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Bizet/Carmen [オペラ]

カルメンは、カラス盤(ハイライト)をしばらく前にエントリー

http://blog.so-net.ne.jp/classicalandsoon/2005-12-05

しましたが、今回は全曲盤を聴きましたので、なかなかハイライトには出てこないようなところを中心にご紹介。さすがに時間がかかりますね~(^^;

Bizet: Carmen

Bizet: Carmen

  • アーティスト: Georges Bizet, Rafael Frühbeck de Burgos, Orchestre du Théâtre National de l'Opéra de Paris, Albert Voli, Bernanrd Gontcharenko, Claude Meloni, Eliane Liblin, Grace Bumbry, Jon Vickers, Kostas Paskalis
  • 出版社/メーカー: EMI
  • 発売日: 2004/06/01
  • メディア: CD

1969年から70年にかけての録音。当時バンブリーは「黒いカルメン」と呼ばれ(今だと別のニックネームがつく?)一世を風靡したそうで、その活躍はカラヤンとの競演のDVDで観ることができます。DVDはウィーンですしユニテル-DGですが、主役級のうち3人はこの録音と同じです。当時カラヤンはEMIとも契約していましたが、フリューベックにお鉢が回ってきたのはどういう経緯なのでしょうか?パリ・オペラ座での録音で、大劇場用のグランドオペラ版ではなく、初演の形式を踏襲したオペラ・コミーク版での録音です。

「カルメン」はビゼーの死の直前に初演された、ほぼ最後の作品ですが、それでもいくつかの改訂を経ています。もっとも大きなものは、ビゼーの死(1875)後、「アルルの女」第2組曲の編曲でも有名なギローが行った改訂で、歌の間の台詞だった部分をレシタティーヴォに書き直し、全部音楽でつなげた、いわゆる「グランド・オペラ版」です。ウィーンでの初演用ということらしいですが、ビゼーのなくなった年に発表された、という説と2年後という説を見ました。

グランド・オペラ版が優勢になったきっかけは、1900年にマーラーが採り上げたことだ、とする話もありましたが、主な理由は、フランス語のせりふを長々と話すよりもレシタティーヴォで歌ったほうが、特に非フランス語圏で親しみやすかったからではないでしょうか。歌手も、歌ならともかく、せりふを覚えるのは不慣れなので、大変でしょう。実際、往年の多くの録音は、レシタティーヴォを持つグランド・オペラ版(上のカラスもそうです)に拠っています。

しかし1964年に、初演の形式に基づく「アルコア版」(「初演版とグランドオペラ版を厳密に対照させた」と、私の持っているNHKの対訳本に書いてありました)が出て以来、次第にこちらが標準になっていったようです。ただオペラの現場では、今でもさまざまな折衷が行われているようです。その中では「メトロポリタンオペラ版」というのが名前が通っているようですが、詳細な異同はわかりません。

「カルメン」の版についての解説は、皆さんご存知でしょうが、やはりこちら↓が充実しているように思われます。

http://www.asahi-net.or.jp/~EH6K-YMGS/op/carmen.htm

初演前後の経緯はこちら↓が詳しいです。実際に演奏された方のようです!

http://www6.big.or.jp/~ada/carinfo.html

さて、バンブリー/フリューベック盤は、全体に「さくさく」((c)mokekekさん?)進みます。もちろんカルメンが科(しな)を作るところは多々ありますが、バンブリーの軽めの声質も手伝ってか、あまりおどろおどろしくはありません。ヴィッカースのドン・ホセも、ちょっと情ない風情が出ていませんか?演奏は全体にすっきりしていて、コミーク版にもかかわらず、ドラマより音楽を聴くのにふさわしい感じがします。なお、主役級の歌手の台詞は別の俳優が話しています。

第1幕の前奏曲がおしゃれにさりげなく演奏されると、男声の「兵士の合唱」に続き、女声の「女工の合唱」で一気に「カルメン」の世界に連れて行かれます。兵舎はまだしも、今の時代にタバコ工場がこんな街中にあったら、「歴史的建造物」ですね(^^;

ミカエラはカラヤンの秘蔵っ子、フレーニ。ホセと二人で故郷のホセの母親の話をするくだりのように、切々と歌い上げる曲想が良く似合います。

 第2幕は、前半に「ジプシーの歌(カルメン)」と「闘牛士の歌(エスカミーリョ)」、後半に「花の歌(ホセ)」と聞かせどころがありますが、その間の合唱・重唱による話の展開も面白いです。

花の歌の前、ホセが遠くから「アルカラの龍騎兵」を歌いながらやってきて、「2時間前に釈放されたぜ」というと、「あんたのために踊ってあげるよ」とホセの前でカルメンがカスタネットを鳴らして踊ります。伴奏のカスタネットがかっこいい。音もきれいに出ているし、歌とのアンサンブルもばっちりです。後半、帰営のラッパがカルメンとハモるのがちょっと非現実的(^^;ですが、楽しいです。

第3幕は有名なフルートの間奏曲のあと、明け方、暗いところで密輸入者が次々に姿をあらわす「密輸入者の行進」から始まります。オーケストラ組曲だと、フルートのソロからだんだん楽器が増えていく「ボレロ的」展開で終わってしまうのですが、オペラだと密輸入者の合唱(荷物運び)からカルメンとホセの言い合いの場面を経て「カルタの三重唱」に移っていく、動的な展開が楽しめます。

第3幕の終幕近く、「闘牛士のテーマ」が一瞬、弦のsoliで弾かれます。こういうフレーズはなかなかダイジェストでは聴く機会がないので、ぜひ全曲版でお楽しみを。

第4幕は全体の時間も約20分足らずと短く、はじめから聴きだすとついつい最後までいってしまいます。これは必ずダイジェストでも入っていますが、闘牛場の中の歓声(合唱)と舞台のカルメンとホセのやりとりが並行して進むところは、録音の演出の腕の見せ所ではないでしょうか。

CD2枚で約2時間半、こうして通して聴いて印象に残るのは、主役級の歌手たちのアリアもさることながら、合唱が全編にわたって大活躍していることです。心理描写が中心のヴェリズモではもちろんのこと、ヴァーグナーやシュトラウスでもこんなに合唱の比重の高い作品はそうそうないでしょう。それだけ舞台は派手になるわけで、このオペラにいっそうの花を添えているのではないでしょうか。


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