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Mahler/交響曲第6番 [交響曲(マーラー)]

「中間楽章はアンダンテ、スケルツォの順」という見解がマーラー協会から出されてかなり経ちます。最近はこの楽章順で録音されたものもずいぶん増えてきたので、そのうちのひとつを聴いてみました。

マーラー:交響曲第6番「悲劇的」

マーラー:交響曲第6番「悲劇的」

  • アーティスト: マーラー,ジンマン(デイヴィッド),チューリヒ・トーンハレ管弦楽団
  • 出版社/メーカー: BMG JAPAN
  • 発売日: 2008/12/03
  • メディア: CD

2枚組で第1楽章だけ1枚目、第2-4楽章が2枚目に収録されています。第2あるいは第3楽章までを1枚目に入れなかったのは、第2-4楽章を一気に聴いてほしい、というよりは、第1、2楽章間の不慣れなギャップを緩和しようという意図があったのではないでしょうか。リスナーとしては、そこの「違和感」というか、新しい感触をいちばん体験したいと思うのですが…。

発表当時、マーラーが「これまでの私の交響曲をすべて理解した者だけが、この曲を理解できる」と言ったという話があります。優に1時間を超える長さ、各楽章の緊密な構成や対位法、理解の助けになるプログラムや声楽(歌詞)が無いことなど、なるほどちょっととっつきにくいところはあり、1970年ごろまではマーラーの作品の中では第7と並んでマイナーな存在でした。しかし現在では、劇的な展開や複雑なオーケストレーション、それにハンマーやカウベルなど特殊楽器へのオーディオ的な興味も相俟って、人気曲と言っても差し支えないでしょう。

マーラーの言葉の裏には、これまで破天荒な交響曲ばかりを作ってきたけれども、ここで古典に立ち返ったぞ、という逆説的な意味が含まれているのではないか、と思います(最近、そう思うようになりました)。

第6は、マーラーの交響曲の中で、ある意味「いちばんふつう」の曲です - 第1、4楽章がソナタ形式(第4楽章は序奏あり)、中間楽章が緩徐楽章とスケルツォの4楽章構成で、第1楽章の提示部には繰り返し記号があります。すなわち、構成の妙やテキストに頼らず、正攻法で取り組んだ結果の作品という自負があったのではないでしょうか。 

何も、人生の最も幸福な時期にこんな「悲劇的」な曲を書かなくてもよいだろうに、とアルマでなくても感じますが、「古典的な交響曲形式に終止符を打つ」くらいの気概があったのかもしれませんね。 

さて、録音についても簡単に(ディスクはSACDハイブリッドですが、例によって通常のステレオでしか聴いていませんのでご承知置きください)。ジンマンのマーラー・ツィクルス、他の録音は聴いていませんが、最近ではめずらしいスタジオ・セッションによるもので、音はよいです。例えばシンバルなど、どんなバチで叩いているかわかるくらい、クリアな音で捉えられています。ただ、一つ一つの音が立ちすぎていて、例えばチェレスタやグロッケンなどはバランスがあまり自然でなく感じられるところがありました。

解釈は、…なんというのでしょう、一言では表しにくいですね。基本的にはあまりテンポを変えない、あっさりしたアプローチだと思いますが、フレーズの終わりのリタルダンドが多用されていて、その部分だけいささか前時代的に聞こえます。第3楽章(スケルツォ)が遅いのは、この楽章構成ならではの実験なのでしょうか。最初はびっくりしますが、じっくり聞けて、これはこれでよいように感じました。

ところで、このケースはCDを2枚重ねて入れる仕様になっています。これはよくない!CDにキズをつけやすいです。勘弁してほしいなあ。

最後に楽譜のリンクをひとつだけ。

Symphony No. 6 in a Minor

Symphony No. 6 in a Minor

  • 作者: Gustav Mahler
  • 出版社/メーカー: Dover Pubns
  • 発売日: 2003/03/27
  • メディア: ペーパーバック

 

円高の今なら、なんと3ケタで購入できます。持ってはいないので協会版(新・旧)との異同はよくわかりませんが、多少の違いはあると思いますので、コダワル方はお気をつけください。


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Lionbass

ええ!?
マーラーのスコアが1000円以下ですか?
それは驚きです。
私(たちの学年)にとっては、1年生のときにやった思い出の曲ですが、当時はスコアが高くて、手が出ませんでした。
「勉強のため」といって、誰かに借りて写譜に挑戦しましたが、1楽章で挫折しました。
by Lionbass (2009-04-27 11:41) 

stbh

Lionbassさん、ご来訪とnice!ありがとうございます。
そうなんですよ、ドーヴァーのミニチュアスコアは、軒並み1000円を切っています。古い版のリプリントなのでマーラーなどは「協会版(批判全集)」と微妙に違いますが、納得できれば「買い」だと思います。

1楽章だけでも写譜するって、すごいパワーです…。学生ならでは、ということでしょうか。良い勉強にはなったでしょうね。
by stbh (2009-04-27 23:48) 

サンフランシスコ人

ボルチモアで、ジンマン指揮ボルチモア交響楽団の演奏会に一回だけ行きました。
by サンフランシスコ人 (2009-04-30 04:23) 

stbh

サンフランシスコ人さん、いつもコメントありがとうございます。
やはりオケは「地元」で聴くのがいいですね!私も1度だけボルチモアに1週間程度滞在したのですが、ちょうどシンフォニーの演奏会が無い週でした…。
by stbh (2009-05-03 09:28) 

サンフランシスコ人

ボルチモア響は、解散になる可能性があります。

by サンフランシスコ人 (2009-06-28 05:25) 

stbh

ええー、本当ですか!

ホームページhttp://www.bsomusic.org/を見ると、ディズニー、サイコ、FFなどいろいろなコラボ企画があり、そういう話を聞くと苦労しているのかもしれない、と感じますね。
by stbh (2009-06-28 13:36) 

サンフランシスコ人

寄付金が非常に少ないです。
by サンフランシスコ人 (2009-06-29 05:15) 

stbh

そうですか…。きっとどこも大変なのでしょうね。
by stbh (2009-07-01 22:14) 

サンフランシスコ人

ニューヨーク・フィルは、今夏もちゃんと公演を続けています。
by サンフランシスコ人 (2009-07-11 04:31) 

stbh

やはりトップクラス(ビッグ5+LA?)あたりとその他ではどうしても差が出てくるのではないかと想像します。日本の団体も苦しいです。
by stbh (2009-07-14 22:17) 

サンフランシスコ人

サンフランシスコ響もちゃんと公演を続けています。
by サンフランシスコ人 (2009-07-23 02:38) 

stbh

失礼しました。
by stbh (2009-07-25 07:25) 

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