SSブログ

Puccini/Turandot1 [オペラ]

いやーすっかり夏だなっ!と思っていたら、いきなり台風がばんばん来だしましたね。さて台風とは全く関係ないのですが、縁あって、こちらに参加させていただくことになりました。

http://www.shinjuku-opera.com/

もう本番まで1ヶ月を切ってしまいましたが、追い込みのため8月はこの曲をヘビーローテーションで聴くしかない状態です(^^; 今月は、この曲にまつわる話とともにいくつかの録音をご紹介していきます。

最初は、この録音から。

プッチーニ: 歌劇 「トゥーランドット」

プッチーニ: 歌劇 「トゥーランドット」

  • アーティスト: ニルソン(ビルギッド), ローマ国立歌劇場合唱団, ニルソン(ビルギット), スコット(レナータ), ファリーナ(イーダ), バルトリアーニ(イェーダ), ジャイオッティ(ボナルド), モレーシ(ジュゼッペ), マッツィーニ(グイド), コレルリ(フランコ), リッチャルティ(フランコ)
  • 出版社/メーカー: 東芝EMI
  • 発売日: 1996/07/17
  • メディア: CD
国内盤は品切れのようですが、輸入盤なら現役です。
Puccini: Turandot

Puccini: Turandot

  • アーティスト: Bonaldo Giaiotti, Guido Mazzini, Giacomo Puccini, Francesco Molinari-Pradelli, Gianni Lazzari, Rome Opera Theater Orchestra & Chorus, Birgit Nilsson, Renata Scotto, Angelo Mercuriali, Franco Corelli
  • 出版社/メーカー: EMI
  • 発売日: 1990/10/25
  • メディア: CD
本やサイトを見ると、「トゥーランドットの決定盤!」と書かれているものもいくつかありました。1966年初出、ニルソン以外はほとんどイタリア人の歌手で固められた録音です。EMIはカラスの録音があったと思うのですが、ステレオでは最初でしょうか。他の主役級はカラフにフランコ・コレッリ、リューにレナータ・スコットで、確かにこの3人がそろってすばらしいのは、この録音かもしれません。
クラシック・ファンの方は、オリンピックがなくても、この曲はよくご存知だったですよね。プッチーニ最後の、未完のオペラ。「最後のグランド・オペラ」とも呼ばれるように、多くの歌手、合唱、管弦楽がそれぞれ活躍する大規模な曲です。とはいえ、基本的なオーケストラは通常の特殊3管編成で、プッチーニの常としてテューバではなくコントラバストロンボーン(チンバッソ)が用いられているくらい。ちなみに、今回の公演でもちゃんとチンバッソが用いられています。
大規模なのはその他の「味付け」的な編成で、ハープ2台、チェレスタ、オルガンに加えて、音程のある打楽器がたくさん(シロフォン、バス・シロフォン-これは今回は残念ながら音程の広いシロフォン1台で代用、鉄琴、チューブラーベル、クロマティック・ゴング(音程のある小型のドラ。この曲では1オクターヴ使われます))出てきます。そしてバンダのサクソフォン、トランペット、トロンボーン、合計12人。
普通の打楽器もひととおり使われていますが、特に目立つのはドラ(銅鑼)。オーケストラ内のものも各幕の最後の盛り上がりなどに大活躍しますが、これ以外に舞台上(第1幕で「なぞ」に挑戦する異国の王子=カラフが3回鳴らす)や舞台裏(第3幕の冒頭、お触れの場面)でも鳴ります。
メインの歌手は9人。女声はソプラノ二人だけですが、二人ともヒロインといえるほど重要です。。
トゥーランドット(ソプラノ)タイトル・ロールが全曲の半分でしか歌わない(第1幕に姿はみせますが)というのも異例なら、要求されるパワーもプッチーニにしては異例。
皇帝アルトゥム(テナー)皇帝なのに、弱々しくてお姫様を抑えられない、損な役どころ。
ティムール(バス)ダッタンの王。リューとともに北京に流れ着いて、息子カラフと出会う。
異国の王子(カラフ)(テナー)トゥーランドットのなぞに挑む王子。ご存知のアリア以外にもハイCはガンガンあるし、第2幕第1場以外は最初から最後まで出ずっぱり。しんどさは全役中でいちばんか。
リュー(ソプラノ)ティムールを守り、人知れずカラフに思いを寄せる奴隷女。第1幕から登場し最後近くで死んでしまう、劇場中の同情を一心に集める、プッチーニ型(?)のヒロイン。プッチーニと台本作家が創作した登場人物。
ピン(バリトン)、パン(テナー)、ポン(テナー)「コメディア・デラルテ」の流れをくむといわれるズッコケ3人組。この人たちが芸達者だと、舞台が締まるでしょう。実は、歌うのはけっこう大変。素人σ(^^)だと楽譜を見ながらでも無理です。
役人(バリトン)人物の登場順に紹介してある本やCDなどだと最初に書かれていますが、出番は冒頭と「謎解きの場」のはじまりの2箇所だけ。
他に、ペルシャの王子(「トゥーランドット!」一声だけ)、兵士たち、トゥーランドットのお付きたち、群集など。このへんは合唱が千変万化(のはず)。
曲の特徴としては、5音音階を活用しながら不協和音や複調など、新しい音楽の潮流に乗っていることがあげられます。また、聞き流す分にはそれほど違和感を感じないのですが、譜面は変拍子の嵐です。この辺はおいおいご紹介を。
いきなりfffのユニゾンで幕開きのあと、嬰ハ長調(C#-F-G#)とニ短調(D-F-A)の複調の和音が鳴り響くと、木琴とドラに導かれて、役人が、これからペルシャの王子が処刑されることを告げます。この部分だけでも、その斬新さは十分わかると思います。
北京に流れ着いてきたティムールとリューが偶然王子と行きあうが、王子はペルシャの王子の処刑執行の合図に出てきたトゥーランドットに一目ぼれ。3大臣の制止も聞かず、亡霊にも負けず、ティムールやリューの説得も振り切って謎解きに挑む、というところまでが第1幕です。構成は(イタオペにしては、というと物議をかもすか?)緊密で、35分前後になりますがまったく飽きません。
上に挙げた「味付け」はいたるところにちりばめられていますが、中には言われるまで気がつかないようなものもあります。例えば、3大臣が王子を引き止めている場面、「百の胸が、百の褥(しとね)にだぞ!」と言っているウラで、シロフォンがひっそり「テケテン」というリズムを1回だけ、ピアノで演奏しています。実は第1幕にもう1箇所(もっと前です)、バス・シロフォンとティンパニがpで「テケテン」をやっているところがあります(シロフォンとトランペットの、fのやつではありません)。探してみてください。
リューの有名なアリア、王子のアリアのあとはティムール、さらに3大臣や合唱も加わって、幕切れ=王子がドラをたたいて挑戦を宣言する=までぐんぐん盛り上がっていくところです。しかしここはフラット6個の変ホ短調、3+2+3(譜面上は9/4+6/4+9/4)という変則拍子なので、オーケストラはなかなか感情移入して盛り上がりにくいところではあります。

