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Britten/WarRequiem2a [声楽曲]

戦争レクィエム第2回は、第2曲「ディエス・イレ」の前半を取り上げます。

聴いた演奏は、さすがに海賊盤も、関連する録音も出ていないようで、申し訳ありません。

ブリテン/戦争レクィエム
ソプラノ:ユリア・バラディ
テノール:ペーター・シュライアー
バリトン:ディートリッヒ・フィッシャー・ディースカウ
指揮:ウォルフガング・サバリッシュ
日本プロ合唱団連合
東京荒川少年少女合唱隊
NHK交響楽団
1979年5月9日 東京文化会館にて
(表記は当時の番組表に従っています)

文化ですので、定期公演ではないでしょう(当時は、N響定期はすべてNHKホールでした)。合唱も、難曲だからか、恒例の国立音大ではなく、日本プロ合唱団連合が受け持っています。何かの記念かどうかは私の手元資料ではわかりませんが、これだけのソリストを集めるのですから、きっと何か特別なきっかけのある演奏会だったのでしょう。

ディエス・イレの話に入る前に、前回の「キリエ」について若干の補足を。大したことではありませんが、第1曲で合唱は座って歌うように指示されています。「ディエス・イレ」の冒頭で初めて立つのですね。確かに座って歌うと声が出しにくいものですが、視覚的効果も大きいと思います。他にも合唱が立ったり座ったりを指示した曲はあると思いますが、具体的に何だったかいまちょっと思い出せません(^^; アマチュアなどの大合唱では、舞台に座る空間が無く、立ちっぱなしになることもしばしばあるようです(このあと別に紹介する演奏会がそうでした)。

もうひとつは調号。ブリテンは基本的に無調音楽は書かず、何らかの音階に属する作品を物しています。「キリエ」はフラットひとつ(ヘ長調かニ短調)ですが、あまり中心音がはっきりわからない展開が続きます。混声合唱と少年合唱の主音は明らかにF#とCなのですが、オーケストラはやはり、冒頭とかフレーズの最後に出てくるAなんでしょうか。

II Dies Irae
「戦争レクィエム」中の最大の楽章で、混声合唱(とソプラノ)とオーケストラ、テナーand/orバリトン・ソロと室内オーケストラが交互に4回ずつ歌い、第1曲と同様、最後にア・カペラの混声合唱で終わります。天上の声である少年合唱は、この楽章には出てきません。人々はひたすらおののき、おそれ、嘆き悲しむだけです。

冒頭、トロンボーン、トランペット、ホルンの順にファンファーレが響きます。これらの逆付点、三連符、シンコペーション、そして下降スケールの特徴的なリズム・音程は、"Tuba mirum"はもちろん、楽章全体を通してあちこちに出てきて、波状攻撃のように執拗に人々を攻め立てるかのようです。続いて、これも特徴的な7拍子のリズムにのって混声合唱が最初はpppで"Dies irae"を歌いだします。クレッシェンド・ディミニエンドを繰り返しながら次第に大きくなり、最後の審判のラッパが金管総出で鳴らされてクライマックスとなり、合唱が"Tuba mirum"を歌います。ここは恐ろしいト短調が使われています。

オーケストラと合唱が静まると室内オーケストラがファンファーレの音形を反復しながら、バリトンが初登場、「ラッパが歌った」とオーエンの詩を歌います。こちらのラッパは、戦場でわびしく悲しげに鳴っています。

典礼文に戻り、ソプラノが"Liber scriptus"を歌います。離れた音程と特徴的なリズムは非常に歌いにくいですが印象的です。ソプラノと交互に歌う合唱は半分に絞られ、音量バランスが整えられています。

このあとの室内オーケストラは、珍しく快活なリズム(標語は"Fast and gay"「速く、楽しげに」と書かれています)ですが、戦場で死神"Death"と親しく歩いたり、食事をしたりした挙句、殺されていく様子の描写です。最後の"He wars on Death - for Life; not men - for flags."「彼は『生』のために『死』と戦うのだ、誰が軍旗のために戦うか」という一節は、特に迫ってくるものがあります。

さてちょっと半端なのですが、ここで演奏についての感想を。この演奏を聴いていると、音楽的にはとにかくソロがすごい。特に最後の男声二人のデュオは、死んでいく兵士を淡々と、シニカルに歌い上げていて、怖いくらいです。ソプラノはこのあとの"Lacrimosa"で本領発揮ですね。

この演奏会にかかわるエピソードで覚えているのは、こんな話です。たぶんFM放送のときに解説の人が話していたのだと思います。

室内オーケストラの打楽器奏者は、ティンパニ、小太鼓、大太鼓、シンバル、ドラを一人で演奏するよう指定されているのですが、N響は3人の奏者を室内オーケストラ用に用意しました。たしかに上のデュエットの場面など、ティンパニ、スネア、シンバルを交互にたたくようになっているのですが、これは一人でやるからリズム感、(実は死神に強制された)躍動感が出るのであって、複数人でやったらかえってボロボロになってしまうことは、ちょっとオーケストラの経験があればわかりそうなものです。

これを聞いたサヴァリッシュは即座に、「一人にしなさい」と言って、本番は実際に一人になったということです。このエピソードが、当時の日本のオーケストラのスタッフのレベルをあらわすと見るか、N響のお役所体質をあらわすと見るかは皆さんにお任せします…。


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