SSブログ

Bruckner/Sym8 [交響曲(独墺系)]

もう多くの方にはおなじみなのでしょうが、最近やっとまともに聴けるようになりました。

ブルックナー:交響曲第8番

ブルックナー:交響曲第8番

  • アーティスト: ヴァント(ギュンター), ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団, ブルックナー
  • 出版社/メーカー: BMGファンハウス
  • 発売日: 2001/11/01
  • メディア: CD

しばらく前に購入したのですが、自分の中で消化するのに時間がかかってしまいました。私にとってこの曲のスタンダードはジュリーニ/VPOです。ジュリーニとヴァントの演奏は対極にあり、似ているのはトータルの演奏時間が長いことだけです。かたや、よく歌いよく流れるウィーンの音、かたやインテンポで豪放なベルリンの音。最初にこのCDを聴いたとき、耳(頭?)が拒否反応を示し、最後まで聴きとおせませんでした。

ヴァントのブルックナーは、その昔ケルン放送交響楽団時代のものをいくつか聴きましたが、金管が妙にバリバリ言っていてアンサンブルはあまりよくないし、なじめませんでした。その後長いこと食わず嫌いが続き、4,5年前(まだ存命のころです)にBPOとの第5番を聴いて、「お、いいじゃん」と思ったのが久しぶりの体験。たしかに ヴァントの剛直な解釈は、堅固な構造の第5向きです。

CDの解説書(輸入盤)にもあるように、部分部分のテンポをしっかり決め、それらの相対関係から曲を構築していく考え方で、「ビルディングブロック法」とでもよべるアプローチです。テンポの揺れが少なく、同じ構造の部分がいつも同じように演奏されるので全体の構成感(ああ、ここがあそこと対応しているのだ)がはっきりする分、構造はわかりやすいですが、それぞれのブロックの間の橋渡しのパッセージなどをうまくつなぐにしても、流れがある程度、阻害されるのは致し方ないことでしょう。

(余談ですが、「ビルディングブロック法」は構造・振動解析や金融シミュレーションでよく出てくる概念のようです。私は前者しか知りませんでした。)

しかしこのCDでもヴァントは遠慮なく曲をブロックに切り、積み上げる手法をとっており、ブロックの中はインテンポできっちり鳴らしています。さらに音価を非常に大切にしており、十六分音符、八分音符、四分音符をはっきり区別しているため、「なよ」「ほわ」と終わるパッセージが皆無です。BPOといえども、ここまできっちりやるのはそれなりの量の練習が必要だと思います。普通の指揮者はここまで要求しないでしょう。

こうやってヴァントの音楽の作り方を頭で理解するのと、大瀑布のようなBPOの音の連続になれるのとで、やっと車の中でも(やや)落ち着いて聴けるようになりました。ハース版なのはヴァントの選択ですからいかんともしがたいです。いずれにしてもこの「ビルディングブロック法」は、テンポや強弱の漸増・漸減の指示の少ないブルックナーの譜面から見る限り、ブルックナーの意図を忠実に再現していると言えるのではないだろうか、という気に(確かに)なって来ました。

それでもまだどうしても、つっかえるパッセージが第2楽章に2箇所。まず13-14小節、pからcresc.のはずがppにいったん落ちてしまう。同じ形のフレーズは2回目を小さく、というのは古典派ならわかりますが、ブルックナーでそれは不要では。そしてハ短調に戻る直前、練習番号NのティンパニのCのロール、mfどまりのはずがffまでクレシェンドしてしまい、フルートの八分音符(ぱっぱっ)やホルン(ぱぱーーん)がかき消されてしまう。ハース版の譜面は確認していませんが他のハース版の演奏はこうなっていませんから、版の問題ではないはずです。

これら以外は、「ブルックナーが鳴っている」といってよいでしょう。ブルックナーの「最良の演奏」だとは限りませんが、ブルックナーの「もっとも作曲者の意図に近い演奏」だと思います。異論はあるでしょうが、マーラー演奏におけるメンゲルベルクや、もっと言ってしまえばテンシュテットのような位置づけでしょうか。

「ブルックナーは神を見た」のなら、ヴァントはブルックナーを見たのかもしれません。


nice!(0)  コメント(2)  トラックバック(1) 
共通テーマ:音楽

nice! 0

コメント 2

渡辺純一

はじめまして。当方のBlogへコメントいただき、ありがとうございました。でトラックバックを返しましたら思いっきり文字化けしました (^^;。UTF-8 で送るよう対策してあるのですがねぇ。申し訳ないです。
by 渡辺純一 (2005-09-26 09:44) 

stbh

渡辺純一さん、トラックバックありがとうございます。文字化けはときどき起こるようなので、ご愛嬌ということで。またときどきおじゃましますので、これにめげずに今後ともよろしくお願いします。
by stbh (2005-09-26 20:29) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 1

Delibes/SylviaBruckner/Sym7 ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。