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Berlioz/Requiem [声楽曲]

なんか忙しくてばたばたしていたら、モーツァルトの誕生日も忘れてこんなのを聴いてしまっていました…。

ベルリオーズは1867年(死の2年前)に、手紙の中で「もし私の作品がひとつしか残せないとしたら、私はレクィエムの救済を乞う」と書いています。数々の傑作をものしたベルリオーズが最晩年に至っても、この曲を自らの代表作として選んだ理由は何なのでしょうか。

Berlioz: Requiem; Te Deum

Berlioz: Requiem; Te Deum

  • アーティスト: Hector Berlioz, Sir Colin Davis, London Symphony Orchestra, Nicholas Kynaston, Franco Tagliavini, Ronald Dowd
  • 出版社/メーカー: Philips
  • 発売日: 2003/04/08
  • メディア: CD

録音はレクィエム、テ・デウムとも1969年、もう40年近く前になるのですね。当時、デイヴィスはベルリオーズの作品を多く手がけていて、「ベルリオーズのスペシャリスト」と言われていました。このCDのジャケットはオリジナルLPのジャケットが縮刷されているのですが、そこにも"Colin Davis Belrioz cycle"と書いてあります。しかし解説書の写真が若い!彼は1927年生まれですからこの録音のころは40歳そこそこ、それでLSOと1年間で2曲もこんな大作を録音してしまうのだから大したものです。すでにPhilipsの「顔」だったのでしょうか。

さて、1時間半の演奏時間と大編成を要するこの大曲が、約3ヶ月で書かれたというのは驚くべきことです。1937年7月28日の、1830年の革命で命を落とした人たちのための追悼式で演奏するレクィエムの作曲依頼がベルリオーズにあったのは、1837年の3月のことです。ベルリオーズはものすごいスピードで作曲を進め、6月29日にスコアを完成し、パート譜のコピーや、430人集めた演奏者のリハーサルに入りはじめました。ところが演奏はいきなり、政治的な理由からキャンセルされてしまったのです。

ベルリオーズはこの年の7月29日の父への手紙の中で、こう書いています。「ここには、これまでに書かれた最大の音楽作品がありますが、ちょうどロビンソン・クルーソーと彼のカヌーのようなものです-船出は非常に難しいのです。」

カヌーというには大きすぎると思いますが、いずれにしても船は出ました。この年の秋、アルジェリアとの戦争で亡くなった将軍の葬式を行うことを政府が決め、ベルリオーズの巨大作が日の目を見ることになったのです。初演は、同年12月5日、もともとの演奏会にも予定されていたパリのアンヴァリッド(ナポレオンの棺があるところ)で行われました。演奏者は合唱が210人、オーケストラが弦楽110人を含む190人だったそうです。

この人数でわかるように、この作品の演奏には、大合唱団とともに大編成のオーケストラと、バンダ(別働隊)のブラスバンドが必要です。詳しく書くと、ステージ上に

フルート4、オーボエ2、コーラングレ2、クラリネット4、ホルン12、ファゴット8、
コルネット4、テューバ4、
ティンパニ16(10奏者)、Bbの大太鼓、大太鼓、ドラ4、シンバル10、
第1ヴァイオリン25、第2ヴァイオリン25、ヴィオラ20、チェロ20、コントラバス18、
ソプラノとアルト80、テナー60、バス70

バンダはそのメインの集団の四隅に配置されることになっています。

第1オーケストラ(北):コルネット4、トロンボーン4、テューバ2
第2オーケストラ(東):トランペット4、トロンボーン4
第3オーケストラ(西):トランペット4、トロンボーン4
第4オーケストラ(南):トランペット4、トロンボーン4、テューバ4

これだけでもけっこうな数ですが、スコアには恐ろしい(笑)ことが書いてあります。「示されたこれらの数字は単に相対的なものである。場所が許せば、合唱を2倍、3倍にしてオーケストラも比例して増やしてよい。しかし、700から800人といった非常に大きな合唱の場合は、全員を使うのは"Dies Irae, Tuba mirum"と"Lacrymosa"のみとし、他の楽章では400人に抑えなければならない。」

