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Britten/WarRequiem3 [声楽曲]

またまた昔のライヴをご紹介します。聴いたテープは以下の演奏会のもの。

指揮:ヘルムート・ヴォルフ
ソプラノ:大倉由紀枝、テナー:アダルベルト・クラウス、バリトン:小松英典
合唱:新星日響合唱団(合唱指揮:郡司博)
児童合唱:荒川少年少女合唱隊(合唱指揮:渡辺顕麿)
管弦楽:新星日本交響楽団
新星日本交響楽団第102回定期演奏会
1987年7月6日 東京文化会館大ホール

私が実際に聴いたのはこの2日前、7月4日に東京カテドラル聖マリア大聖堂で行われた特別演奏会でした。合唱団の一員として出演した友人にダビングしてもらったものですが、そうそう繰り返し聴くものでもないので、10年以上聴いていなかったと思います。

この聖堂は演奏会場としても良く使われますが、コンクリート打ち放しの壁で残響が多いので、演奏するほうはかなり苦労します。とはいえ、宗教曲をやるときの雰囲気は格別で、何となく敬虔な気持ちになります。この演奏会では児童合唱が、祭壇と反対側のオルガン台にいて、通常のステージとは違った独特な空間を体験することが出来ました。聖堂の内部はカテドラルのHP

http://www.tokyo.catholic.jp/katedoraru.html

などをご覧ください。高い天井も印象的です。

定期演奏会は新聞評が出ていましたが、「混声合唱以外は良かった」という、合唱団にはきびしいものだったと思います。かなり厳しい練習をつんだようですが、結果として音程が不安定だったり、声量が足りなかったり(この録音でも、バランスの問題とはいえときどきオーケストラに負けています)することはあったかとは思います。しかし、そういった技術云々を超えた想いが演奏者から感じられることのほうがはるかに重要で、この演奏会にはそれがあったと、今でも思っています。

新星日響、発足当時から弱体であることは否めず、2001年に東フィルと合併したときには大きな再編の波になるかと思いましたが、それ以降、東京のオーケストラの合従連衡は起きませんでした。最近の事情はどうなのでしょうか。

さて曲は、長い"Dies irae"のあと、終曲"Libera me"までの間に比較的短い3曲が入ります。曲全体の構成を「起承転結」でとらえると、第1曲が「起」、第2曲が「承」、さいごの第6曲が「結」、そしてこれら3曲が「転」にあたるでしょうか。第1、2、6曲が混声合唱で始まりアカペラの同じ旋律で終わるのに対し、これら3曲はそれぞれ独自の構成を持っており、「ヴァリエーション」といった趣もあります。

III Offertorium

オルガンの分散和音に乗って、児童合唱が"Domine Jesu"を歌い始めます(児童合唱から始まるのはこの曲だけ)。2部に分かれた児童合唱がオルガン(ハーモニウム)の伴奏でC#とD#を中心とした聖歌のような旋律を交互に歌うと、次に管楽器の上昇音形に導かれて混声合唱が不協和音をぶつけ合いながら"Sed signifer sanctus Michael"を歌います。"Quam olim"(主はそのむかしアブラハムとその子孫に約束し給うた)は一転、明確なト長調と6/8(9/8)拍子となり、フーガのように展開しながらクライマックスに至ります。

オーケストラがff-sfで途切れると同時に室内オーケストラ、バリトン、テナーと合唱の音形を模倣しながら入ってきます。「そしてアブラハムは立ち上がり」というオーエンの詩では、天使がとめるのも聞かず、アブラハムが息子を殺してしまいます。それを指して「ヨーロッパの子孫の半分を、一人ずつ」ととぎれとぎれに繰り返す独唱二人と室内オーケストラと並行して、全然別のリズムでオルガンに導かれた児童合唱が"Hostias"を歌います。ここは指揮者が二人必要なところで、わずかにずれたテンポを持つ2群の微妙な響きが幻惑をさそうようです。

最後にもう一度、オーケストラと混声合唱で"Quam olim"が帰ってきますが、今度は終始pp以下の音量で、1回目の上行音形が下行音形になるなど、全く逆転していて、「ヨーロッパの子孫」の死(ヨーロッパ人同士で殺し合いをしている、ということでしょう)を悼むように、悲しげに消えていきます。

次は主をたたえる"Sanctus"、この曲もなかなか「現代音楽」的な聴きどころがあります。


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