変ホ短調など、フラット系の調の多用は、ピアノで作曲するときに弾きやすい(黒鍵で5音音階ができる)という説もありますが、開放弦を使わない、くすんだ響きがほしかった、というほうがしっくり来ます。オペラの最後はニ長調で終わるわけですし、決してイージーに調を決めているわけではないと思います。

こんな調子で、あと何回か書き散らしていきます。よろしければどうぞお付き合いを。


nice!(2)  コメント(6)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

nice! 2

コメント 6

ensemble

「トゥーランドット」やるんだ!
素晴らしい!
大成功、祈念します。
ピン・ポン・パン、ふざけていて面白いですよね。
次回も楽しみにしています。
by ensemble (2006-08-09 15:16) 

ようちゃん

stbh さん、こんばんは。
いやー、何とも羨ましいです。「トゥーランドット」をやるんですか!
「譜面は変拍子の嵐」とは、知りませんでした。
「テケテン」ですね、頑張って探してみます。
この続きも期待しています!
by ようちゃん (2006-08-10 23:58) 

stbh

ensembleさん、ご来訪ありがとうございます。「トゥーランドット」にオーケストラで参加する、というのは非常に貴重な機会なので、よい舞台になるよう、貢献したいと思っています。大臣3人組、聴くだけでも面白いですが、映像を見るといろいろな振り付けもあって、体を動かしながら暗譜であの難しいアンサンブルを「面白おかしく」聴かせなければならない。歌手ってたいへんだなー、と思いました。
by stbh (2006-08-11 09:03) 

stbh

ようちゃん さん、ご来訪ありがとうございます。「ハルサイ」ほどではありませんが、拍子がコロコロ変わります。3/4で進んでいるところに5/8が割って入ったり、拍子の違う何小節かがひとフレーズになっていたり、歌詞に合わせて拍が増える小節があったりと、譜面で見ると聴いていたものと印象がとても違います。おまけにアリアなどの聞かせどころでは、譜面以上にフェルマータが入りますし、スリリングです(^^; 演奏するほうは楽しめます。見て/聞いていただける方にも楽しんでいただけるような演奏をめざします。
by stbh (2006-08-11 10:21) 

おさかな♪

わ~、新宿文化☆
素敵な演奏会になりますよう、応援しています。
夏に涼しげ(?)な演目ですね♪
by おさかな♪ (2006-08-15 01:53) 

stbh

おさかな♪さん、こんにちは。nice!と応援コメント、ありがとうございます。
トゥーランドットは夕方から翌朝までの物語なのです。殺された亡霊も出てきますし、多少は涼しげでしょうか。やっているほうは汗(冷や汗)だくですが(^^;
by stbh (2006-08-15 17:44) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

Cream/LiveCream2Puccini/Turandot2a ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。