Mahler/交響曲第10番(クック版) [交響曲(マーラー)]
マーラーの第10番と言えば「第1楽章だけ完成している」というのが、私がクラシックを聴き始めたころの常識でしたが、その後、クック版をはじめとする補筆完成版の録音が徐々に増えてきて、次第に5楽章版も市民権を得つつあるように思われます。逆に「マーラー協会版」として出版されている第1楽章が、実は完成されていない(オーケストレーションが不十分)ことも知られてきました。今回はシャイーの全集から、5楽章版を聴きました。
Mahler: Symphony no 10 / Chailly, RSO Berlin
- アーティスト: Gustav Mahler,Riccardo Chailly,Berlin Radio Symphony Orchestra
- 出版社/メーカー: Decca Import
- 発売日: 2000/06/13
- メディア: CD
さすがに中古しかないようですね。実はCD1枚に収まる時間なのに、あえて「浄夜」と組んで2枚組にしてあるのは、シェーンベルクなどへつながっていく音楽であることを強調したかったからでしょうか。
第10番は第1楽章で終わり、という指揮者はまだ多いようです。近年、数多くのマーラー交響曲全集が出揃っていますが、律義に協会版とクック版の両方を録音しているのはインバルだけ。クック版を採用しているのはラトル、シャイーくらい。バーンスタイン、テンシュテット、アバド、シノーポリなどはみんな1楽章のみの協会版での録音でした。
最近、全集を完成したジンマンはカーペンター版で録音したようですが、この編曲(リットン/ダラス響のCDで聴きました)はいかにもキワモノ的な感じがします。また、ほぼ全曲を録音しているレヴァインは、第1楽章は協会版、残りの楽章はクック版という折衷型の録音でした。
これ以外の全集は第1楽章だけの録音がほとんど、中にはショルティのように録音していない人もいます。ワルターも「第10番」は認めなかったように記憶しています。私はたまたま、早い時期にウィン・モリス指揮のレコードを入手して親しんでいたので、第10番は5楽章ないと物足りないクチですが、そういうのはまだ少数派かもしれませんね。
さて、シャイーの録音、オケがコンセルトヘボウでなくベルリン放送交響楽団なのでイマイチ、という向きもあるようですが、なかなか温かみのある、良い音がしているように思います。特に両端の緩徐楽章のやさしく包み込むような響きは、この曲に良くマッチしていると感じました。これらの楽章の有名な不協和音の部分も、ことさらに不安感をあおるのではなく、息の長い全曲の一部分として落ち着いて聴けます。
中間3楽章、ことに2、4のスケルツォ楽章も、クック版のストイックなオーケストレーションと相俟って落ち着いた雰囲気なので、エキセントリックな演奏を求める向きには物足りないかもしれません。爆発するか抑制するかはどちらが正しいという問題ではなく、どちらの行き方にも理はあると思いますが、終始落ち着いたシャイーのアプローチは、じっくり、しっとりとこの曲を聴かせてくれると思います。今回、この録音をじっくり聴いて、他の録音も聴いてみたくなりました。
残念ながら、Amazonで第10の楽譜の扱いは(第1楽章のみでも)ありません。通販だと例えばこんなのがあるようです(購入に関しての責任は当方では一切負いません、念のため)。
http://www.sheetmusicplus.com/title/Symphony-No-10/3140594
おさかな♪さん、ぼんぼちぼんぼちさん、ご来訪とnice!ありがとうございます!更新頻度がなかなか戻りませんが、今後ともよろしくお願いします。
by stbh (2010-12-25 19:36)