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Ives/3Places [管弦楽曲]

今回はちょっと難しい曲を選んでしまいましたし…。チャールズ・アイヴズ(1874-1954、シェーンベルクと同い年)の「ニュー・イングランドの三つの場所」です。

Ives: Three Places in New England; Ruggles: Sun-treader; Piston: Symphony No. 2

Ives: Three Places in New England; Ruggles: Sun-treader; Piston: Symphony No. 2

  • アーティスト: Charles Ives, Walter Piston, Carl Sprague Ruggles, Michael Tilson Thomas, Boston Symphony Orchestra
  • 出版社/メーカー: Deutsche Grammophon
  • 発売日: 2001/05/08
  • メディア: CD

マイケル・ティルソン・トーマス(MTTと略す方もいます)は有名な指揮者ですが拙ブログでは初登場ですね。このジャケ写は若い!? MTTとBSOの録音はそう多くないと思います(他にはドビュッシーの「映像」などがあるようです)。上のリンクはLP発売当初の曲目が収録されているCDだと思いますが、私の持っているものは国内盤で、小澤/BSOの交響曲第4番-これもとんでもない曲です-、「宵闇のセントラル・パーク」とのカップリングです。したがって、リンク先のCDに収録されているアイヴズ以外の曲はぜんぜん知りません。m(- -)mゴミンナサイ

アメリカ東部の、イギリスからの入植者でできた6州(メイン、ニュー・ハンプシャー、ヴァーモント、マサチューセッツ、ロード・アイランド、コネティカット)を総称して「ニュー・イングランド」というそうです。アイヴズは、ボストン・コモン(ボストン、マサチューセッツ)、野営地(レディング、コネティカット)、フサトニック川(ストックブリッジ、マサチューセッツ)のそれぞれの景色に曲をつけていますが、無調、複調、ポリリズムなどの全盛期の彼の作風が色濃く反映されています。

「全盛期の」と書きましたが、彼は大学は作曲で出たものの「自分の理想の音楽を追求していては、作曲家として身を立てることは困難である」と見切り、1898年に就職して以来、保険会社の社員(のち経営者)を本職にして、趣味で作曲を続けました。1918年、心臓発作に見舞われてから創作数は激減し、1925年以降はほとんど作曲していません。

ところが彼の作品が日の目を見だしたのは彼の最晩年、ほとんど作曲しなくなってからです。例えば交響曲第3番(1904年)が初演されたのは1946年、ピューリツァー音楽賞を受賞したのはその翌年ですから、作曲から40年以上の歳月が経ってはじめて音になり、人々に知られるようになったことになります。

もともと彼の音楽は決して必ずしも「耳にやさしい(心地よい)」音楽ではなく、不協和音、不協和リズム、不協和…、とにかく実験的な要素の多いものなので、演奏も困難ですし、いくらアメリカでも毎週のように演奏会にかかっている、というようなものではありません。だから「作曲で身を立てるのをあきらめた」のも、まあ納得です(^^; しかし、「アメリカを代表する最初の作曲家」の称号は、間違いなく彼のものなのです。

「ニュー・イングランドの三つの場所」は「オーケストラル・セット」という副題がついており、3曲が有機的につながっているというよりは、言葉は悪いですが「寄せ集め」に近いです。作曲年代も、第2曲が1903年ですが第3曲は1914年に完成しています(第1曲はこの間)。1管編成、打楽器、ピアノ、弦5部という編成ですが、管楽器がテューバまであるので、低音が分厚く聞こえます。

第1曲「ボストン・コモンのセント・ゴードンズ(ショウ大佐と黒人部隊)」は、ボストン・コモン(ボストンの街中にある有名な公園)にある、南北戦争時に編成された北軍の黒人部隊と、隊長ショウ大佐のレリーフが題材です。この黒人部隊の話は「グローリー」という映画になっているそうです-アイヴズの曲より有名そうです。弦楽合奏の不協和音に低音のフルートがからみながら曲が始まり、次第に音が積み重なって行きます。

第2曲「パットナム将軍の野営地」にぎやかなキャンプを模した冒頭から、耳をすますといろいろな曲があちらこちらから断片的に聞こえてきます。マーラーがこの曲を聴いても、「これがポリフォニーだ!」といったでしょうか?

