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Mahler/「若き日の歌」から [声楽曲(マーラー)]

 「マーラーの歌曲」というとオーケストラ伴奏をイメージしますが、ピアノ伴奏だけでオーケストレーションされなかった初期の歌曲があり、「若き日の歌」としてまとめられています。今日はその中から4曲を、昔のライヴ録音で聴きました。

マーラー/「若き日の歌」より(夏の小鳥の別れ、もう会えまい、緑の森を楽しく歩いた、いたずらな子をしつけるために)

ソプラノ:ルチア・ポップ
ピアノ:ジェフリー・パーソンズ
1980年5月5日

演奏会場が不明なのが残念ですが、マーラーも得意にしていたチェコ出身の名歌手ルチア・ポップと、これも伴奏ピアニストとして名高いジェフリー・パーソンズのコンビで、「子供の不思議な角笛」の詩による曲が歌われています。もちろん演奏会はもっともっと多くの曲が歌われていたのでしょうが、これだけしか残っていないので、詳細不明です。

この録音↓は翌年(1981年)のザルツブルク音楽祭でのライヴですが、マーラーは上記の4曲がすべて歌われているので、演奏(解釈)はきっと似たようなものでしょう。

ルチア・ポップ:ザルツブルグ・ライヴ  (Prokofjew; Kodaly; Dvorak; Mahler; Brahms: Ausgewahlte Lieder)

ルチア・ポップ:ザルツブルグ・ライヴ (Prokofjew; Kodaly; Dvorak; Mahler; Brahms: Ausgewahlte Lieder)

  • アーティスト: プロコフィエフ,コダーイ,ドォルザーク,マーラー,ブラームス,ルチア・ポップ(S),パーソンズ(P)
  • 出版社/メーカー: ORFEO
  • メディア: CD

 

残念ながら、

ポップもパーソンズも亡くなってから10年以上経ちます。とくにポップはまだまだ衰えを見せない50代前半で癌に冒されて急逝してしまいました。 

ルチア・ポップは、その澄んだ声とチャーミングな容姿で、当時からファンが多い歌手の一人であったと思います。シュトラウス、シューマンなどドイツ系のリートを中心にそのレパートリーは広く、1980年前後だとヤナーチェクのオペラのヒロインとして多くの録音に参加していました。マーラーについても、ショルティの「千人」、テンシュテットの「第4」などの交響曲や各種の歌曲など、多くの指揮者との競演が録音として残っています。

歌曲集「若き日の歌Lieder und Gesänge aus der Jugendzeit(マーラーがもともとつけたタイトルは単に歌曲集Lieder und Gesängeだったらしいです、たとえばこちら参照)」は1880年から1890年ごろ作曲されたそうです。手元の古い楽譜には「1882-1884年ごろ作曲」と書いてあるので、このへんは研究が進んで年代が特定されてきたということですね。今回取り上げられている4曲はいずれも「子供の不思議な角笛」の詩に曲がつけられており、これらの作曲年代は1880年代後半、第1交響曲の初演(「交響詩」として)-改訂や第2交響曲の構想と時期がダブっています。

1.夏の小鳥の別れ
「カッコウが落ちて死んだ、誰が楽しませてくれる?今度はうぐいす(ナイチンゲール)が歌うだろう」という歌詞。何の比喩なのか良くわかりませんが、内容より、旋律だけでなく伴奏の音形を含め、第3交響曲の第3楽章の主題に転用されていることで有名ですね。鳴き声をまねているのではなく「カッコウが(落ちて死んじゃった)!」という意味なので直接比較はできないかもしれませんが、「Ku-kuk!」と歌われる部分は、第1交響曲のように4度ではなく3度の音程です。

2.もう会えまい
一転して、「再開を期して別れた恋人の許へ戻ってみると、彼女は既に死んでいた」という歌詞の、暗く重い曲。全曲との表情の対照が、歌手としてのウデの見せどころになるのでしょう。

3.緑の森を楽しく歩いた
「静かな森の中を歩くと鳥の声が聞こえる」と、森を歩く喜びをしっとりと歌いあげる曲。実はこの若者、恋人に会いに行くために森を歩いているのですね。最後に、寝ている恋人にナイチンゲールが「気をつけて眠りなさい」と言うのがヒネリになっています。ピアノの伴奏はホルンを模しているのだそうです。

4.いたずらな子をしつけるために
この曲集の中でも有名な曲。「いい子にお土産を持ってきた」という紳士におかみさんが「ここにいるのは悪い子ばかり」と答えてしまったので、「悪い子には用は無い」と紳士は帰ってしまう、という、まあ一種の寓話なのでしょうか。快活な旋律に乗せた紳士とおかみさんのユーモラスなやり取りが楽しいです。ちなみに、ここでのカッコウの鳴き声は「4度-3度」になっていて、前半の4度が第1交響曲につながると言えなくもないですね。

以上4曲は急-緩(単調)-緩(長調)-急で並べられており、全部で10分余りではありますが、シンフォニックなサイクルを構成しています。ポップとパーソンズの豊かな表現力が、いっそうこれらの曲の対照を際立たせています。と簡単に書いてしまいましたが、情感に満ちあふれる歌(歌手も、ピアノも)はとても豊かな気持ちにしてくれます。二人とも、早くに亡くなってしまったことが悔やまれます。

残念ながら、ざっと探しただけでは楽譜が見つかりませんでした。私の手元にあるのはポケット・スコア・サイズの「ドイツ名歌曲全集」マーラー歌曲集第1巻(音楽之友社、1975年第1刷発行)で、これには「角笛」の歌詞による5曲が収められています。

最後に、ルチア・ポップの代表的な録音はこちらのサイトで知ることができます。リンクさせていただきますm(_ _)m
http://franzpeter.cocolog-nifty.com/taubenpost/2008/12/15-abac.html

○追記:マーラーではありませんが、YouTubeにシュトラウスの「春の声」を歌った若いころ(1965年)の動画がありましたので、あわせてリンクを貼ります。映画か何かの一部なのでしょうか?クレンペラー盤の夜の女王を歌ったりして「コロラトゥーラ」としてならしていたころですね。
http://www.youtube.com/watch?v=bV7nm35eSag


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