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Schumann/Sym3 [交響曲(独墺系)]

またまた安易ですが、ジュリーニの「運命」とのカップリング、シューマンの「ライン」です。年が明けてから交響曲のエントリーばかり、しかも5、3、5、3、…。前回の記事と同じCDですので、リンクは省略。

この録音の特徴のひとつは、オーケストレイションを大幅に変更した、いわゆる「マーラー版」を採用していることにあります。しかしCD本体ではそれについてまったく言及しておりません。とはいえ、他の演奏を聴いたことがあれば、何となく響きがすっきりしていたり、ところどころに「あれ?」と思うような音が聞こえたりすることで違いがわかると思います。

たしか、初出時からLPやCD自体に言及は無かったと思います。まあシューマンの交響曲は、というか、シューマンに限らず、交響曲に限らず、指揮者が楽譜に手を入れるのが当たり前の時代から活躍していたジュリーニですから、ことさら「マーラー版」を強調する必要を感じなかったのかもしれません。木管やトランペット、ティンパニが削られているため、相対的に弦とホルンが目立つようになっています。

第1楽章は、最近の快速な演奏・録音になじんだ耳にはかなり遅く聞こえます。しかし、音の長さを区別するフレージングの明確さと、オーケストラが整理されていることによるクリアな響きのおかげで、まったく重さは感じさせません。

第2楽章は「スケルツォ」なのですが、ジュリーニは緩徐楽章のようにのびのびと歌い上げています。本当の緩徐楽章である第3楽章も、いっそう歌が魅力的です。通常の部分のテンポが厳格だと、わずかのテンポのゆれも効果的に聞こえることが、この録音からよくわかります。

第4楽章は形式的には伝統的な4楽章構成に割り込んだ格好になっていますが、シューマンがケルンの大聖堂に触発されて書いたという経緯もあり、この交響曲の代名詞のように言う方もいるようです。トロンボーンは、この曲の最初の出番として、楽章の冒頭からppのコラールで出てきます。ブラームスの第1番ほどではないでしょうが(ホルン・ファゴットも一緒なので)、アマチュアにはプレッシャーだと思います。ジュリーニはここではあまり極端に粘らず、和声より旋律線を大事にしているように聞こえます。

第5楽章は冒頭の弦のレガートにはっとします。二分音符を元気よく「ターン、ターン」と弾き飛ばす演奏・録音が多い中、ジュリーニは「たー、たー」としっとり弾かせています。譜面を見るとfだけどdolce、うーんそうだったか、参りました。第1楽章と同じ雰囲気で、音の数が整理されたうえで、ゆったり歌われることで旋律も和声もくっきりと響きます。このテンポでオリジナルどおりの編成で演奏すると、確かに重過ぎるかもしれません。このテンポが大前提のうえでの、マーラー版の選択だったのですね。

この録音でも、「うたう響き」を大切にしたジュリーニの解釈は徹底されています。しかし、録音時期が約1年違うからか、「ライン」は必ずしも演奏しなれていない曲(版)だからか、「運命」のほうが、アンサンブルはいっそう緊密な気がします。

ところで、偏った聴き方でクラシックに入った私は、「マーラー版」と聞いたとき、「おお、4管編成?ホルンは8本?ティンパニはやはり二人?打楽器は何を使っているのだろう」と、本来と正反対のことを考えてしまっていました。そうです、「マーラーの交響曲」をイメージしてしまっていたのですね。若気の至りというか、恥ずかしい限りですが、まあ時効ということで(^^;

話はまた変わりますが、私がやっていたころのアマチュア・オーケストラでは弦や木管の人はモーツァルト、金管の人にはチャイコフスキーやワーグナーなどを常にやりたがっていました(マーラー、ブルックナーはまだ少数派でした)。で、ベートーヴェンとブラームスはどちらにも人気が高かったと思います。

シューマンの交響曲はどれも演奏時間が40分前後だし、通常の2管編成なので、そういった面ではブラームスの交響曲と大差ないのですが、地味な印象のせいか、また録音もあまり多くなかったせいか、演奏会の曲目候補にのぼることはまれでした。最近はシューマンの交響曲のオリジナルのよさが見直され、録音も増えたので、それなりに聴いたり演奏したりする機会が増えているのではないでしょうか。

トラックバックは、まずromani1988さんの記事です。おっしゃるとおり、「落ち着いたテンポ」と「躍動感」が同居しているのがジュリーニの演奏のすごいところですね。そしてstonezさんの記事、ホルスト・シュタインの最近の録音をご紹介なさっています。「緻密で均整のとれた響き」、思わず聴いてみたくなりますね。


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コメント 4

romani

こんにちは。
TBいただきありがとうございました。
stbh さんの記事を読んで、なるほどと感じることが多かったです。

>このテンポが大前提のうえでの、マーラー版の選択だったのですね。
私もまったく同感です。本来、あまり版にこだわるタイプの指揮者ではないと思いますが、やはりこの曲では、マーラー版のほうがより自分の目指す音楽に近いと感じたんでしょうね。
やはり自分の確固たるスタイルを持つ凄い指揮者だったと、改めて実感します。
by romani (2006-01-14 14:49) 

stbh

romaniさん、コメントをありがとうございます。ジュリーニの録音は、どれを聴いても、曲本来のありかたを伝えてくれるとともに「ジュリーニの音楽」になっているように思えます。「頑固」というイメージからは程遠いのですが、きちんと自分のスタイルを貫いた人だったのですね。
by stbh (2006-01-14 18:21) 

stonez

はじめまして!
おさかな♪さんのブログから遊びにきました。stbhさんの視点はとても興味を惹かれます。拝見していて、やっぱりジュリーニに外れはないな(笑)と、改めて感じました。私はジュリーニの「ライン」は未聴なのですが、これは必ずチェックしてみようと思っています。
ところで、私のブログをブックマークに加えて頂いているんですね!私は音楽も楽器も素人なので、お恥ずかしい内容ですが、とても嬉しく思います。今後ともよろしくお願い致します!こちらでもブックマークさせて頂きました。
by stonez (2006-01-16 12:33) 

stbh

stonezさん、ご来訪ありがとうございます。stonezさんのブログ、楽しませていただいております。ご挨拶が遅れまして失礼しました。
こちらは、stonezさんより一回り以上年のいっている(笑)、元タイコタタキおやじ(神奈川県在住)です。ボツボツ書いていきますので、今後ともよろしくお願いします。
by stbh (2006-01-17 07:18) 

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