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Puccini/GloriaMissa [声楽曲]

今週は電車で出かける機会が多かったので、あまり音楽が聴けませんでした。こんな景色のとことか行ってました。

ご多分にもれず「トゥーランドット」を聴いてみたりしていたのですが、ここで天邪鬼根性がむくむく。「トゥーランドット」の記事は多くの方がupするでしょうから、私はあえてこれで。

Puccini: Messa di Gloria: Preludio sinfonico; Capriccio sinfonico

Puccini: Messa di Gloria: Preludio sinfonico; Capriccio sinfonico

  • アーティスト: Hermann Prey, Giacomo Puccini, Claudio Scimone, Monte Carlo National Opera Orchestra, Philharmonia Orchestra of London, José Carreras
  • 出版社/メーカー: Apex
  • 発売日: 2003/02/18
  • メディア: CD

「トゥーランドット」がプッチーニの最後の作品ですから、その対極としての「グローリア・ミサ」"Messa di Gloria"ですね。演奏はクラウディオ・シモーネ指揮のフィルハーモニア管弦楽団とアンブロジアン合唱団、ソロがカレーラスとプライというのが魅力的です(1983年のデジタル録音です)。このCD、プッチーニ初期の珍しい管弦楽曲も入っていて、プッチーニのオペラに魅力を感じている方におすすめだと思うのですが、いかがでしょう?

この「ミサ」はプッチーニの非常に若いときの作(卒業作品らしい)です。初演は1880年、プッチーニが22歳(?)のときなのに、プッチーニの生前に出版されることも無く、2回目の演奏は70年以上たった1951年に行われています。曲は、「キリエ」「グローリア」「クレド」「サンクトゥス」「アニュス・デイ」のミサ通常文に作曲されていて、このCDだと演奏時間は全部で50分足らず、そのうち半分近くの20分が「グローリア」です。名前の由来は、この長大な「グローリア」によるのでしょう。

「アイーダ」を観て「僕が新しいヴェルディになるのだ!」と心に決めたプッチーニらしく、この曲は全編、宗教曲というよりオペラ的な色合いが強いです。「キリエ」冒頭の変イ長調の弦楽器の和音の何と初々しいことか!まるで乙女が初恋を歌うアリアが続きそうなラルゲットのあと、合唱が入ってきますが、強弱やテンポの抑揚が大きく、またこの演奏はそういった表情の変化の指定を忠実に守っています。"Christe"の中間部でちょっと短調ぽくなって、また"Kyrie"に戻って静かに終わります。

長大な「グローリア」は木管とピツィカートの伴奏に乗って、女声だけのp(ハ長調)で始まります。アレグロなので「ひっそり」という感じではないのですが、モーツァルトやベートーヴェンの輝かしい「グローリア」を期待するとちょっと肩透かし。次に一瞬のオーケストラのトゥッティをはさんで男声がmfで、そしてトランペットのファンファーレと一緒に"Gloria"と合唱が歌って、3回目の旋律でffになります。その後変イ長調に転じて"Et in terra pax"をソプラノと他のパートとの掛け合いで。

ファンファーレをはさんで間奏曲のような"Laudamus te"。そしてこの曲の白眉であるアリア、じゃなかった、テナーソロ・変ニ長調の"Gratias"。優美な旋律の最後はオペラさながらのテンポ・ルバートになります。まるでヴェルディのレクイエムの”Dies irae"のように"Gloria"の主題が回帰したあと、"Gratias"のテーマにのって合唱が"Domine, deus"を歌い、今度は勇ましいヘ長調の行進曲風の旋律でバスから”Qui tollis"を歌いだします。合唱がちょっとカノン的な進行を見せますが、あまり対位法的ではありません。

ハ長調に戻ってコラール風の"Quoniam tu solus"にファンファーレが重なって盛り上がったところで、"Cum sancto"のフーガになります。"Cum sanctis"と"Gloria"の主題が重なって二重フーガ(プッチーニの二重フーガですよ!)のようになったあと、"Gloria"の主題、"Amen"の経過句、もういちど"Cum sancto"がストレッタで出てきて、最後はラルゴ-プレストで"Amen"を歌って華やかに終わります。

全曲でいちばん劇的なのは、ハ短調、アンダンテのユニゾンで歌いだされる「クレド」でしょうか。「信仰告白」というにはあまりに抑揚の大きい音楽で、ここは特にオーケストラが雄弁です。ト長調に転じて、アカペラの合唱とテナーソロで"Et incarnatus"を歌い上げたあと、ト短調、バスのソロで"Crucifixus"が切々と歌われます。このソロは「グローリア」のテナーソロと対を成す、魅力的な部分ですね。そして復活"Et resurrexit"!しかしハ短調・アレグロの曲調は不安を募らせます。

短調のまま"Et in spiritum sanctum"で重々しい"Credo"の主題に戻り、変イ長調・ラルゲットの”Et unam sanctam"、経過句の"Et expecto"を経て、やっと晴れやかなハ長調で"Et vitam"になり、力強いffの"Amen"で結ばれます。「クレド」では大規模なフーガなどがないぶん、いっそう「接続曲」的、というか結局、番号オペラ的な構成になっています。

「サンクトゥス」はト長調・アンダンテ。モノフォニックなコーラスを中心に演奏されます。非常にあっけらかんとした"Hosanna"を経て変ホ長調に転調し、3/4拍子でバリトンの独唱となる"Benedictus"につながります。2度目の"Hosanna"は面白いことに3/4拍子のまま。フーガとかは無いまま、静かに終わります。

そして最終曲、「アニュス・デイ(神の子羊)」は、ハ長調3/4拍子で後に「マノン・レスコー」に出てくる旋律がまずテナーソロ、次にバスソロ、3回目はデュエットで歌われます。最後に静かに合唱が"dona pacem"と歌って曲が閉じられます。「サンクトゥス」と「アニュス・デイ」あわせて6分前後と、若干の息切れ感(^^;が無いわけではありませんが、しみじみ聴けます。

この曲、録音は確かコルボが最初だったのではないでしょうか(1970年ごろ)?最近はご存知の方も増えてきたようですが、まだまだ有名オペラたちに較べると知名度は低いですね。若書きの作品ですが、後年の叙情的なスタイルがすでにかなり確立されていることがわかります。プッチーニの作品というと旋律にどうしても耳を奪われがちですが、オーケストレイションも独特のセンスがあり、その萌芽をここで聴くことができます。


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おさかな♪

先日、タワレコでトゥーランドットがかかっていて、素晴らしかったです。
フロア全体で聴く音楽はとても気持ちが良くて、ついつい聴き入ってしまいました♪ プッチーニ、大好きです^^。
by おさかな♪ (2006-03-11 23:09) 

stbh

おさかな♪さん、nice!とコメントありがとうございます。
お店で好きな曲がかかっていると気持ちいいですね。ついつい聴いてしまいます。近所のお店に「トゥーランドット」の全曲盤がかつてないほどたくさん入荷していました(^^ プッチーニ・ファンが増えるといいな。
by stbh (2006-03-12 23:03) 

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