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Schubert/D729 [交響曲(独墺系)]

以前、ニューボールドによる「未完成」の完成版をご紹介した記事(http://blog.so-net.ne.jp/classicalandsoon/2005-05-20)を書き、その後、昔エアチェックしたエイブラハムの編曲について追加しましたが、そのテープの裏に入っていた録音です。こちらはCDが出ていたみたいなのですが、やはり廃盤になってしまっているようで残念。

シューベルト:交響曲第7番ホ長調 D.729 (ワインガルトナー編曲)
ハインツ・レーグナー指揮 ベルリン放送交響楽団
(ドイツ語に近い表記にするのなら「ヴァインガルトナー」と「レークナー」かもしれませんが、ここでは通常の(よくある)表記を用います)

「未完成」の直前の未完成曲(^^;)で、ピアノ・スコアは残っておらず、(いきなり書いたといわれている)大部分は旋律だけ書かれたスコアが現存しているそうです。オーケストレイションは第1楽章の序奏と提示部だけ完成されており、あとは1パートに旋律線のみ記入され、ところどころに対旋律や和声がかかれている、という状態なのですが、スコアの最後に"Fine"と書かれていたことから、「いちおう最後まで書かれている」ということで、往年の名指揮者ワインガルトナーやシューベルト研究で名をはせたニューボールドがオーケストレイションを行っています(ワインガルトナー版はスコアも発売されているようです)。

最初、「完成しているものを先に」というコンセプトで「グレート」=7、「未完成」=8とついていた交響曲の番号が、作曲年代順に整理されるときに、「ホ長調(この曲)」=7、「未完成」=8、「グレート」=9となったようです。われわれの世代はこの番号が刷り込まれていますが、その後、「ホ長調」は「自筆あるいは出版稿だけで演奏不可能である」という理由でナンバリングから外されてしまい、現在、公式には「未完成」=7、「グレート」=8となっています。

この「ホ長調交響曲」、全曲を通してスケッチが残っている、という点ではマーラーの交響曲第10番に通じるものがあります。かたや「未完成」はその名のとおり第3楽章の途中でオリジナルの音がなくなってしまうので、モーツァルトのレクィエムや、ブルックナーの交響曲第9番、ベルクの「ルル」などに近い状態、といえるでしょう。

ぜんぜんオリジナルがない状態から「作曲」するよりはオーケストレイションを完成させるほうが、、(誰にでもできることではありませんが)補筆の仕事としてはまだ楽なのではないでしょうか。さらに、シューベルトのオーケストレイションの語法は例えばマーラーほど多種多様ではないので、「グレート」や残された管弦楽曲の研究に基づけば、独創性は低いでしょうが、そこそこ「シューベルト風のアレンジ」ができるのではないかと思えます。

この曲はどうやらホルン4本を前提にかかれているようで、「未完成」「グレート」を上回る編成ということになります(大きさとしては「ロザムンデ」の序曲と同じです)。全体の構造というか雰囲気は、同じ長調ということもあってか、「未完成」よりは「グレート」に近いと思います。

第1楽章冒頭は、ピツィカートの上に木管のe-mollのゆっくりしたメロディーが乗った序奏から始まります。ずーっとひそやかにいくのかと思ったら急にトゥッティのfになったり、V7のfの和音が鳴ってさあ主部か、と思ったらまたpになったりと、かなり長く変化に富んだ序奏から主部は一転、セカンド?の刻みの上に軽やかなE-durのヴァイオリンのメロディーが走り出し、だんだん盛り上がっていきます。なかなか大きい音のするオーケストレイションです。最後の前の和音は、ちょっと唐突だと思うのですが、シューベルトはどこまで書いているのでしょう。

第2楽章はA-durで、木管と弦が交互に旋律を歌いついで行きます。そう、この楽章も長調なので、この曲は全楽章が長調になっていて、どこをとっても明るい曲想です。むろんシューベルト特有の「翳り」はそこここにあり、むろんそれが魅力となっているのですが。

第3楽章のスケルツォは、トゥッティでC-durの分散和音(C-E-G-C-E-G)を高らかに鳴らして始まります。オーケストレイションがちょっとうるさいかな、という気がしないでもないです。リズムも旋律も「グレート」より単純なので、同等のアレンジだと鳴りすぎてしまうのかもしれません。トリオはA-dur、調性はまんま「グレート」ですね。臆面も無く同じ和声進行を繰り返して使ったりするのも、シューベルトらしいといえばらしいのですが、ちょっとしつこいかなと、ついつい思ってしまいます。

第4楽章は、第1楽章と同様に主題の旋律が軽く、最初はディヴェルティメントの終曲のような印象を受けます。終楽章に限って言えば、「グレート」より美しい旋律が多いのではないでしょうか。木管の印象的なソロが多いですね。コーダはこれもいささか唐突に、ちょっとベートーヴェンぽい響きで終わります。

こういった「編(作)曲もの」はキワモノではありますが、シューベルトの書いた音を曲がりなりにも聴ける形にしてもらうということで、意義はあると思います。いまはもうニューボールド版の録音(マリナー/ASMF)も手に入りにくいようですが、そのうち(廉価での)復活を望みたいですね。

最後になりましたが、「未完成」を含めた「シューベルトの未完成交響曲群」が、こちらのサイトに譜面つきで解説されています。とても参考になります(私も参考にさせていただきました)ので、ご紹介させていただきます。

http://homepage3.nifty.com/indymuseum/page006.html

シューベルトの交響曲のことを考えるたび、「もっと長生きしていたらどんなすごい曲を作っていたろう」と思うのは私だけではないでしょう。何しろあのベートーヴェンが第1交響曲を書いたのは30歳のときですし、「未完成」を手がけた25~6歳となると、モーツァルトでさえ交響曲はやっと「ハフナー」を書くか書かないか、第20番以降のピアノ協奏曲も書いていないのです。うーん、今年の流行語じゃないけど、実に「もったいない」。


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おさかな♪

先日、朝のNHKラジオでちょうど「未完成」を聴いたところです。
はぁぁぁ~、うとぅくしー♪♪♪
もうちょっとで会議に遅刻するところでした。
4楽章まであったら、間違いなく遅刻してました。。。フクザツ☆
by おさかな♪ (2005-10-06 17:38) 

stbh

おさかな♪さん、いよいよ合宿ですね!niceとコメントありがとうございます。小さい「ぁ」いっぱいがシューベルトのうとぅくしさのしるしですね。
朝のラジオ、車でときどき聴きます。もちろん会議がないときですが、わざと渋滞にハマって長く聴いたことも…(不良社員)。
by stbh (2005-10-07 20:24) 

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