ふたりのシュミット [音楽関係の雑記]
20世紀前半に活躍した作曲家で、「シュミット」という名前の人がふたりいます。
ひとりはオーストリアのフランツ・シュミットFranz Schmidt(1874-1939)。ウィーン音楽院長になった人です。ウィーン宮廷歌劇場のチェリスト時代はマーラーとあまり仲がよくなかったという逸話も残っていますが、その作品はマーラーの影響も受けているといわれています。しかし、マーラーよりもリヒャルト・シュトラウスの影響のほうがつよく、もっといえばレーガーやツェムリンスキーなど、もう少し前の時代(世代的に、あるいは作風的に)の作曲家の系譜に連なると私は思います。代表作は歌劇「ノートル・ダム」、オラトリオ「7つの封印の書」、4曲の交響曲(とくに第4番)など(私はこれまで交響曲をちょいと聴いた程度)。
もうひとりはフランスのフロラン・シュミットFlorent Schmitt(1870-1958)。綴りがちょっと違います。こちらはマスネやフォーレの弟子で、パリ音楽院の院長を務めました。基本的なスタイルはドビュッシーやラヴェルにちょっと似ていますが、ガチガチの印象派というよりは、もう少し構造的な構成など、ドイツ・ロマン派との折衷的な印象の曲を書いています。代表作は、バレエ「サロメの悲劇」でしょうか。これは一度演奏してみたかったのですが、合唱が入る(いちおう器楽で置き換えは可能)し、そもそも難しいし、機会がありませんでした。
どちらかしか知らなかったり、混同されたりすることがままあるようですが、それぞれの音楽圏で、最先端の12音や無調に走らず、アカデミーにのっとって活動していたというのは、単なる偶然にしても面白いですね。この時代の作曲家は、シェーンベルク、ストラヴィンスキーなど先鋭的な人たちにどうしても目が行きがちですが、まだまだ聴きやすく興味深い曲を書いた人が多いのですね。
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