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Beethoven/交響曲全集 [交響曲(独墺系)]

今年のゴールデン・ウィークは長期休暇になりました。家族はカレンダーどおりなので、一人で家にいられます。この貴重な時間を有効活用すべく、LPを聴くことにしました。とはいえ時間は限られているので、あれこれ悩んだ末、思い出深いこれを聴くことにしました。

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ベートーヴェン/交響曲全集
指揮:ハンス・シュミット=イッセルシュテット
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

(CDのリンクは続き↓をご覧下さい)

序曲は3曲入っていますがLP7枚組です。たしかもともと1970年のベートーヴェン生誕200年に発売され、没後150年の1977年に再発になったものだと思います。「3000セット限定」と書いてありますが、本当のところはどうだったのでしょう?しかし少なくとも「10000円」は本当でした。今なら国内盤CDが

半額で手に入ります。セットではないので多少場所を取りますが。

ベートーヴェン:交響曲第1番/第3番「英雄」

ベートーヴェン:交響曲第1番/第3番「英雄」

  • アーティスト: シュミット=イッセルシュテット(ハンス),ベートーヴェン,ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
  • 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック クラシック
  • 発売日: 2001/04/25
  • メディア: CD

ベートーヴェン:交響曲第2番/第4番

ベートーヴェン:交響曲第2番/第4番

  • アーティスト: シュミット=イッセルシュテット(ハンス),ベートーヴェン,ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
  • 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック クラシック
  • 発売日: 2001/04/25
  • メディア: CD

ベートーヴェン:交響曲第5番「運命」/第6番「田園」

ベートーヴェン:交響曲第5番「運命」/第6番「田園」

  • アーティスト: シュミット=イッセルシュテット(ハンス),ベートーヴェン,ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
  • 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック クラシック
  • 発売日: 2001/04/25
  • メディア: CD

ベートーヴェン:交響曲第7番/第8番

ベートーヴェン:交響曲第7番/第8番

  • アーティスト: シュミット=イッセルシュテット(ハンス),ベートーヴェン,ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
  • 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック クラシック
  • 発売日: 2001/04/25
  • メディア: CD

ベートーヴェン:交響曲第9番

ベートーヴェン:交響曲第9番

  • アーティスト: シュミット=イッセルシュテット(ハンス),サザーランド(ジョーン),ホーン(マリリン),キング(ジェイムズ),タルヴェラ(マルッティ),ウィーン国立歌劇場合唱団,ベートーヴェン,ピッツ(ヴィルヘルム),ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
  • 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック クラシック
  • 発売日: 2001/04/25
  • メディア: CD

 

1965年の第3から69年の第7まで5年間かけて録音されたもので、「一人の指揮者によるウィーンフィル初の全集録音」という謳い文句でした。プロデューサーは、第7を除いてシュミット=イッセルシュテットの息子エリック・スミスが担当、バックハウスとのベートーヴェン/ピアノ協奏曲全集に次いでの、デッカの目玉となる録音でした。もちろん、録音はすべて、ウィーンでのデッカの本拠地、ゾフィエンザールで行われています。

ハンス・シュミット=イッセルシュテットは1920年代から活躍し、終戦直後に北西ドイツ放送交響楽団(現在の北ドイツ放送交響楽団)の設立に奔走した人ですから、ドイツでは定評を得ていたのでしょうが、オーストリア、ことにウィーンでは必ずしも一流とみなされていなかったようで、息子がデッカのプロデューサーになったから録音で使ってもらった、という印象が大きいようです。この交響曲全集の録音についても、「ウィーン・フィルの面々は淡々と指揮者や録音技師の指示に従って演奏した」と言われています(出典不明;カルショーの回想録でしたっけ?)。しかし何はともあれ、完成した録音は発売当初から「規範となる」「全く虚飾やてらいの無い」演奏とされ、評価を得てきました。当時としては破格に安い値付けも、好評の理由のひとつだったのかもしれません。

今あらためてこの録音を聴いてみると、「うーん、やはりウィーン・フィル!」というのが第一印象です。正確に言えば「60年代デッカのウィーン・フィルの音」なのかもしれませんが、豊潤な弦、ふくよかな管、そして絶妙のフレージングや特に音が消えるときの豊かな響きは、他の時代、他の楽団の録音では得られないものだと思います。「録音」という面から見れば、ティンパニ、ピッコロ(+フルートの高音)、ホルンなどに特徴がありますね。

近年のピリオド的奏法に慣れてしまっていて、このころの録音はもっとのんびり聴こえるかと思っていたのですが、きちんと覇気のあるテンポ運びで安心しました。提示部の繰り返しがあったりなかったりしたり、オーケストレーションに手が入っているのは、おおむね当時の慣行に従っているようで、もう少し年代が下がったショルティ/シカゴの録音とはスタンスが違うようです。では録音順に簡単に見ていきましょう。

65年11月、全集の最初に録音された第3は「つまらない」「劇的でない」とあまり評判がよろしくないようですが、第1楽章はややおとなしいものの、第2楽章以降はかなり激しい起伏を見せてくれます。「けっこうやるじゃん」というのが正直な感想でした。なお第3・第4楽章が続けて演奏される(トラックが切れていない)のはひとつの見識でしょう。

