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Bruckner/Sym7 [交響曲(独墺系)]

先日テレビでアバド@ルツェルンのブルックナーを見たので、昔のライヴを聴いてみました。

ブルックナー 交響曲第7番
指揮:クラウディオ・アバド
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
1984年8月30日 ザルツブルク祝祭大劇場にて

CDとしてはこれが近いのでしょうか。1992年でしたっけ?ちょっと新しいですね。私は未聴なのでちょっと気が引けるのですが…。

ブルックナー:交響曲第7番

ブルックナー:交響曲第7番

  • アーティスト: アバド(クラウディオ), ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団, ブルックナー
  • 出版社/メーカー: ユニバーサルクラシック
  • 発売日: 2002/09/25
  • メディア: CD

アバドのブルックナー録音は、第1、4、5、7、9番に限られており、デッカ時代からほとんどウィーン・フィルとのもののようです。第1の種類が一番多い(たしか4種?)指揮者というのは珍しいですね。個人的には第4、第7などの明るい響きが基調の曲が、何となくアバドにあっている気がしていました。今年秋、ルツェルン祝祭管弦楽団を引き連れてのの来日でも第4をやりますね。

昔の壮年期を知っている者からすると、最近のアバドはどうしてもぱっと見、痛々しく感じてしまいますが、相変わらず思いのほか華麗でない、というかかえってごつごつしたその指揮姿を見、その姿、動きとはうらはらに(失礼)明るく推進力のある演奏を聴いて、音楽的な本質は昔とぜんぜん変わっていないのではないか、と思ったのが、今回、20年以上前の録音を引っぱりだしたきっかけです。

カラヤン存命のころのザルツブルク音楽祭は、毎年、世界中の有名指揮者がとっかえひっかえ登場していました。バーンスタインも、ベートーヴェンの交響曲全集をウィーン・フィルと録音した1979年に第9を振っています。アバドはかなり出演頻度が高いほうだったのではないでしょうか。常任だったロンドン交響楽団を引き連れてきた年もありました。

ブルックナーの交響曲はカラヤンにとっても重要なレパートリーでしたが、ザルツブルクでは人気が高かったようで、第4、7、8、9あたりを、カラヤンとはぶつからないように(^^;さまざまな人が振っています。私が聴いていた70年代後半から80年代を思い返すと、ベーム、ムーティ、マゼール、サヴァリッシュ、ドホナーニ、シャイー、そしてこのアバドなど、そうそうたるメンバーでした。

さて、アバドのブルックナー解釈の基本は、自然さとわかりやすさにあると思います。曲の構造にしたがって厳格にテンポを設定したりもせず、さりとて曲想に流されてなよなよになったりもせず、ブルックナーの心地よい響きを保つ努力がなされていると感じます。第7は、そういうアプローチがやりやすい曲なのではないでしょうか。

そういった意味で、第1楽章はあまり遅くならず、ブルックナーの世界にすんなり入っていけるような、ゆるやかな変化を含んだテンポ設定になっています。テンポの細かい指定が増えたノーヴァク版を使っているからかもしれませんが、はっきりわからない程度でけっこうテンポは変化していると思います。

第2楽章も弦楽合奏やワグナー・テューバなど分厚い響きの部分が多いです。ワグナー・テューバは低弦と重なっていることが多いのですが、楽章全体のイメージとしては、あまり重々しくなく演奏されています。とはいえそこはウィーン・フィル、クライマックスの強奏は、やはり迫力満点です。

ルツェルンのときと一番違うのがこの第3楽章だったでしょうか。かなり早いテンポ設定で、なかなかワイルドにスケルツォを聴かせてくれます。強弱の幅がひろいというか、はっきりいってfff がでかい。トリオの弦楽合奏は暖かい響きで、さすがにこういうところはウィーン・フィルならではですね。

第4楽章にほぼアタッカで続くのは、20年前も変わっていなかったようです。第4楽章はハース版とノーヴァク版で、テンポや速度の設定がころころ変わっていて、リタルダンド-ア・テンポの追加が全部で20個以上あるとか。さすがのアバドも無頓着な、というかあえて速度の指示を守らないところもあるようですが、基本的には、明るい響きを重視した(ような)きわめて前向きな演奏だったと思います。

