いずれも高い評価を受けていました。
当時、既にマーラー・ブームの真っただ中でしたが、交響曲全集のCDだけでも何種類も発売され、プロアマ問わず次から次へと演奏される今日とは、はやり方のレベルが違いました。第1、第5あたりはそこそこポピュラーでしたが、第7や第9を実演で聴くことは稀な時代でした。いきおい、どうしても聴体験は録音が中心になります。
その中で、70年代後半からはじまったアバドのDGへの録音は、解釈の清新さ、オーケストラのアンサンブルの確かさや音の良さなど多くの要素が評価されていました。このCSOとの第1の録音も、当時かなり話題になったものです。実は私が一番最初に何枚か購入したCDのうちの1枚でもあります。
さて、録音・発売から30年近く経って久しぶりに聴いてみると、音はデジタル初期の不自然なバランス(妙に高域が強調され、中域が貧弱)ですし、昨今のレベルの高いオーケストラの演奏と較べると、アンサンブルも「鉄壁」というわけではありません。アバドの指示の不徹底さ、というより当時はみんなこんなものだったのでしょうが、音の終いがそろっていなくて、雑な感じがするところがあったり…。
往時の「完璧な録音」というイメージとはずいぶん違って聞こえました。こちら(聴くほう)もこの4半世紀あまり、それなりに聴体験を積み、耳が肥えてしまったということもあるでしょう。また少なくともマーラー演奏に関しては、どこのオーケストラでも1980年代と現代ではレベルが違うと思います。
とはいえ、静謐な冒頭から盛り上がる終末まで聴き続けられないわけではありません。それどころか、だんだんこの録音の世界に慣れ、最後は壮年期のアバドが目の前で振っているように錯覚しそうになりました。今の若い人に「これが第1の規範的な録音だ」と薦められるものではないかもしれませんが、40~60歳くらいのリスナーにとって、思い出深い録音であることには変わりないと思います。
楽譜は、コントラバスの「solo」の指定が無くなるなどの改訂を受けた協会版が最新ですが、とりあえず聴く分には国内版で十分でしょう。
OGTー1446 マーラー 交響曲第1番 (改訂版) (Philharmonia miniature scores)
- 作者: マーラー
- 出版社/メーカー: 音楽之友社
- 発売日: 1977/04
- メディア: 楽譜
今年の更新はこれが最後です。それでは皆様、どうぞよいお年をお迎えください。
私もマーラーのCDはアバド中心です。
聴き比べしたわけではないので、評価は差し控えますが…。
学生時代は4回の定期演奏会のうち2回がマーラーでした。
今年は9番と4番を演奏、来年夏は5番をやる予定です。
どうぞよいお年を…。
by Lionbass (2010-12-29 16:15)
Lionbassさん
いつもありがとうございます。私がオケに入って「マーラーやりたいです」と言ったら、先輩に「去年やったから当分やらないよ」と言われたにもかかわらず2年の定期で演奏できました。アマチュアのマーラー演奏頻度は、当時から比べると本当に隔世の感がありますね。
by stbh (2010-12-31 08:45)