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Mahler/Sym5 [交響曲(マーラー)]

マーラー・シリーズ3周目、折り返しの第5番、今回はメータ/イスラエル・フィルの昔のライヴから。「1979年9月10日」なのですが、場所の記録が無い。エア・チェックを始めたすぐの時期でもないし、記録はきちんととっていたはずなのに、ちょっとがっくりorz

CDを探すと、メータのマーラー、第5はLAPOとNYPとしか録音されていないようです。LAPOとの録音はDeccaで、第2の次でしたっけ(第1が先)?いっそう記憶があやふやです。今なら、まあこれなのでしょうか。

マーラー:交響曲第5番

マーラー:交響曲第5番

  • アーティスト: ニューヨーク・フィルハーモニック, マーラー, メータ(ズービン)
  • 出版社/メーカー: ワーナーミュージック・ジャパン
  • 発売日: 2000/06/21
  • メディア: CD

イスラエルとの第2も1000円盤になっていましたね。他に第1、第3、第6、第10(アダージョ)の録音があるようですが、これだけマーラーがブームになっても、全集録音の白羽の矢は立たなかったようで、20代でウィーン・フィルと第2を録音したメータとしてはさびしい限りです。そもそもの凋落の原因はメトロポリタン・オペラでの失敗でしたっけ?ほぼ同期のアバド(ウィーンでスワロフスキーの同門でしたね)や小澤にくらべると、ずいぶん影が薄くなっちゃってちょっとかわいそうですね。

ところで、朝、さあ聴くぞ、と車でカセットテープをかけたら、ウンともスンとも言わず、そのうちガチャンと止まってしまいました。「あれ?」カセットを取り出してよくよく見ると、窓からテープが見えない。(>_<) 切れちゃい(ちゃって?)ました。さすがに出勤時とあって家に引き返すわけにも行かず(苦笑)、夜、帰ってつなぎました。

カセット・テープをつなぐのは何年ぶりだろう?10年以上?今回はリーダー・テープと本テープのつなぎ目だったので録音に影響はないですが、それにしても、重ねて斜めに切って、まっすぐつなぐのは、もう手元が良く見えなくて(ほんとに苦笑)難しい。さすがに眼鏡をはずさないとダメでした。昔は磁性体に悪影響を与えない(といわれていた)専用テープを使っていましたが、それもとうの昔に行方不明、普通のセロハンテープで代用です。次に聴くのはいつになることやら。

 さて本題。マーラーの音楽に対して「劇的な」ということばがしばしば使われますが、どんな演奏が「劇的」なのでしょう?たぶん、テンポや強弱の変化が強調され、聞く者をはっとさせたり、おどろかせたりするようなものなのではないでしょうか。これは、やりすぎれば「誇張」に陥ってしまいます。

そういった意味では、メータの演奏は必ずしも「劇的」ではないと思います。全体に速いところは速く、遅いところは遅く、というテンポの差はきちんとついていますが、無理にテンポを引っぱったり、特定のクレッシェンドを強調したりということはありません。マーラー解釈が多様化し始める70年代後半を代表する演奏スタイルのひとつといえるでしょう。

第1楽章の特徴的なリズムはややシャープですが、付点を短くして強調するなどの誇張はありません。葬送行進曲と速い中間部とのテンポの差ははっきりしていて、中間部からクライマックスを作って葬送行進曲に戻るあたり(練習番号11のあと)は、マーラーの「気づかれないようにTempo I に戻る」という指示通り、実に自然にテンポが落ちていきます。ほかの部分でも指示のない急激なテンポ変化はなく、最後も譜面どおりリタルダンドしません。このへんが当時「新世代のマーラー」と呼ばれた所以でしょうか。