この指定にからもわかるように、楽章によって編成は極大から極小まで変化します。全10楽章のうち最大の編成は第2、6楽章("Dies Irae, Tuba mirum"と"Lacrymosa")で、バンダも打楽器も全部登場します。バンダが全員出てくるのは第2、6楽章のみで、第4楽章"Rex tremendae"に一部、第8楽章"Hostias"と第10楽章"Agnus Dei"にはフルートと特徴的な和音を鳴らすためにトロンボーンが、用いられています(第10楽章はテューバも使われます)。ティンパニ群は第4、10楽章でも登場します。

唯一テナー・ソロの出番がある第9楽章"Sanctus"は、ステージ上のコルネットの唯一の出番でもあります。大太鼓とシンバルがppで用いられるなど、他の楽章とぜんぜん違ったオーケストレイションになっています。ステージ上のテューバはこの楽章と第7楽章"Offertorium"だけに出てくるので、これらの楽器は、バンダと兼務が可能ですね。

第1楽章"Requiem et Kyrie"は通常の(木管とホルンと弦の)オーケストラのみ、第8楽章はフルート、トロンボーンと弦楽のみ、第3楽章"Quid sum miser"はコーラングレ、ファゴットと低弦のみ、そして最小の第5楽章"Quaerens me"は合唱のみ。これらの楽章は静謐、繊細な、ベルリオーズの別の(そして大事な)面を見ることができます。

編成順に書いてしまったのでわかりにくいですが、大雑把に言うと、大編成の楽章と小編成の楽章がほぼ交互に出てくる構成で、ダイナミクスの対照が楽しめるようになっています。バーンスタインがアンヴァリッドで行った録音はSQ4チャンネルだったと思いますが、最近のサラウンドを使ったらもっと効果があるでしょう。私は基本的に、音楽はステレオで十分と思っているのですが、この曲に限っては、ぜひマルチチャンネルの録音を期待したいです。

この編成は、1854年に改訂されたスコアによっています。初版は1938年に出版され、バンダにオフィクレイド(低音の金管楽器、テューバとはぜんぜん違うそうです。「幻想」で指定されているのはこの楽器)がありましたが、テューバに変わり、合唱の人数が増え(^^;)、何箇所かカットされているそうです。現在の譜面は、さらにその後1867年にわずかに改訂されたものがベースとなっています。ちなみに、ここで指定されているコルネットはピストン有りの楽器、トランペット(トロンバ)はピストン無しの楽器だそうです。

そうそう、フランスの曲はファゴットの本数が多いと思いませんか?実はフランスで主に用いられていた楽器は「バッソン」といって、音色がファゴット(バスーン)と違い、音量も小さいのです。詳細は、例えば以下のサイトをご覧ください。

http://www2.yamaha.co.jp/u/naruhodo/10fagott/fagott1.html

うー、編成の話ばかりになってしまって、演奏にほとんど触れられませんでしたね…。デイヴィスのテンポは比較的遅めで、一つ一つの音をたっぷりと聴かせています。約40年前の演奏・録音水準ですから、バンダのテンポがわずかにそろわないところがあったり、合唱がそれほど大編成でなかったり(一人ひとりの声が聞こえ、カタマリでぶつかってこない)するのは、まあご愛嬌。ダイナミックなブラスから繊細なアカペラまで、十分に楽しむことが出来ます。

こういっては何ですがこの曲、さすがに3ヶ月で作曲されただけあって、単純な(=親しみやすい)テーマが多く、対位法的に込み入っているわけでもなく、聴きやすい曲だと思います。ぜひCDで親しんで、数少ない実演に行ってみたいものです。

ベルリオーズに関しては(実はそれ以外にもいろいろ惹かれるところがあるのですが(^^;)こちらのサイトが読みやすく、充実しています。

http://www.rinc.or.jp/~kurata/berlioz/berlioz.html


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