SSブログ

Ravel/Bolero [バレエ音楽]

冒頭にボリュームを上げておくことさえ忘れなければ(あと、外の音が聞こえるように、ときどき小さくすることをいとわなければ(^^)、リズムはしっかりしているし、メロディーはキャッチーだし、車向けです…よね…。

ラヴェル:ボレロ

ラヴェル:ボレロ

  • アーティスト: アバド(クラウディオ), ロンドン交響楽団, ラヴェル
  • 出版社/メーカー: ユニバーサルクラシック
  • 発売日: 2000/08/02
  • メディア: CD

これももう、20年以上前の、ずいぶん古い録音になってしまいました。でもまだ、しっかり現役なのですね。アバド=LSOの黄金期ともいえる85年の、ラヴェル管弦楽曲シリーズの第1弾だったと思います。

いまさら何をいうでもない超名曲です。演奏時間は15分前後、その間、最後の数小節を除いて、まったく変わることの無いリズムを続け、2種類しかない旋律をさまざまな楽器で演奏し、クレッシェンドし続ける曲。型破りというか掟破りというか、だって一度使ってしまったら、他の曲は(自作にせよ多作にせよ)二番煎じですからね(やっている人、たくさんいますが)。

アバドの解釈は、どちらかというと早め。最初から最後まで同じテンポで、淡々と、しかし着実にクレッシェンドしていきます。この録音の面白いところは、最後の部分で、トロンボーンやサックスと重なるように、弦楽器奏者の叫び声が入っているところです。録音セッションの最初のテイクだったようですが、アバドがこれをいたく気に入って、そのまま発売する音源に用いてしまったそうです(国内盤の解説による)。

楽員たちは、どうせ1回目のテイクだから、そのまま発売されることはあるまいと、たかをくくっていたのでしょうか。それとも自分でやっていてもすばらしい演奏で、感極まってしまったのでしょうか? いずれにしても、「弦楽器が叫ぶボレロ」は後にも先にもこれっきりでしょう。

ラヴェルの楽譜も数年前に版権が切れ、このCDに収められている曲(ボレロ、スペイン狂詩曲、マザー・グース、パヴァーヌ)はすべて国内版のスコア(千円ちょっと)で入手できるようになりました。いよいよ「近代フランス」が「古典」になってきたのですね。

「ボレロ」は、スコアを見ながら聴くと楽しいです。楽器の変化がそれほどしょっちゅうあるわけではなし、伴奏のクレッシェンドも楽器が18小節ごとに少しずつ増えたり変わったりしているだけですから、全部の音符を一度に見ようと思わなければ、けっこう鳴っている音が追えるのではないでしょうか。何回か聴けば、「こういう楽器の組み合わせがこういう音になるのか」と、ラヴェルのオーケストレイションの妙が、いっそう楽しめると思います。

 特に面白いのは、ホルンとチェレスタの旋律に、長3度上と5度上でピッコロが重なってくるところ。ピッコロはハ長調のスケールの中で音を拾うのではなく、ずっと長三度、または五度上の音を出し続けるので、独特の響きがします。スコアを見ると、1番ピッコロはホ長調、2番ピッコロはト長調の調号がついていて、いわゆる複調になっているのですね。臨時記号でなく調号を変えてあることにより、「複数の調が同時に鳴る」ことを強く意図していることがわかります。

あと、この曲でよく引き合いに出されるのがトロンボーンのソロ。普通に知られている曲ではいちばん有名な、かつ難しいソロではないでしょうか。2オクターヴ以上にわたる長い下降旋律を吹ききるのが腕の見せ所です。いろいろな録音を聴くと、同じ楽譜を吹いているのに、それぞれのプレイヤーの特徴が出てきておもしろいです。

これもスコアを見ればすぐわかることですが、スネアドラム(小太鼓)は奏者が二人いて、途中から重なります。演奏会だと、「おっしゃいくぞー」という気合を入れて入ってくる2番スネアを見ることができるでしょう。2番の人はf から入ってくるので、冒頭の1番のプレッシャーとは無縁で、気楽ですね。

その冒頭の1番スネア、音を小さくするためにフェルトなどをヘッド(皮)においてたたきはじめ、少し大きくなってきたところでこれを取る、ということをします。ひまな他の打楽器奏者が隣に座っていて取ってあげる、というのが無難なのですが、かっこつけるのが好きな奏者だと(むろん、打楽器奏者はかっこつけるのが好きな人が多いです)、演奏しながら撥でフェルトをはねのける、ということをやります。

この曲は「オーケストラのための協奏曲」のようなものですから、最初を除けばだれもスネアなんか(リズムがこけた、とか不幸なことが無い限り)気にしなくなるのですが、それでもかっこつけたいのが打楽器奏者の哀しい性ですね(^^;


nice!(0)  コメント(4)  トラックバック(1) 
共通テーマ:音楽

nice! 0

コメント 4

mozart1889

ラヴェルのボレロ、一時とても凝りまして、何枚も購入してしまいました。
アバド盤はラストの叫び声が面白いですね。解釈は知的で、いつものアバドらしく仕上げはとてもスタイリッシュ。ロンドン響も好演でした。
実演でボレロを聴いたことがありません。トロンボーンにスネアドラム・・・・観ていても面白そうですね。
by mozart1889 (2006-04-08 07:44) 

stbh

mozart1889さん、コメントありがとうございます。いろいろ聴くと、テンポ、盛り上げ方、フレージングなどそれぞれに個性があっておもしろいですよね。実演もそうですし、ソリストが大写しになったりするでしょうから、きっと映像でも面白いと思います。むかーし、モントリオール交響楽団の来日公演をテレビで見たことがありましたが、みんなかっこよかった(^^ でしたね。
by stbh (2006-04-08 14:56) 

stonez

こんにちは、mozart1889さんに同じく私も凝りまして(笑)
なるほど、ラヴェル版オケコンですね。
ボレロはクラシックに興味を持つきっかけになった曲です。演奏スピードの違いがそのまま曲の表情の違いにつながるので、明快で面白いですね。ただ、stbhさんのおっしゃるようにボリュームの上げ下げをしない聴き方をしたことがないので、是非生演奏で聴きたいところです。楽譜のところ、スネアのお話など、このあたりの知識もいずれ覚えたいなと思っています。
by stonez (2006-04-11 12:23) 

stbh

stonezさん、TBとコメントありがとうございます。先日たまたまCDショップで、佐渡裕の兵庫でのライヴDVDがかかっていました。2番スネアの女の人が、入るところで大写しになっていました(^^ 最後も盛り上がりまくって、やっぱりライヴはいいですねー。
by stbh (2006-04-12 00:44) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 1

PFM/CookVerdi/Requiem ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。