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Strauss/ドン・ファン [管弦楽曲]

リヒャルト・シュトラウスの初期の作品、とりわけ、わかりやすいこの曲は、カッコイイ演奏で聴きたいです。アクの強いこんな人はいかがでしょう?

R.シュトラウス:名演集

R.シュトラウス:名演集

  • アーティスト: マゼール(ロリン),R.シュトラウス,バイエルン放送交響楽団,レーン(アンドレアス)
  • 出版社/メーカー: BMG JAPAN
  • 発売日: 2003/03/26
  • メディア: CD

 

リンクは後年のバイエルン放送交響楽団とのものですが、私が聴いたのはアナログ末期、1979年にクリーヴランド管弦楽団と録音されたものです。残念ながら現在は流通していないようです。SONY/BMGになって音源が豊富になった分、販売される録音は減っていくのかもしれませんね。ユニヴァーサル(DECCA/DG/PHILIPS)のカタログにも同じことを感じます。

マゼール/クリーヴランドの70年代後半から80年代にかけてのSONY時代の録音は、音のよさもさることながら、マゼールの「男伊達」みたいなものが良い面に出たものが多いように感じます。特に「英雄の生涯」(これもアナログの優秀録音です。いろいろ賞をとってましたね)と「ドン・ファン」「ティル」「死と変容」は、最良のものに入ると思います。

「ドン・ファン」はリヒャルト・シュトラウスの交響詩第2作、20代前半の作品です。冒頭の疾走するアルペジオから暖炉の火が消え入るような終結まで、ドン・ファンの波乱に満ちた生涯を描くのに無駄な音はひとつも無い、とでも言いたげな、緊密な音楽が鳴り続けます。マゼールは早い部分は駆け抜けるように、遅い部分は優美にといつものように(いつにも増して?)表情豊かに振り分けていますし、それを音にするクリーヴランド・オケのアンサンブルも絶好調です。
リヒャルト・シュトラウスは「音楽で描けないものは何も無い」と豪語したそうですが、彼の作品、特に一連の交響詩をこういう見事な演奏で聴くと、本当にそう思ってしまいます。彼の作品を精神性、高尚さに欠けるとして貶める人もままありますが、けっこうじゃないですか。自分を英雄になぞらえたり、家族のことを臆面もなく作品にしたり、愛すべき、一流の「俗物」と言えるのではないでしょうか。
この録音、スコアを見ながら聴くと、フレージングが忠実に再現されている、というか強調されているのがわかります。場合によってはさらっと流してしまうフレーズでも、一音一音のスラーとスタッカートを弾きわけているので、濃密な印象を受けるのかもしれませんね。というわけでスコアのご紹介、国内版が3種出ています。
オイレンブルクスコア リヒャルトシュトラウス/交響詩≪ドンファン≫ (オイレンブルク・スコア)

オイレンブルクスコア リヒャルトシュトラウス/交響詩≪ドンファン≫ (オイレンブルク・スコア)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 全音楽譜出版社
  • 発売日: 2007/02/22
  • メディア: 楽譜

 

 

 

これは音楽学者ノーマン・デル・マーの監修によるもの。 開始間もない、練習番号Cの4小節前のシンバルに「オリジナルのパート譜に書いてあるので、既存のスコアには無いが入れた」と注釈がついています。確かに、次にご紹介するスコアや、私の持っているドーヴァーのスコアには、この音がありませんでした。これまで聴き覚えのある演奏・録音には全て入っていたように思います。

スコア YS-1 交響詩 ドンファン op.20 R.シュトラウス

スコア YS-1 交響詩 ドンファン op.20 R.シュトラウス

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: ヤマハミュージックメディア
  • 発売日: 1999/09/27
  • メディア: 楽譜
  • ヤマハがポケットスコアに進出して最初に出版されたものです。こちらは練習番号Lのコントラファゴットに、「ppで演奏できないときには(1オクターヴ高くなるが)第2ファゴットで演奏する云々」という注釈がついています。マーラーに限らずシュトラウスも、スコアも出版社や時期が違えば、いろいろ相違が出てくるようですね。
 
No.281 ドンファン/R.シュトラウス

No.281 ドンファン/R.シュトラウス

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 日本楽譜出版社
  • 発売日: 2005/04/25
  • メディア: 楽譜

最後は国内で唯一、全て自社で版を起こしている日本楽譜からのもの。こちらは残念ながら実物を見ることができませんでした。ここしか出版していないスコアも数多くあります。個人的にはひそかに応援している出版社です。
蛇足ですが、私が持っているCDでカップリングされている「英雄の生涯」は「横綱相撲」とでも形容したくなるような堂々たる演奏、「ティル」はテンポの緩急や音の強弱をより強調した、誇張の多い寓話にふさわしい愉快な演奏で、いずれも楽しめます。中古店で見かけたら、迷わず「買い」ですよ。

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コメント 4

mozart1889

こんにちは。
マゼールのR・シュトラウス、好きです。クリーヴランド管との演奏はLP時代の愛聴盤でして、「英雄の生涯」の中世の騎士姿のジャケットなど、演奏とともに実にカッコイイものでした。スッキリ快演、若々しい名演奏でした。
バイエルン放送響とのRCA盤は、昨年4枚組2,000円という大変な廉価で輸入盤を入手できました。これは音も良く、壮麗な演奏で、これまたカッコイイものでした。マゼールは、R・シュトラウスに向いているんでしょうね。
by mozart1889 (2008-12-07 16:21) 

stbh

mozart1889さん、こんにちは。いつもありがとうございます。
そうそう、あの騎士のジャケット、カッコよかったですよね。LPだといっそう迫力ありますよね。
RCA盤もカッコイイですか!(^_^) 聴いてみたくなりました。
by stbh (2008-12-08 06:55) 

たか

はじめまして。たかと言います。
オイレンブルク版の注釈はさすがですね。
BPOは70年代の演奏にはこのシンバルはなくて80年代の演奏から入っているそうです。パート譜が変わったのでしょうか。
記事に引用させて頂きました。
by たか (2009-01-02 22:03) 

stbh

たかさん

ご来訪とコメントありがとうございます。引用とトラックバックもいただき、恐縮です。

IMSLPもインディアナ大もお世話になっています。若いころにヤマハやアカデミアで高い輸入版を買った曲も、多くが国内版やDover(アマゾンでかなり安くなりましたね。最初のころはamazon.comから輸入していました)で出されるようになり、スコアを入手する環境はずいぶん良くなったように思います。

「ドン・ファン」のシンバルについて追加させていただきますと、私が80年代前半に演奏したときには、このシンバルはパート譜にありました。私の感覚からすると、パート譜はスコアに比べると間違いが多いように思うのですが、この場合はどちらなのでしょう…。
by stbh (2009-01-03 16:28) 

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