SSブログ

Mahler/Sym8 [交響曲(マーラー)]

マーラーの交響曲を何曲かくくって語られることがよくあります。いちばん共通に理解されているのは「角笛3部作」と「器楽3部作」でしょうか。後期の曲に関しては、第8番を「別格」として、大地の歌、第9番、第10番の3曲をひとくくりにするのが通例かと思います。第8番は第7番までの集大成のような位置付けで捉えられることが多いですね。

マーラーは結局ウィーンでこの曲を初演できず、ミュンヘンで行います。この初演は、マーラーの自作演奏史の頂点をなす大成功であったといわれています(マーラーが自分で初演した、最後の曲ですね)。実際に演奏をまとめ上げることも大変ですが、プロモート的な側面も困難がいろいろあったのではないでしょうか。合唱・ソリストの負荷は他のマーラーの交響曲とは比較になりませんし、今でもこの曲の演奏は、そうそう気楽にできるものではないと思います。

 この曲の編成をもう一度見てみましょう。マーラーの交響曲のオーケストラの規模を整理されている方がいらっしゃいます(有名なサイトです)。

http://www.kanzaki.com/music/mw/sym/mahler

第4番が例外的に小さく(トロンボーン、テューバなし)、第7番がホルン4本、木管が特殊3管編成で第4番に次ぐ小ささ(ぜんぜん小さくないけれど)です。第8番はホルン8本、木管が特殊4管ですから、まあまあ中庸という規模です。第8番の編成を特徴付けるのは何をおいても声楽陣で、2組の混声合唱、児童合唱と8人の独唱者を必要とします。

さらに、他には第2番の最後でしか使われていないオルガンがほぼ出ずっぱりですし、第2部にはピアノとハーモニウムも出てきます(これらはこの曲だけ)。マンドリンも使われています(第7番や「大地の歌」と違って、「複数」の指定になっています)。

明らかに縮小傾向にあるのは打楽器で、ティンパニが二人必要なのは第1部冒頭と終結部、第2部の終結部のごく一部ですし、カウベル(第6、7番)も、むち(ルーテ、第2、6番)も、シンバル付き大太鼓(第1、2番)も、木琴(第6番)も、小太鼓(いっぱい)も登場しません。当然ハンマーもありません(笑)。この縮小傾向は大地の歌(ティンパニは第4楽章だけ)、第9番(小太鼓は1小節だけ)と続きます。

私のブログの一番最初に紹介した第10番の編曲(オーケストレーション)で、打楽器を多用したものに首肯しがたい大きい理由の一つはここにあります。木琴多用のザンデルリンク版も違和感がありますし、「打楽器を充実した」といわれるバルシャイ版も、まさにその理由で聴く気がしません。カーペンター版は言うに及ばず、です。第10番で使える打楽器は、ティンパニ以外は、大太鼓、小太鼓、シンバル、ドラ、トライアングル、鉄琴くらい、それもうんと出番を限定した使い方になるだろうと考えざるを得ません。

うわぁぁ、また今回も脱線しましたが、第8番に話を戻すと、今回聴いたのは83年のギーレン/ウィーン交響楽団の演奏会の録音です。合唱は楽友協会ととウィーン少年合唱団。

演奏団体やソリストは違いますが、ギーレンのCDはあります。81年フランクフルトでのライヴだそうです(アルテ・オパーの杮落としらしい、未聴)。

Mahler: Symphony No. 8

Mahler: Symphony No. 8 "Symphony of a Thousand"

  • アーティスト: Hildegard Laurich, Ortrun Wenkel, Richard Stilwell, Simon Estes, Gustav Mahler, Michael Gielen, Ernst Wurdinger, Faye Robinson, Hildegard Heichele, Margaret Marshall
  • 出版社/メーカー: Sony
  • 発売日: 1992/11/17
  • メディア: CD

また近年、南西ドイツ放送交響楽団と数々のマーラーの録音があります(全集が出ていたと思います=第8番もある?)。

ギーレンは、メジャー録音が少なかったので日本ではあまり有名ではありませんでしたが、ヨーロッパではマーラー指揮者としてすでに名を馳せていたようです。「透徹した読み」の指揮者といわれているそうで、今回の録音でも比較的速めのテンポで、よどみなく音楽が進んでいきます。特に第1部はもともと対位法的に緊密にかかれていて、マーラーの書いた楽章の中でも、非常に推進力の大きい音楽になっていると思います。こと第1部に限定して言えば、この曲をつまらなく演奏するのは、オケコンなみに難しいのではないかと思います。少なくとも第1部に関しては「これまでの作品の集大成(マーラーの言葉)」と言えるでしょう。

