SSブログ

Wagner/交響曲 [交響曲(独墺系)]

作品の数とその及ぼした影響の比でみると、いちばん大きい作曲家はワーグナーではないでしょうか。十曲あまりのオペラ/楽劇以外にも、作品としては「ジークフリート牧歌」や歌曲などがありますが、それらとて数えるほど。その中でも、この曲はもっとも影響力が小さいほうに入るのではないでしょうか。今回聴いたディスクはAmazon、Towerrecordsでは探せなかったので、HMVのリンクを貼っておきます。

Hans Schmidt-Isserstedt
Richard Wagner/ Orchestermusik
http://www.hmv.co.jp/product/detail/1799361 

シュミット=イッセルシュテットと手兵北ドイツ放送交響楽団の、EMIから発売されているシリーズのうちの1セット(2枚組)。アルバム全体では1952年から1972年まであしかけ20年にわたる録音が収められており、「交響曲ハ長調」は62年のモノラル録音です。スタジオ録音ですが、音質はまあまあ、例えば1950年代後半のDECCAほどクリアではありません。

さてこの曲は、ワーグナー19歳の、いわゆる「若書き」の作品で、ベートーヴェンを強く意識した(解説によれば特に第7交響曲だそうです)ものなので、あまり「ワーグナーの個性」は発揮されていません。曲の規模は若干大きいですが、ハ長調という調性も手伝って、シューベルトの初期交響曲のような、素直で若々しく「あっけらかん」とした響きが横溢しているように感じます。

第1楽章は、冒頭のしつこいトゥッティの和音からしてベートーヴェンの第3、第7といった勇壮な曲を想起させます。主題や展開は独創性に富んだもの、とは言いがたいですが、ところどころに後のワーグナーの諸作品と似たような響きを感じます。第2楽章も「緩徐楽章」と呼ぶには立派で堂々としており、ベートーヴェンの第3や第5の影響が強く感じられますね。

第3楽章は、表題にこそなっていませんが明らかにスケルツォで、第7や第9のそれと性格が良く似ています。第4楽章はいささか小ぢんまりとしており、第4あたりと共通点があるでしょうか。思いのほかあっけなく終わってしまうので、ちょっと物足りないように思います。

いかに重鎮ワーグナーと言えど、さすがに19歳では円熟とは程遠いですが、後期の大楽劇とは似ても似つかない曲想のギャップが、かえってこの曲の魅力となっているのではないでしょうか。シュミット=イッセルシュテットの解釈はベートーヴェン(VPOとのデッカへの録音)のときと同様で、「曲に自らを語らせる」ような自然な流れで聴かせています。当時にしてはケレンの少ない、あっさりした解釈なのかもしれませんが、曲の姿を良く見せてくれていると思います。

なお、このCDの中の他の曲では、特にパルジファルの前奏曲が幽玄でお勧めです。やはりシュミット=イッセルシュテットも「劇場の人」だったのだなあ、と再認識した次第です。


nice!(1)  コメント(1)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

nice! 1

コメント 1

stbh

Lionbassさん、ご来訪とnice!ありがとうございます!
by stbh (2009-05-17 17:34) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。