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Mahler/Sym1 [交響曲(マーラー)]

しばらくぶりにマーラーです。前回続けたときは昔のライヴをご紹介したのですが、今回はぼちぼちと、多少正規録音も織り交ぜて。

第1番はちょっとめずらしい、マゼール/フランス国立管弦楽団のライヴ、1979年3月18日、シャンゼリゼ劇場にて。マゼールとウィーン・フィルによるマーラー交響曲全集の録音が80年代前半ですね(第1番は↓これ)。

マーラー:交響曲第1番

マーラー:交響曲第1番

  • アーティスト: マゼール(ロリン), ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団, マーラー
  • 出版社/メーカー: ソニーミュージックエンタテインメント
  • 発売日: 2005/04/20
  • メディア: CD

ですから、ウィーン・フィルとの録音以前の演奏会ということになります。マゼールの演奏・録音はときどき「うわっ」と驚くようなしかけがあるのですが、この演奏では、ちょっと聴くとあまり目立ったことはしていないように思います。マゼールの経歴は非常に長いので、この曲が録音前だとしても「練れていない」ということは無いと思いますが、レコーディングではないのでおとなしめにしたのでしょうか。

マーラーの第1交響曲が複雑な成立史をたどっているのは周知のとおりですが、当初から大編成のオーケストラが想定されていました。特にホルンが7本というのは、非常に珍しいです(マーラー自身もこの曲だけ)。両端楽章のみならず、第2楽章、さらには第3楽章まで7本全部使い切っているのはさすがですね。おまけに第4楽章のコーダにはご丁寧に「ホルンの音量が足りなかったら追加するトランペットとトロンボーン」というパートまであります(省かれない(^^;ことが多いと思います)。

また、特殊楽器としては「シンバル付き大太鼓」があります。これはたたき合わせるシンバルの1枚を大太鼓に取り付け(専用のアタッチメントが売られています)、一人の奏者が片手に大太鼓の撥、片手にシンバルのもう1枚を持って、ひとりで「どん、ちゃん、どん、ちゃん」とやるものです。軍楽隊では今でも使われているもののようですが、「幼時の軍楽隊が音楽の原体験」というマーラーのお気に入りで、第2、第3交響曲にも使われています。

第1楽章は序奏の静謐な雰囲気をそのまま主部に持ち込んだような、遅め、抑えめの解釈です。提示部の繰返しを行っているのは、当時としては珍しい方でしょうか。曲が大きく動くのはコーダのホルンの「パラララッ、パラララッ、パラララッ」のあと、Etwas bewegterからいきなり早くなり、楽章の最後に向かってアッチェレランドし続けます。

第2楽章も、弓を弦にこすりつけるような音色もなく、どちらかといえば優雅ですね。グリッサンドも控えめですし、流れを止めるようなテンポの変更は極力避けられていて、よどみなく音楽が進みます。今後はコーダのアッチェレランドもあまりされません。

第3楽章は全体が遅めのテンポですが、だんだん調子が出てきたのか、中間部の前、練習番号5から8あたりでは楽譜に指示のないテンポの「ゆらし」がけっこうあります。ホルンが7本になる練習番号16あたりのテンポの変化も大きいです。さいごはきっちりイン・テンポになって第4楽章へアタッカで続きます。

第4楽章も多少緩急が入ってきます。ゆっくりの部分は情緒纏綿という感じでしっとり演奏されますが、それほど大きくアクセルやブレーキのかかるところはありません。1箇所ラッパがはずすところがありますが、それ以外はアンサンブルもしっかりとしています。コーダになればホルンの咆哮の独壇場、もういっちゃってください、という感じ。最後は、こういってはマゼールに失礼かもしれませんが、誰の演奏を聴いても高揚しますね。

こうやって聴いてみると、マゼールは明らかにピークを終楽章に持ってきていることがわかります。他の楽章に比べて圧倒的に表情の種類が多いし、音楽のメリハリ(各パートへの目配り)も聴いているように思えます。

ちょっと窮屈な感じがするのは、かつての天才少年マゼールにも、そろそろ迷いが出てきたころの演奏会だったからでしょうか。このあとも演奏会を重ねたのち、解釈に確信を持ってVPOとの録音に望んだのかもしれません。


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コメント 2

おさかな♪

stbhさん
わ~い♪ またstbhさんのマーラー記事が読める・・・♪
1番、大好きです。昔お父さんと、J-WAVEで当たったチケットでサントリーホールに生演奏を聴きに行きました。
1楽章は、キーンという現全員でのフラジオで始まり、4度の下降が印象的です。普通は長3度で表現するカッコウの鳴き声だそうですが、西洋人は4度の音程に東洋的なものを感じるそうです。
また遊びに来ま~す。
by おさかな♪ (2005-08-27 02:30) 

stbh

おさかな♪さん、nice!とコメントまいどありがとうございます。マーラーお待たせいたしました。
第1番の冒頭、もしベートーヴェンやブラームスを聴きなれてきた人がはじめて聴いたら「なんじゃこりゃ?」とパニックになりますよね。マーラーやリヒャルト=シュトラウスあたりの大オーケストラを駆使した曲を(録音も、演奏会も)普通に聴くようになったのは、録音技術がすすんだ1970年あたりからでしょうか。
私が学生のころアマチュアでマーラーをやるのは、まだめずらしかったです。やっても第1番。今はマーラーの代表曲は第2、6、9番あたりで、第1番なんか、「普通の曲」というイメージになってしまいましたねー。
by stbh (2005-08-27 09:25) 

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