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Verdi/Requiem [声楽曲]

今年の桜ももう終わりです。でも今年は、週末で2回、楽しめましたね。2回目の、川面に散り行く桜。川べりの屋台と人出はすごかった。

なんとなく人の声が聴きたくなって、今日はこれ。往年の名盤です。ジャケ写がないのが残念ですが、昔のジャケットがそのまま使われているのは好ましいですね。

 

ヴェルディ:レクイエム&聖歌四篇

ヴェルディ:レクイエム&聖歌四篇

  • アーティスト: ジュリーニ(カルロ・マリア), シュワルツコップ(エリザベート), ルートビッヒ(クリスタ), ギャウロフ(ニコライ), ゲッダ(ニコライ), ヴェルディ, フィルハーモニア合唱団, フィルハーモニア管弦楽団
  • 出版社/メーカー: 東芝EMI
  • 発売日: 2005/03/02
  • メディア: CD

1963-4年の録音ですから、それなりのノイズレベルであり、ジャケットに「一部オリジナルマスターテープに起因するノイズ等が有りますがご了承ください。」と書かれているように、「ディエス・イレ」など、苦しいところはたしかにあります。しかし東芝EMIの再発シリーズは、国内でリマスターを行っており、CD初期と比べればノイズやバランスなどかなり改善され、聴きやすくなっていると思います。ARTとどちらがいいか、とか、あるとは思いますが、とにかく各レコード会社が、往年の名録音をしっかりリマスターして安価で出してくれるようになったのは、ありがたいことです。

昔(遅くとも、私がクラシックを聴き始めた30年位前)から、ジュリーニ壮年期の名演として高い評価を得ていた録音です。晩年の録音のように、常にゆったりしたテンポでじっくりうたう、というわけではなく、かなり劇的なメリハリがついています。たとえば「ディエス・イレ」の主題は、他の録音と比べても速い方だと思います。

この録音は特に声楽陣が充実しています。ソリストにシュワルツコップ、ルートヴィヒ、ゲッダ、ギャウロフという当時売り出し中の名歌手を並べており、合唱指揮は名指導者ウィルヘルム・ピッツで、フィルハーモニア合唱団が堂々とした、線の太い歌唱を聞かせてくれます。

オペラ中心だったヴェルディの作ですから、他のレクイエムと比較してもソリストの活躍する比重が高く、よいソリストに恵まれることがこの曲の好演の条件だと思います。

「レクイエム」作曲のとき、ヴェルディはすでに「アイーダ」までのオペラを作曲し、名声を博していました。そして、尊敬していたイタリアの詩人マンゾーニの死に際して、お蔵入りになっていた「リベラ・メ」を手直ししたうえで残りの部分を新たに作曲して「レクイエム」を作り、マンゾーニの一周忌に演奏したのです。ヴェルディはラテン語をあまりよく知らなかったそうですが、対訳を書いてもらい、時として涙しながら作曲したそうです。

第1曲「レクイエム」は、低弦のかすかなppからはじまり、次第に高潮していきます。管弦楽にトランペットやトロンボーンは含まれていないのですが、高揚したところの迫力のあること!"Kyrie"の独唱陣など、まるでオペラのようにのびやかに歌っています。

第2曲「ディエス・イレ」冒頭は、「カルミナ・ブラーナ」と並んでバラエティやCMによく使われるようになってしまいました。まあそれほどわかりやすい、畏れをあらわした表現なのだと思うことにしましょう。この曲と終曲だけ、大太鼓が加わります。

"Tuba mirum"では、舞台裏に4本のトランペットが加わり、オーケストラ中の4本のホルン、4本のトランペット、3本のトロンボーンとテューバに合唱が重なって大音響を響かせます。その直後のバスのソロによる"Mors stupebit"はほとんど音が無く、好対照となっています。

"Libera scriptus"はメゾ・ソプラノのソロ。金管のファンファーレやオーケストラのトゥッティに伍して歌っていくパワーが必要です。"Dies irae"の再現をはさんで現れる"Quid sum miser"や"Recordare"、"Ingemisco"など、美しい独唱や重唱をたくさん聞かせてくれます。

変ロ短調の"Lacrimosa"は、やはりヴェルディの「レクイエム」でも全曲中で最も感動的な音楽です。メゾ・ソプラノのソロからだんだん音楽が盛り上がっていき、頂点に達したところでアカペラの四重唱で響く変ト長調の"Pie Jesu"など、ゾクゾクしてしまいます。最後は主調に戻り、"Amen"だけト長調で鳴ると、変ロ長調の静かな和音で曲を閉じます。

