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Koyama/Kobikiuta [管弦楽曲]

ブラームスの季節ではありますが(^^; このCDから何曲か聴いてみたいと思います。NAXOSの日本人作曲家シリーズの第一弾を飾ったCDで、かなり売れたはずです。発売当初、歯牙にもかけなかった評論家もいたようですが、この1枚を足がかりにして、NAXOSの「日本作曲家選輯」は着実に成長しています。

第一弾らしく、すでにある程度の評価を得ている、かつ聴きやすい曲を集めており、演奏も一級だと思います。

Japanese Orchestral Favourites

Japanese Orchestral Favourites

  • アーティスト: Ryusuke Numajiri, Ryusuke Numajiri, Yuzo Toyama, Hidemaro Konoye, Akira Ifukube, Yasushi Akutagawa, Kiyoshige Koyama, Takashi Yoshimatsu
  • 出版社/メーカー: Naxos
  • 発売日: 2002/04/01
  • メディア: CD

まず今回は「管弦楽のための木挽歌」。長野の巨匠、小山清茂の代表作のひとつで、「九州の民謡を主題とした、一種の変奏曲」と作曲家が言及しています。木管2管、金管4-2-3-1の決して大きくないオーケストラですが、50~60年代の日本の作品に共通した、ダイナミックな音の使い方が堪能できる、名曲のひとつだと思います。

 冒頭、ヴィオラ以上の弦楽器で、のこぎりを挽く音を模倣していますが、最初の「ひゅー」というpの音、これを受けた「ざん!」というfの音はそれぞれ12音(オクターブ中の半音全部)の組み合わせからできています。ただし「ひゅー」は約2オクターブに音が広がっているのに対し、「ざん!」は1オクターブの中につまっており、音色の工夫がなされています。なお、この部分のディヴィジの数から、12型の弦が想定されていることがわかります。

「木挽歌」の主題は、低弦のハーモニックスの上に踊るチェロのソロです。のこぎりの音と絡みながら、切々と主題を歌っていきます。最後にはドラも絡み、弦楽器全部のハーモニックスで曲を終えます。

続く第1変奏は、いきなり締太鼓と櫓太鼓(枠・皮)の3人のアンサンブルから始まり、お囃子のような雰囲気のピッコロが先導して、オーボエの旋律が始まります。ここでの白眉は、弦主体の「合いの手」。のどかな雰囲気の主題と伴奏にいきなり切り込んでくるのは、最初聞くとびっくりしますが、この玄妙さはいちど病み付きになると離れられなくなません。旋律がサックス、+ファゴット、金管(トランペット)と移り変わるにしたがって、オーケストレイションがだんだん分厚くなって、盛り上がっていきます。

オーケストレイションでいささか不思議なのは、最初を除いて、太鼓にずっと連弾のピアノがかぶっていること。太鼓だけでは、アタックが不明瞭だと感じたのでしょうか?G-AあるいはG-Gis-Aという近接音を太鼓と同じリズムで叩く(弾く、という感じではないなあ)のは、明快ではありますが、奏者はちょっとつまらないかも(^^;

第2変奏はチェレスタ(第2ピアノ奏者が演奏)、鉄琴(カンパネッタと表記)、ハープ、ピアノ(途中から)など金属系の音が、5拍子のリズムを繰り返す上に旋律が乗っていきます。旋律はフルート(途中から+マリンバ)、オーボエ+クラリネット(途中から+ファゴット、チェレスタ)、ピッコロ+フルート+オーボエ+クラリネット+トランペット(途中から+ファゴット、ホルン)と拡大していき、クライマックスに達したところで、5拍子のリズムをオーケストラ中でまわしながらだんだん弱まっていき、ppでこの部分を終えます。

第3変奏は4/4拍子、トランペットと小太鼓の勇壮な16分音符と弦+ピアノのリズムに乗って、管楽器を中心に全オーケストラがリズムの饗宴を繰り広げます。途中のティンパニ・ソロは、奏者のまわりにティンパニを5個配置し、くるっと回って演奏するようにプランニングされたもの。テンポが遅くなりトゥッティで主題を高らかに演奏し、ドラの一撃で全オーケストラが停止すると、低弦に冒頭の和音が戻り、最後はバス・クラリネットが主題を収めて、静かに曲を閉じます。

この曲は作曲されて以来、日本のオーケストラの海外演奏旅行時のアンコール・ピースとして、このディスクに収録されている外山雄三の「ラプソディ」と並んで有名です。ここでの沼尻=都響の演奏は、その機動力とアンサンブル能力の高さが遺憾なく発揮された、屈指の名演だと思います。

この曲はスコアが出ていますので、合わせてご紹介します。

OGTー303 小山清茂 管弦楽のための木挽歌

OGTー303 小山清茂 管弦楽のための木挽歌

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 音楽之友社
  • 発売日: 2000/10/31
  • メディア: 楽譜

 

一音一音克明に見ていくのは大変ですが、音楽に合わせたイメージのようなグラフィックだと思ってページを繰っていくのも、一興ではないでしょうか。


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コメント 4

mozart1889

おはようございます。
このCD、出てすぐに買いました。名曲揃いです。
現代音楽は苦手なんですが、このナクソスの日本音楽シリーズはイイですね。
木挽歌も素晴らしいですね。
by mozart1889 (2006-10-09 04:43) 

stbh

mozart1889さんも、これはお買いになったのですか! このCDは、シリーズ第1弾ということで、有名どころ、聴き応えのあるところを集めて、あえて日本のオーケストラで録音したのでしょうね。都響の能力の高さを証明しているCDだと思います。
このあと順次出てきた作曲家別のシリーズもよい演奏は多々ありますが、やはりこのCDのインパクトは強かったです。
by stbh (2006-10-09 22:28) 

木曽

こんにちは。はじめまして。
わかりやすい解説、ありがとうございます。
読みながら聴くと、楽しみが倍加しました。
この曲のスコアは持っていませんが、このCDにも収録されている
吉松隆「朱鷺によせる哀歌」はスコア買いました。
手書きのスコアをそのまま印刷したもので、温かみがあって良いです。
by 木曽 (2006-10-11 18:25) 

stbh

木曽さん、はじめまして。ご来訪とコメントありがとうございます。
「朱鷺によせる哀歌」もいいですね。このCDに収録された中では飛びぬけて新しい曲ですが、それだけ、名曲としてすでに定着しているということなのでしょう。このCD、日本人なら、ぜひ持っていたい1枚といっても過言ではないですね。
by stbh (2006-10-12 07:38) 

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