SSブログ

Berg/3Pieces [管弦楽曲]

20世紀前半に無調音楽を積極的に推進した、いわゆる「新ウィーン楽派」の3人は、「伝統の破壊者」または12音音楽の創始者シェーンベルク(1874-1951)が最年長(というか、他の二人の師匠)で、ミニマル・ミュージックの祖とも言われるストイックな作風のウェーベルン(1883-1945)がその次。最も若い(でも、最も早く亡くなった)アルバン・ベルク(1885-1935)は最後までロマン派よりの、濃厚な響きの音楽を書き続けた人です。

ベルクの代表作は、弦楽四重奏のための「叙情組曲」(弦楽合奏のための編曲・抜粋版あり)、死の直前に「ルル」を中断して完成した、「レクィエム」とも呼べるヴァイオリン協奏曲、そして「ヴォツェック」「ルル」の2つのオペラでしょうか。

「叙情組曲」の方は最近あまり新しい録音の話は聞きませんね。カラヤン/ベルリン・フィルとアルバン・ベルクSQが代表盤、という認識は古すぎますか?協奏曲とオペラはいろいろあるのでまた別の機会に。

この「三つの管弦楽曲Drei Orchesterstücke Op.6」はベルク唯一の「管弦楽曲」です。1915年作曲、1929年改訂ですが、現在スコアが流通しているのは改訂版のみで、この録音も当然これにしたがっているものと思われます。

Orchestral Pieces

Orchestral Pieces

  • アーティスト: Berg, Webern, Schoenberg, Levine, Berlin Phil.
  • 出版社/メーカー: Polygram Records
  • 発売日: 1990/10/25
  • メディア: CD

ベルクの「3つの管弦楽曲」作品6(1914-1929)、ウェーベルンの「管弦楽のための6つの小品」作品6(1910)、シェーンベルクの「5つの管弦楽曲」作品16(1909)の3曲が、この順で入っているレヴァイン/ベルリン・フィルのデジタル録音(1986年、イエス・キリスト教会)。

ベルリン・フィルとしては60年代のカラヤンとの録音以来ということになります。同じDGですが、カラヤンとの録音が新しいフィルハーモニーで行われた最初の録音なのに対し、この録音はイエス・キリスト教会に戻っているのが面白いです。アマゾンのサイトにはろくな情報が入っていませんが、すでに廃盤なのでしょうか。お気に入りの録音で、いずれ他の曲もご紹介しようと思っていたのですが、残念です。

さて、ベルクの曲はぜんぜん車向けではありません(笑)。第1曲は打楽器のpやppから始まってp/ppに終わりますが、途中でしっかりクライマックスはあるのでダイナミクスの差が大きすぎます。本来は、最初のドラの音(pひとつで、なおかつdeutlich(はっきり)と書かれています)がある程度しっかりきこえる音量で聴くべきでしょう。

他の曲も4管編成にハンマーを含む打楽器群、という規模を生かしたマッシヴな響きと、弦のソロなどの静謐な響きが交錯しており、いやでもマーラーを連想させます。そして規模だけでなく、音形や楽器法なども含めて、まさに「調性の無いマーラー」といえるかもしれません。

第1曲「前奏曲」は打楽器のかすかな響きから始まり、少しずつ楽器が加わりつつ音量が拡大していきます。管楽器のフラッター、弦のスピカートなどの特殊奏法を交えつつクライマックスに達し、シンメトリカルに前半を逆順で振り返っていき、最後はまたドラの一打で終わります。

第2曲「輪舞」はまずホルン、続いてクラリネットとヴァイオリンの和音の上にファゴットとトランペットの旋律が乗って始まります。途中、「遅いワルツのテンポ」と書かれたところは明らかにウィンナ・ワルツ風ですね。テンポはいろいろ変遷しながらも、最終的には弱音器をつけたホルンとトランペットがppppで消えていきます。

第3曲「行進曲」は、マーラーの第6交響曲の第1楽章や最終楽章を思い出します。コンスタントな歩みの中で楽器が徐々に分厚くなり、音の交錯を繰り返しながらゆっくりと、しかし着実にクライマックスに向かいます。木琴が活躍するのも、マーラー第6のリフレクションでしょうか。この録音のハンマーの音は「バキ」と木質ですが、あまり誇張されていないので、聴き流すとわからないかもしれません。最後は金管のユニゾンから、上行音形を駆け上がって、六十四分音符のffのTuttiで終わります。

同じCDに入っている他の2曲と比較すると聞きやすいと思うのですが(だからこの順で入っているのかも)、一番最後に作曲されています。編成が分厚い分、アンサンブルとしての合奏は難しいです。数回の練習で本番に向かわなくてはならないプロのオーケストラは大変だと思います。市販されているも録音でも、けっこうぽろぽろ落ちていたりするものがありました。

ウェーベルンの路線はその後の現代音楽に大きな影響を与えますが、ベルクのようなロマンティックな音楽の後継者は結局現れませんでした。「爛熟と退廃のウィーンの最後の残り火」というところなのでしょう。マーラー好きの方に、ぜひ聴いていただきたいと思うところです。本当に、調性さえ気にしなければ、かっこいい曲ですよ。

今週は忙しくてゆっくりエントリーを書けず、結果としてこればっかり聴いていました。鼻歌交じりでこういう曲を車で聴いているのは、イタイですね(笑)。


nice!(1)  コメント(4)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

nice! 1

コメント 4

すまーふ

初めまして!
お邪魔します。すまーふといいます。
おさかな♪さんのところからやってきました。

ブログよんでお勉強になりました~!!
ほかの記事も見させていただきます~(^v^)
by すまーふ (2005-11-09 18:42) 

stbh

すまーふさん、はじめまして。コメントとnice!ありがとうございます。すまーふさんのすてきなブログも拝見させていただきました。ヘタレオヤジのいい加減なブログですが、息抜きにでも(ならないかな?)見ていただければ幸いです。どうぞよろしくおねがいします。
by stbh (2005-11-09 22:44) 

おさかな♪

↑(ヘタレ・・・のくだりに) そんなことはないです♪(笑)

>ブログよんでお勉強になりました~!!
 すまーふさん、Nice!
by おさかな♪ (2005-11-11 10:03) 

stbh

クラシックのことを書かれているサイトやブログ、学ぶところが多いですね。私も勉強させていただいています。今週はPCがいかれたのと仕事が押していたののダブルパンチできつかった…。
by stbh (2005-11-12 01:01) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

Beethoven/PianoTrioD..Webern/6Pieces ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。