こうして20年前の録音と聴き比べて、やはりアバドの音楽は若々しさ、すがすがしさを失っていないことがわかりました。彼は「老成」などといったこととは無縁なのかもしれません。こう書くと「円熟していないのか」と思われるかもしれませんが、最近の演奏は(といってもこのブルックナーやいくつかのマーラーの録音しか聴いていませんが)いっそう自然体というか、すんなり体に入ってきてしみこむ、清水のような演奏のように感じます。

奏者から見た蛇足をひとつ。この曲、無論ティンパニがあるのですが、出番はブルックナーの交響曲の中で最も少ないのです。第1楽章は終結部分の低いEの長大なロールのみ。第2楽章はクライマックスのC-Gのみ。第3楽章は他のスケルツォ並にハ短調部分でC-G、主調のイ短調部分でA-Eとトリオのブリッジが数小節。第4楽章はまたEのロールが最後と、あと2~3箇所、それにCのロールがちょびっと。第3楽章以外はかなりヒマといえるでしょう。

ブルックナーにしては珍しく、これだけ出番を絞って、ティンパニのない響きで統一しているのだから、あえて第2楽章にティンパニや、ましてや他の打楽器など必要ないはず、と私は思うのですが。ま、それは今回はおいといて。

大陸のオーケストラでは、通常、奏者からみて右(舞台の下手より)に低い(大きい)タイコを置きますが、この演奏会では、下手からG、C、A、E と配置されていて、普段は一番小さいタイコが来る位置に一番大きいタイコが来ていてちょっと珍しい配置でした。これは第3楽章に、連続してG→C、E→Aとロールのまま移るのところがあり、近い方がなめらかにつながるからだと思います。1個飛ばしのタイコにロールで移ろうとすると、どうしてもロールとロールの間の音が空いてしまうのですよね。音が途切れるのを嫌ってこのような配置にしたのでしょう。

最後に、ぜんぜん記事とは関係ないのですが、先日、アクセス数がやたらに多いなあと思ったら、山のようなスパム・コメントが届いていました。ブロック用のキーワードを増やしたりしているのですが、なかなか撲滅できません。Star Warsとかのタイトルが攻撃を受けることが多いようです(;_;) 日本語の題名にしようかしら…。


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コメント 6

ensemble

アバド、本当にこけてしまい、気の毒ですね。
あの、棒の先よりも手首のほうを激しく動かす振り方は嫌いではありませんでしたが…
by ensemble (2006-05-28 19:09) 

stbh

ensembleさん、ご来訪とコメントありがとうございます。今の若い人にとっては、「アバド=やせたおじいちゃん」なのかと思うと、こっちも年をとったようで(事実そうなのですが)ちょっと悲しいです。
でも出てくる音楽は、最近でも昔とあまり変わらずさわやかで、良い意味で年相応でないように感じました。元気で活躍し続けてほしいです。
by stbh (2006-05-28 20:33) 

吉田

遅まきながら、この日の映像を観ました。
確かに、アバドの音楽は若々しさを保っていますね。ロンドン饗時代に戻ったように思いました。感じのよいコンサートでした。失礼ながらTBさせていただきます。
by 吉田 (2006-05-31 22:36) 

stbh

吉田さん、コメントとTBありがとうございます。ブログ拝見しました。丁寧に見聞きされていて、楽しいです。またお寄りください。こちらも寄らしていただきます。
by stbh (2006-06-03 01:21) 

サンフランシスコ人

来シーズン、ニューヨーク・フィルハーモニックがブルックナー/交響曲第7番を演奏ようです。

http://nyphil.org/attend/season/index.cfm?page=eventDetail&eventNum=1783&seasonNum=8

Beethoven:
Symphony No. 1
Bruckner:
Symphony No. 7

by サンフランシスコ人 (2009-01-14 07:00) 

stbh

マズアが振るのですね!
by stbh (2009-01-15 23:00) 

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