第3曲「奉献唱」に合唱は登場せず、4人のソリストたちが美しい重唱を繰り広げます。オーケストラは比較的薄めで、歌がよく聞こえるように考慮されているようです。第4曲「サンクトゥス」は対照的に、オーケストラと二重合唱の咆哮から始まり、合唱の緊密なアンサンブルと迫力が印象的で、ソリストは休みです。まるで前曲と対をなしているようです。

第5曲「アニュス・デイ」は、ソプラノとメゾ・ソプラノの二重唱と合唱が交互に単純な旋律を繰り返す中で、オーケストラがこまやかな伴奏をつけていきます。第6曲「ルックス・エテルナ」は、次の曲に備えてお休みのソプラノを除く3人のアンサンブルが聞きものです。

第7曲「リベラ・メ」は、もともとロッシーニ追悼のためにヴェルディが計画した、イタリアの代表的作曲家12人による連作の「レクイエム」のために彼が書いたものがもとになっています。独唱はソプラノだけ、テンポなしのレシタティーヴォなど、構成上、他の部分と多少の違いが感じられますが、"Dies irae"の再現で統一感を出しています。ソプラノと合唱の長いアカペラのあと、アルトから歌いだす"Libera me"のフーガは、全曲を締めくくるにふさわしい雄大なもので、ヴェルディの古典的造形への適応力の高さを示しています。最後はハ長調で、消えるように終わります。

この曲も「戦争レクイエム」のようにゆっくりご紹介すればよかったかなあ。昔ちょっと合唱をかじったこともあって、この曲はかなり「おなじみ」ですが、なかなか気合が入らないと聴けません。

ジュリーニの録音、多少、録音が苦しいところがありますし、スタイルはかなり劇的で古臭いのかもしれませんが、オペラ同様、「ヴェルディの音楽」を堪能できる名盤だと思います。晩年の「枯淡の境地」も捨てがたいですが、50~60年代のジュリーニ、あなどりがたいです。

※書き終えて「保存」しようとしたら、久しぶりに「サーバーが混み合っています」が出てびびったのですが、無事セーブされていました。ふぅ。こんなに長く、また書くのはつらい…


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光っち

初めまして、こんにちは。
おさかな♪さんのブログから遊びにきました!

ボクもヴェルディのレクエム大好きなんですぅ、ちょっと前まではショルティ盤が本命だったのですが、今はアーノンクール盤です。
アーノンクールは曲によって歌手の配置を変える工夫をしているそうです。

"Hostias"の清らかさ、"Sanctus"の目映いばかりの輝きは素晴らしいものですょ!

実は前々から沢山の録音を聴かれているということでコソーリ覗かせて頂いてたのです(*´σー`)エヘヘ
by 光っち (2006-04-11 18:15) 

stbh

光っちさん、ご来訪とコメントありがとうございます。私も光っちさんのこと、おさかな♪さんのところのコメントで、これまでも楽しませていただいておりました。アーノンクール盤、未聴なのですが、「非オペラ的」でストイックなようですね。これもまた素敵かもしれません("Hostias"など特に)。コソーリでなくとも、いつでもおいでください。
by stbh (2006-04-12 00:59) 

サンフランシスコ人

シカゴ響定期初のヴェルディ:レクイエムの指揮者は、ブルーノ・ワルターらしいです....

http://www.cso.org/main.taf?p=5,5,7,43

"The Chicago Symphony Orchestra's first subscription concert performances of Verdi's Requiem were given at Orchestra Hall on February 14 and 15, 1952, with Zinka Milanov, Elena Nikolaidi, David Poleri, and Cesare Siepi as soloists; the Combined Choral Organizations of Northwestern University (George Howerton, director); and Bruno Walter conducting."

by サンフランシスコ人 (2009-01-18 03:51) 

stbh

ワルターは晩年の録音プラスアルファしか知らないので、彼のヴェルディがどんなものか想像しにくいです。このころ合唱団はまだできていなかったのですね。
by stbh (2009-01-18 08:44) 

サンフランシスコ人

「このころ合唱団はまだできていなかったのですね。」

http://en.wikipedia.org/wiki/Chicago_Symphony_Chorus
by サンフランシスコ人 (2009-01-19 05:23) 

stbh

1957年ですか。リンク先を読むと、ライナーとワルターの確執のようなものが垣間見える感じですね。
by stbh (2009-01-23 05:00) 

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