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Akutagawa/MusicforSymOrch [管弦楽曲]

「日本管弦楽名曲集」からのご紹介、第3弾です。このCDから、ちょっと引っぱりすぎましたので(^^; いちおうここで打ち止めにしましょう。

芥川也寸志(1925-1989):交響管弦楽のための音楽(1950)

Japanese Orchestral Favourites

Japanese Orchestral Favourites

  • アーティスト: Ryusuke Numajiri, Ryusuke Numajiri, Yuzo Toyama, Hidemaro Konoye, Akira Ifukube, Yasushi Akutagawa, Kiyoshige Koyama, Takashi Yoshimatsu
  • 出版社/メーカー: Naxos
  • 発売日: 2002/04/01
  • メディア: CD

スコアもあります。「ラプソディ」と同じ全音ですが、向こうが曲の解説がほとんどないのと対照的に、かなり綿密な楽曲分析がついています。

スコア 芥川也寸志 交響管弦楽のための音楽

スコア 芥川也寸志 交響管弦楽のための音楽

  • 作者: 芥川 也寸志
  • 出版社/メーカー: 全音楽譜出版社
  • 発売日: 1998/12/10
  • メディア: 楽譜

われわれの世代だと、芥川さんといえば、NHKの音楽番組で黒柳徹子さんと司会を担当していた姿が思い出されるのではないでしょうか。作曲活動と並行して、指揮者として、アマチュア・オーケストラの最高峰、新交響楽団などの指導者として、教育者として、ことあるごとに現代日本の作曲家の作品の啓蒙につとめてきた彼がなくなって、もう20年近く経つのですね。

この曲は彼が25歳のときの作品で、NHKの作曲コンクールの特賞を取った、彼の出世作です。これまでご紹介した2曲と違って、すべてオリジナルの主題によっていて、2楽章からなる、表題などの無い純粋な管弦楽曲です。2楽章あわせても演奏時間は約10分あまりとコンパクトなものですが、若々しい、芥川の音楽語法が感じられます。

編成は特殊2管、4-3-3-1にティンパニ、スネア、バスドラム、シンバル、ピアノと弦五部、という、(ピアノを除けば非常に)オーソドックスなもの。

第1楽章はAndantino。訥々としたファゴットとチェロの5度のスタッカートの上に、木管のソロや弱音器つきトランペットが、手分けして主題を奏でます。途中にホルンの3度とヴァイオリンのスタッカートによる経過句が挟まれていますが、ここのホルンは八分音符4つででfffからppにディミニエンドしないといけません。

中間部はベースとテューバのE音に乗ったコーラングレのソロ。いささかぶっきらぼうな主題部と対照的に、近接音程の旋律がレガートで奏でられます。この旋律は3度繰り返されますが、3度目は伴奏に細かい動きがいろいろ出てきていて、かなりアンサンブルが難しくなっています。二分音符ふたつ、二度上昇するホルンのブリッジを経て、主題部の5度が再現され、徐々に速度を上げて主題が再起します。やや省略された主題部は、ホルンのブリッジで切断され、pのスタッカートで楽章を閉じます。第2楽章へはアタッカで続きます。

第2楽章冒頭はシンバルのsfffのソロ-これは演奏する人、プレッシャーですね。すぐに金管に2/4拍子の勇壮なメインテーマがあらわれ、ティンパニとホルンで勢いをつけて、トゥッティになだれ込みます。木管に現れる第2主題、木管と弦で奏される第3主題は比較的軽い音になっていますが、これらをsffやfffのブリッジでつなぐことで、曲にメリハリがつけられています。

途中に6/8拍子をはさんだり、2拍3連を持つ旋律が出てきたりと、だんだんリズムが複雑になっていき、ついにメインテーマの2拍子とリズムパートの3拍子が拮抗したクライマックス!ここはかっこいい(けど、破綻すると大変そう)。この部分が全休止で中断されると、pに戻り、各主題を回想して最後にもういちど、シンコペーションでクライマックスを作ってsfffで全曲を閉じます。

特に第2楽章は急速な2拍子のリズムを、全編テンポをかっちり守って演奏することが肝要で、変にしなを作ったりするのは作曲者の意に反すると思います。その点、このCDの演奏はよい意味で機械的な、ドライな響きを作ることに成功していると思います。

しかし、終戦のわずか5年後、25歳でこういう作品を物してしまったわけですね、この人。やはり才能ある人というのは、違いますね。

蛇足ではありますが上記のスコア、せっかく解説がついているのに、いちばん最初に「芥川也寸志の音楽語法の全般的な特徴については、「交響曲第1番」(1954)の解説に詳述してあるので、そちらを参照していただきたい」と書かれています。ちょっと不親切ではないでしょうか。


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コメント 2

ensemble

このシリーズ、面白いし、ためになりました。
もう終わり?
ちょっと残念。
でも、次を期待します。
申し遅れましたが、いつも投票いただきありがとうございます。
by ensemble (2006-10-22 10:15) 

stbh

ensembleさん、コメントありがとうございます。
現代日本の作品、Naxosの大シリーズのおかげか、最近は安価なスコアが増えてきて、じっくり聞きやすくなっています。これからも折にふれて取り上げますので、どうぞまたご覧ください。貴ブログの人気投票、いつも「荒らし」に近い票で恐縮ですが、皆さんの各曲に対する思いのコメントがいつも面白いです。
by stbh (2006-10-22 18:42) 

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