第2楽章でも、冒頭の嵐のような主題部と、「第1楽章の『葬送行進曲』のテンポで」と指示された遅い部分のテンポの対比は、この楽章でもはっきりしています。放送録音なので不確かではありますが、対位法的な部分では主旋律と対旋律とが均等に扱われ、和声的な部分では内声があまり引っ込んでいません。結果として、分厚く、重層的に鳴る演奏となっています。

第3楽章では一転して、牧歌的な雰囲気が前面に出てきています。木管やホルンの聞かせどころのソロは自由に、のびのびとしており、第3交響曲の自然描写を思い出させます。このコーダでも、「終わりに向かって非常に切迫して」というマーラーの指示が忠実に守られていて、実にスリリングに楽章を終わります。

雰囲気をガラッと変えて第4楽章。マーラー随一の静謐な曲想に対して、メータのアプローチは、イスラエル・フィルの豊かな弦の響きを生かして、思いのほか濃密になっています。かといってだれるわけではなく、高い緊張感があります。この「緊張感」とは何だろう、何に由来するのだろうと考えてみると、音質、ピッチや強弱がふらつかないこととか、弱音でも音符の長さをフルに使っていること(音の最後が曖昧にならないこと)などにあるのかなぁと思います。いずれにしても、非常に美しい演奏です。ただ、「頽廃的(「退」じゃ感じが出ないよね)」というのとは対極にありますね、きっと。

第4楽章からアタッカで続く第5楽章は、俄然気分を入れ替えて、軽快というか爽快、まったく音楽が淀みません。「ちょっとまってよ~」と言いたくなるくらいシャカシャカ進んでいって、エネルギーいっぱいのコラールを経てエンディングまで一気に聞かせてくれます。「ブラヴォ」もちゃんと入っています。

久々に、ほんとうに久しぶりにメータのマーラーを聞いてみて、一言で言うと、楽譜にとても正直な演奏といえると思います。たぶん、マーラー(が指揮したとき)の解釈とは違うでしょうが、メータのほうがきっと譜面に書かれていることを尊重した演奏となるでしょう。こういった、客観的に近い姿勢で楽想を作っていくあたりが、80年代以降の新しいマーラーへのアプローチの先駆けといえるのではないでしょうか。メータの音楽はあまりにもストレートすぎて、新し物好きのニューヨーカーには間に合わなかったのかもしれませんね。

さて私事ですが、4月以降、次第に更新のペースが落ちてきました。なかなか思うに任せず、しばらく更新は週1回程度になってしまいそうですが、しばらく新しい記事が無くても継続しますので、どうぞときどき見にきてやってください。


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コメント 6

ensemble

ベスト3へのご投票、ありがとうございました。
テープをつなぐ、なんてもう忘れていました。昔は何回もやりましたね…
メータのほうがよっぽど覚えています。比較できる話ではないか!
by ensemble (2006-06-08 11:51) 

stbh

ensembleさん、ご来訪ありがとうございます。お返事が遅くなり失礼しました。メータは、LAPOでのようなオーケストラ・ビルディングの仕事に、より才能があったということでしょうか。政治力もないわけでは無いと思うのですが、NYP以降、うまくいきませんでしたね。
by stbh (2006-06-10 10:00) 

サンフランシスコ人

ニューヨーク・フィルハーモニックの来シーズンは...

http://www.playbillarts.com/features/article/7878.html

by サンフランシスコ人 (2009-01-14 06:06) 

stbh

サンフランシスコ人さん、情報ありがとうございます。2010年には「アジアン・ツアー」と書かれていますね。
by stbh (2009-01-15 22:58) 

サンフランシスコ人

Vietnam, Japan, and the United Arab Emirates....

http://www.nytimes.com/2009/01/13/arts/music/13gilb.html?ref=music
by サンフランシスコ人 (2009-01-16 08:01) 

stbh

UAEへも行くのですね、大ツアーですね。

ところで、もうすぐハイティンク/CSOが来日しますが、S席4万円は手が出せません…。NYPも似たような値段なんだろうなorz
by stbh (2009-01-17 10:01) 

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