続けて第9が65年12月に録音されています。「ウィーン・フィルの第九」として、一時期かなりスタンダードになっていたと思います。両端楽章ももちろん良いですが、若干おとなしめ。痛快な第2楽章と優美な第3楽章のそれぞれが表情豊かで、聴きがいがあります。なお独唱者はサザーランド、ホーン、キング、タルヴェラという当時のデッカ売出し中の歌手を集めています。しかしドイツ語圏の人が全くいないのは、なぜでしょうね。

翌66年は10月に第4が録音されています。終楽章が比較的落ち着いているので、かつてよく言われた「ギリシャの乙女」的な例えをされることが多い録音ですが、決してなよなよした感じは無く、紛れもないベートーヴェンの音を聴かせてくれます。なお同時に晩年の珍しい序曲「献堂式」も録音されています。この曲はミサ・ソレムニスと同時期の作品で、ソナタ形式でないこともあり、ベートーヴェン後期の作品でときどき感じる、様式感に欠けたような、独特の印象を受けます。

67年4月には第6と「エグモント」序曲が録音されています。第6はほどよい起伏が心地よい名演だと思います。特にわずかに早めのテンポでよく歌う第2楽章と、まさに嵐の後の晴れ間のような(例えになっていませんね(汗)第5楽章が感銘深いです。「エグモント」はもともと曲自体が劇的でかっこいいのですが、特にアレグロに入ってからの緊迫感が良いです。

そして68年9月には、第1、第2、第5、第8という、いずれも高い評価を得ている4曲が一気に録音されます。特に第1と第8は現在でも最右翼に位置するものだと思います。第8は3拍子の楽章がメヌエットになっていたり、規模が小さかったりしますが、決して「先祖返り」や「擬古的」な曲ではなく、第5以降の交響曲で続けられたベートーヴェンの実験的な試みがたまたま古典の様式を使った、というだけのことで、先鋭的な意欲作だと思います。この録音はこの曲の新しさ、特に単純な音程や繰り返しからリズムを作り上げていく面白さを堪能させてくれます。これに比べると、第1などは曲も演奏もハイドン的で優美(ハイドンの曲は男性的なのですが、ベートーヴェンほど荒々しくない、という意味で)ですね。

最後に残った第7と「レオノーレ」第3番は69年6月に録音されました。この録音だけプロデューサーがクリストファー・レーバーンに変わっています。だからというわけではないのでしょうが、端整な演奏なのですが、他の指揮者に比べるとテンポの揺れも少なく、ちょっと「ベートーヴェンの狂気」が足りないようにも感じます(特に終楽章)。しかし、楽譜どおり虚心に演奏すればこうなるのだと思えば納得がいきます。「レオノーレ」第3も落ち着いた解釈です。曲の構成としては、オペラの序曲とはいえ、舞台裏のトランペットがあったりして、同時期の作曲の第5・第6の実験精神と相通ずるものがありますね。

全曲を聴き終えると、何とも落ち着いた充足感を得ることができます。良い・悪いでなく、最近のピリオド的な解釈や奏法の影響を受けた演奏とはやはり時代が違うなあ、とも思いました。また(CDでない)LPの音には安らぎを感じます。私の個人的な「古きよき時代」が、ここにあるのかもしれません。


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コメント 7

Lionbass

イッセルシュテットって、名前は聞いたことありますが、演奏を聴いた記憶はないですね。
ちなみに、我が家にあるベートーベンの交響曲は(以前ブログに書きましたが)朝比奈=大フィル、ホグウッド=アカデミー・オブ・エンシェント・ミュージック、それにブロムシュテット=シュターツカペレ・ドレスデンです。
カラヤン=BPOが第九だけあります。
http://lionbass.blog.so-net.ne.jp/2007-07-11
by Lionbass (2008-05-03 23:07) 

stbh

Lionbass さん、nice!とコメントありがとうございます。
シュミット=イッセルシュテットの録音で有名なのはいずれも協奏曲で、バックハウスとのベートーヴェンとヌヴーとのブラームス(よろしければこちらもご覧下さい→http://classicalandsoon.blog.so-net.ne.jp/2007-10-26)があります。ブラームスやマーラーの交響曲の録音もあるのですが、あまり知られていませんね。

来日して読響を何度か振っていますので、タイコのNぐっちゃん(笑)が心酔していました。「こーんなでっかい目をして、こーんな長い棒でね、こーうやって振るんだよ…」
by stbh (2008-05-04 19:16) 

mozart1889

stbhさん、おはようございます。ご無沙汰しておりました。
イッセルシュテットのベートーヴェン、懐かしいですね。僕も1万円のLP全集を持ってます。昔、数寄屋橋のハンターで、中古盤で買いました。
今もスタンダードと云えそうな名演揃いですね。微温的な感じもしなくはないんですが、何せ、ウィーン・フィルの音が素晴らしく、いつ聴いてもエエなぁと思う次第です。
by mozart1889 (2008-05-10 04:39) 

サンフランシスコ人

ハンス・シュミット=イッセルシュテットは、サンフランシスコ響も振っています。
by サンフランシスコ人 (2008-05-11 06:38) 

stbh

mozart1889さん、ブログを再開されたのですね!また、音楽への愛情のこもった記事を拝見できるようになってうれしいです。シュミット=イッセルシュテットのベートーヴェン、やはりいいですね。LPで聴くと(といってもCDは持っていないのですが)いっそう落ち着く感じがします。
by stbh (2008-05-12 00:40) 

stbh

サンフランシスコ人さんはシュミット=イッセルシュテットをナマで聴かれているのですか!?
by stbh (2008-05-12 00:41) 

카지노사이트

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by 카지노사이트 (2020-11-08 13:37) 

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