第1部と比較すると、第2部はオラトリオ的であり、劇的なぶん、構成力というか、緊密さに欠けるのはしかたないけれど、聴きどころは満載。例えば女声の3重唱(練習番号136から)とか、ぞくぞくするほど美しいです。この曲は例えば第5番などと比較すると感情移入しにくい(テンポや強弱をゆらせるところが少ない)と思いますが、最初のオーケストラだけでクレッシェンドしていく部分などは指揮者の個性が出るところではないでしょうか。ギーレンは基本的に淡々と、しかしところどころにタメを配分して、バランスのよい音楽を聞かせます。

第2部を緩徐楽章、スケルツォ、フィナーレに相当する部分に分けるアナリーゼがかなり行われているようですが、やはりここは、ファウストの終末に向けてのいくつかの場面に、順次、作曲されているととらえるほうが、自然ではないでしょうか。CD時代になって一気に聴けるようになり、その感を強くしました。残念ながらこの曲に生で接したことがない(聴くほうも、演奏するほうも)のですが、第2部はさながらオペラの一幕のような流れを感じると思うのです。場面転換のブリッジのようなパッセージも含めて、終末の第1部第1主題の回帰までの長い長いベクトルにみんな収斂していく、そんな聴き方が理想だと思います。途中であまり踏ん張り過ぎない、滔々とした流れに身を任せたいと思うのです。

LP時代から聴いていたこれ↓の印象があまりに強くて、バーンスタインも、テンシュテットも、小澤も、インバルも聴いたのですがなかなかしっくり来る演奏がありません。というか、この演奏の影から抜け出せないでいます。特に第1部は繰り返し聴いたので、冒頭のオルガンとか、コーダの金管とか耳に音色が染み付いていて、他の演奏に拒否反応(?)を示しているようです。

マーラー:交響曲第8番

マーラー:交響曲第8番

  • アーティスト: ハーバー(ヘザー), ウィーン楽友協会合唱団, ウィーン国立歌劇場合唱団, ウィーン少年合唱団, ポップ(ルチア), オジェー(アーリーン), ワッツ(ヘレン), ミントン(イボンヌ), タルベラ(マルッティ), シャーリー=カーク(ジョン)
  • 出版社/メーカー: ユニバーサルクラシック
  • 発売日: 1999/06/02
  • メディア: CD

この録音はシカゴ交響楽団がはじめてヨーロッパへ演奏旅行に行った際にウィーンフィルの(Londonレーベルでのレコーディングの)本拠ゾフィエンザールで行われたものですが、オリジナルのジャケットは(たぶん)録音風景(全景)を上から見下ろした印象的な写真が使われていました。最近再発で安くなるのはいいですが(でもなかなか買えないのだけれど)、ジャケットがしょぼくなってしまっているのが多くて、ちょっと悲しいですね。

先日、フィリップスの1000円盤でハイティンク/BPOのマーラーが出た話を書きましたが、このシリーズに小澤/ボストンシンフォニーの第8番も入っています。おぉっとこれはなんと、「千円の千人の交響曲」!

失礼しました。

今でもこの曲の第1部を聴くと、「よし、がんばろう」という気になれます。朝、聴きながら会社へ行って、5分でめげることもないわけではありませんが。でも、one of 元気の素であることは確かです。

☆いやーまーなんというか、ずいぶん長く死んでいたものです、so-net blog。So-netのトップページには「ブログ」の欄がそのままあるのに、まるまる2日近くアクセスできなかったわけですからね。「障害情報」は何度か追加されていましたが、もうあきらめて見なくなっちゃいましたし。なんか調子悪いなーと思っていたのですが、ハードへの負荷が耐え切れなくなったのでしょうか。それともこれもソニータイマー?

nice!(1)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

nice! 1

コメント 2

おさかな♪

「千円の千人の交響曲」・・・にNice!
おさかな♪は相変わらずアバドさんのマーラー全集を聴いています☆
by おさかな♪ (2005-07-02 12:28) 

stbh

おさかな♪さん、nice&コメントありがとうございます。アバドの8番、まだ聴いてないのですが、気持ちよさそうですね。満員電車での通勤+連日持ち帰りのお仕事、大変だと思います。でも、おさかな♪さんの元気をもらえるプロジェクトの人はラッキーですね。では、よい日曜日を。
by stbh (2005-07-03 00:02) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

Mahler/Sym7番外TomitaPlanets ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。