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Dvorak/Sym9 [交響曲(独墺以外)]

最近、そこそこのペースで記事の更新ができるようになったと思ってたんですが、今週は仕事もプライベートも忙しく、記事を書く余裕がありませんでした。

ところで、よく知ってる(と勝手に思っているだけのことが多いんだけど)曲は、LPこそあれ、CDをあまり持っていません。この曲も、ちょっと聴くかと思って探したら、CDはこれしかありませんでした。

ドヴォルザーク:交響曲第9番ホ短調
フィルハーモニカ・スラヴォニカ/指揮:ヘンリー・アドルフ

はい、知る人ぞ知るPILZの2枚組です(カップリングは「スターバト・マーテル」)。90年代、駅頭や家電量販店で売っていた、非常に壊れやすいケースに入った2枚組。300円で売られていることが多かったでしょうか。最後は100円ということもあったように記憶しています。奏者の名前を適当につけて、他の音源をコピーして作っていたようで、本当の演奏者は例えばこちらを参照していただければわかります。演奏は玉石混交、というよりは、石ときどき玉、というくらいかな、あまり持って回ったような解釈は少なく、多くは没個性ではありましたが、それはそれで、曲を知るのには重宝なので、まあよしとしていました。

この録音、本来の演奏者の名前が入った録音も、少なくとも現在は市販されていないようですが、決して悪くありません。超一流のアンサンブルではありませんが、全体的に快活なテンポを基調に、ドヴォルザークのいまひとつ垢抜けない、しかしだからこそ親しみの持てるメロディが次々と心地よく紡ぎ出されていきます。この録音のあとにこれを聴くと、ちょっとびっくりしますね。

ドヴォルザーク:交響曲第9番

ドヴォルザーク:交響曲第9番

  • アーティスト: ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団, ドヴォルザーク, カラヤン(ヘルベルト・フォン)
  • 出版社/メーカー: ユニバーサルクラシック
  • 発売日: 1994/07/01
  • メディア: CD

まずテンポが遅い。音が重い。そして、全盛期ほどではないにしても横溢するカラヤン・レガート、フレーズの最後のリタルダンド。1985年の録音なのですが、上の録音の後で聴いたせいか、かなり前時代的に感じられてしまいます。この曲をまともに聴いたのは本当に久しぶりなのですが、この録音が古臭く感じられるということは、重厚長大な解釈の演奏・録音を聴く機会自体が減っている、ということなのかなあ、と思います。このドヴォルザークはカラヤン臭がちょっと鼻につくような気がしますが、併録されている「モルダウ」はもう少し勢いがあって、「流麗な」演奏になっています。こちらは文句無くおススメです。

第1楽章は序奏のついたソナタ形式。主題がはっきりしているので、形式感はわかりやすいですね。深い森を思わせるヴィオラ以下の和音から、クラリネットの持続音(この曲、クラリネットがけっこう印象的です)、ホルンの信号(「パパーン」)、と続く冒頭で、もうボヘミアの雰囲気にひたってしまいます。この序奏は十六分音符=126というとんでもなく遅いテンポで書かれているので、六十四分音符がバンバン出てくるなど、オタマジャクシのシッポが異様に多い譜面になっていて、読みにくいです。

第1主題はホルンの3、4番が吹いています。スコアをざーっと見ると、通常は1、3番が「上吹き(高音域)」、2、4番が「下吹き(低音域)」なのですが、この曲は1、2番が上吹き、3、4番が下吹きのように見えますがホルンの方、真相を教えていただけますか?フルートによる第2主題は提示部(ト長調)は1番、再現部(変イ長調-このあたりが、古典派の調性ルールと違っています)は半音上になりますが2番が吹いています。おまけに付点やフレージングなど、微妙に音形が違います。

第2楽章は、日本人なら誰でもおうちに帰りたくなる(笑)曲ですね。コーラングレの紹介に使われることがダントツに多いであろう、超有名な旋律が聴けます。コーラングレはいちおうオーボエと持ち替えできるようになっているのですが、持ち替え時間があまりないのとプレッシャーが大きいので、ひとりの奏者を独立に置くことが多いようです。となると出番はこの楽章だけですね。また、この楽章の最初と最後近くのコラール、8小節とちょっとのために、テューバ君は楽器をかかえて練習に本番に赴かなくてはいけません(^_^;

第3楽章はスケルツォですが、同じ作曲者による「スラヴ舞曲」の第1、8番に出てくるようなフリアント(早い3拍子を2小節単位でまとめたリズム)を彷彿とさせますね。この曲をやったとき、この楽章のティンパニのリズムが身につくまでずいぶん苦労しました。こういう特徴のあるリズムは、できる人は何の苦もなくできるし、一度からだが覚えてしまえば平気なのですが、できないと何度やってもうまくいかない状態(「つかまる」といいますね)が続き、すごいストレスになります。なお第3楽章しか出てこない楽器は、トライアングルです。最初に派手なトレモロがあるんですが、あとはあまり目立ちません。この奏者も、あとは第4楽章でシンバルを1発だけ叩いて、満たされないまま帰路に着くのでしょう。

第4楽章は、単調いやちがった短調ですが、聴いていると高揚してきますよね。「イタリア」の第4楽章と並んで、元気な短調の終楽章でしょう。最後の最後、木管の和音でppになって終わるのが、肩透かし的ではありますが、ドヴォルザーク一流の奥ゆかしさなのかもしれません。

最後に楽譜をリンクしておきましょう。

OGTー2140 ドヴォルジャーク 交響曲第9番 ホ短調作品95 新世界より

OGTー2140 ドヴォルジャーク 交響曲第9番 ホ短調作品95 新世界より

  • 作者: ドヴォルジャーク
  • 出版社/メーカー: 音楽之友社
  • 発売日: 2004/04/05
  • メディア: 楽譜

また、全音がお好きな方は、こちら(楽天ブックスです)。

スコア:ドヴォルジャーク交響曲第9番「新世界」

ご紹介したように、この曲は楽譜をよく見ると面白いところがいくつもあります。マーラーほど複雑ではありませんので、ぜひいちどお試しになってみてください。


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Lionbass

stbhさま
ご無沙汰しています。
ホルンの「上吹き」「下吹き」の件ですが、元々は(バルブのない)ナチュラルホルンの時代、2本1組で用いられ、「1番が上、2番が下」を受け持ったのがそもそもの「始まり」ではないでしょうか?
当時は(その調の)「ド」とか「ソ」をオクターブで吹くことも多かったと思います。

それがベートーベンあたりから4本用いられるようになったあとも、1番と2番、3番と4番がそれぞれ2本でペアを組むようになったので、「1-2番では1番が上(2番が下)」「3-4番では3番が上(4番が下)」という扱いが多いのだと思います。

特に、ブラームス、ドボルザークあたりでは、1-2番と3-4番が調整が違う管を使っていることも多いので、それぞれのペアでは上と下を受け持っていて、1-2番と3-4番で別のパートのような扱われ方となっているのではないでしょうか?

ちなみに、「新世界より」の場合、冒頭は1-2番がE管、3-4番がc管となっているのはご存じの通りです。
(まだ書こうかと思いましたが、長くなるのでこの辺で…。)
by Lionbass (2007-05-22 14:19) 

stbh

Lionbassさん、Niceとコメント、というか、ご丁寧な解説ありがとうございます。
そうそう、1-2と3-4がペアになってるのがこの時代の特徴でしたね。
管弦楽法、勉強しなおしてきます(;^_^A
by stbh (2007-05-22 22:41) 

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