Strauss/Alpen [交響曲(独墺系)]
これも懐かしい録音です。
ケンペ/ドレスデンのアルペン、1971年の録音。LP時代から演奏面でも、音的にも名録音として知られています。私の友人でこれ1曲を4面にカットしたLP(家電量販店の企画もので、非売品だったのではなかったかな)を大事に持っているのもいます。むろんお手軽リスナーとしては、全曲通して聴けるCDが楽ですね。
リヒャルト・シュトラウスは「交響曲」と名のつく曲を何曲か書いていますが、現在知られているこれらの「交響曲」は、コンセプトとしては「交響詩」と同じです。この曲も約50分続く単一楽章で、夜明け前から日の出、山登り、山頂、下山と嵐、夜といった、登山に伴う情景を描写した音楽です。彼の作品は前半生に交響詩が、後半生にオペラが集中しているのですが、この曲は最後の管弦楽作品で、「ナクソス島のアリアドネ」と同時期に作曲されています。
今、聴きなおしてみると、必ずしもアンサンブルがきちっと合っているわけではなく、音程も怪しいところが何ヶ所かあります。当時のEMIの名録音であったとはいえ、30年以上前の音はいささか古ぼけて聞こえます。しかしこの録音では、それらのハンデをものともせず、音楽を共有し、引き込まれていき、楽しむ(愉しむ)ことができます。何ででしょう?こじ付けかもしれませんが、私はケンペと楽員たちの、この曲への共感の大きさが関わっているような気がします。
音楽を演奏していてもっとも大事で大変なことは、作曲家が意図した「音楽」を理解し、音にして聴いている人に伝えることだと思います。音自身からわかること、感じることをストレートに言葉にしたとき、どんな言葉が出てくるか?ここはどういう心持ちで作曲したのか?これはどんな情景をあらわしているのか?さらに、作曲家はどういう生活をしていたかなど、いろいろな情報を咀嚼することで(あるいはしないで)、作曲家・作品のイメージが浮かんで来て、音にできるように感じられる気がしてきます。われわれ素人とケンペ/ドレスデンの職人集団を同列に論じるつもりはありませんが、ここには譜面よりはるかに深く入り込んだ理解と共感があるように思えてならないのです。
なおケンペは、この録音の5年後、1976年に66歳で世を去ります。この人も、何とも「早すぎる死」でした。これだけでは物足りない方は、全集をどうぞ。
- アーティスト: Wolfgang Liebscher, Manfred Weise, Richard Strauss, Rudolf Kempe, Peter Damm, Manfred Clement, Dresden Staatskapelle, Malcolm Frager, Peter Rosel, Peter Mirring
- 出版社/メーカー: Angel
- 発売日: 1999/11/16
- メディア: CD
そうそう、アルペンの楽譜はこちらです。
Strauss: Eine Alpensinfonie and Symphonia Domestica in Full Score
- 作者: Richard Strauss
- 出版社/メーカー: Dover Pubns
- 発売日: 1993/10
- メディア: ペーパーバック
ドメスティカもついて3000円を切っています。私もこれが出たとき、思わず買ってしまいました。いい時代になりましたね…。
stbhさん、これも懐かしい名盤ですね。ケンペ/SKDはホンマに素晴らしいコンビでした。LP時代からの愛聴盤です。
今は、CDが激安価格ですね。
R・シュトラウスの名曲を僕はこの箱物で堪能しています。聴いていて楽しい演奏です。指揮者も楽団も楽しそうに演奏しているのが印象的です。
by mozart1889 (2007-05-13 12:32)
mozart1889さん、こちらにもありがとうございます。私もLP(シュトラウスの自作自演と2枚組でした)で聴いていました。われながらかなり聞き込んだと思います。さっぱりしていて(音も貧弱なので)物足りない自演盤とくらべて、なんと表情豊かな音楽であったことか!
ケンペの録音は、シュトラウス、ブルックナー、ブラームスなどで親しみました。ちょうど売り出し中の70年代前半に私がクラシックを聴き始めたからだと思いますが、ずいぶんお世話になりました。
by stbh (2007-05-13 20:46)