第3曲「ストックブリッジのフサトニック川」は、弦のひそやかなひびきが少しずつ、少しずつ厚みを増し、気がつくとfffの大不協和音になり、突然それが途切れてまた弦のかすかな響きで終わり、という絵に書いたような「現代音楽」風のパターンになっています。実際のフサトニック川は大した事ないのですが。

実は私がアメリカで最初に泊まったのが、このストックブリッジStockbridgeなのです。マサチューセッツ州の西の端、I-90というハイウェイからほど近くの田舎町です。名物と言えば、Norman Rockwell (画家=イラストレーターの走りの方です)MuseumとRed Lion Innという昔からのホテルくらいでしょうか。Museumは私が行った頃は多少すすけた感じがして、それはそれでいい味を出していたのですが、10年位前に大改装したようです。

StockbridgeはレノックスLenoxの隣町です、というとわかる方もいらっしゃるかしらん。Lenoxは、BSOの夏の本拠、タングルウッドのお膝元です。一泊で何百ドルもするBed & Breakfastが数多くあります。バブルの頃、会社の長期出張(2ヶ月くらい)で行ったので、そういったB&Bにも何回か泊まったのですが、TschaikovskyとかPucciniとか名前がついた部屋で、天蓋がついた真鍮のベッドで、部屋中いろいろ飾ってあって、とても豪華で、男ひとりで泊まるのはとても違和感がありました(^^; また、最初に泊まった(一番長くいました)ストックブリッジのInnでは、管理人さん夫妻と仲良くなって、一緒に歌をうたったりピアノを弾いたりして楽しみました。何しにいったんだか…

今から思えば高級な避暑地で、その後近所に長期滞在したときも行きましたが、そうそう宿泊できませんでした。大きい池と山ひとつがついたお屋敷に住んでいた経済学者夫妻(出張受入先の人の大家さん)ともお友達になって、かれらが日本に来たときに会ったりしました。「すげー」とか言ってると、彼らが、「アメリカにはもっともっとお金持ちがいるのよ~」と言っていたのが印象的でした。

LenoxやStockbridgeはとてもきれいな町(村)なのですが、出張受け入れ先のある隣町は工業都市で、普通に浮浪者がいたりします。そこらへんのギャップが大きいのが、いかにもアメリカらしいです。「アメリカ」のイメージは最初に行ったところに大きく左右されるのではないかと思うのですが、私の場合、「みんな親切な東部の田舎」が原体験になってしまっています。今思えば、なかなか得がたい貴重な体験でした。

後半は音楽と全然関係なくなってしまってごめんなさい。でもねー、きっと今でもいいところだと思いますよ、ニュー・イングランド(の田舎)。実は最近、出張でボストンなどに行ったのですよ。残念ながら日程がタイトで、BSOも他の演奏会も聴けず、がっくりして、思い出話をしたくなったのかもしれません。

追記:yurikamome122さんのブログ
http://yurikamome.exblog.jp/
で、この曲に触れられています。この曲に限らず、シャープな視点が素敵です(yurikamome122さん、気を悪くしないでくださいね)。


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コメント 6

サンフランシスコ人

「MTTとBSOの録音はそう多くないと思います」

ティルソン・トーマスは、あまりボストン響を指揮しなかった。
by サンフランシスコ人 (2008-02-25 07:46) 

stbh

MTTはカリフォルニア出身なのですね!
by stbh (2008-02-27 20:03) 

サンフランシスコ人

MTTとナガノとスラットキンは、カリフォルニア出身です!
by サンフランシスコ人 (2008-02-28 06:56) 

stbh

そうそう、スラットキンもそうでしたね(汗
by stbh (2008-02-28 22:34) 

サンフランシスコ人

三人ともカリフォルニアのクラシック音楽向上のために努力しています。
by サンフランシスコ人 (2008-03-02 04:01) 

stbh

そうなのですか。皆さん、出身地を大事にしているのですね。
by stbh (2008-03-02 12:56) 

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