Beethoven/Sym7 [交響曲(独墺系)]
気を取り直して、昔のテープから。1983年8月21日、ザルツブルク音楽祭におけるライヴで、ベートーヴェンの交響曲第7番、小澤征爾指揮のウィーン・フィル。リファレンスのCDとしてはこのあたりになるのでしょうか。
- アーティスト: サイトウ・キネン・オーケストラ, ベートーヴェン, 小澤征爾, シューベルト
- 出版社/メーカー: ユニバーサルクラシック
- 発売日: 1994/08/25
- メディア: CD
サイトウ・キネンでの全集はありますが、通常のオーケストラとのベートーヴェンの交響曲の録音は、ニュー・フィルハーモニアとの「第9」、サンフランシスコ交響楽団との「エロイカ」、ボストン(フィリップスだったと思う)、シカゴ(EMI)との第5くらいしか見つかりませんでした。DGには入れてなかったのでしたっけ?
小澤のベートーヴェンは、あまりたくさん聴いたわけではありませんが、唯一ナマで聴いたのがBSO@シンフォニーホールなので、悪い印象がないのです。このライヴも、相手がVPOということを割り引いてもなかなか正統派で、よいです。
第2楽章はイ長調のカンタービレが美しい。この曲は全体的にモノフォニックだと思うのですが、この楽章はやや対旋律が目立つところがあり、そういった裏の旋律がよく歌っているのが心地よいですね。やはり前へ進む音楽ではありますが、フレーズの切れ目が短いわけではないので、せかせかした印象はまったくありません。
第3楽章はイン・テンポで進む主題部とルバートをきかせる(ことが多い)トリオの対比が面白いです。近年の古楽的演奏だとあまり響きが/世界が変わらないで主題部とトリオを行き来する演奏が多いように思えるのですが、ここではかつてオーソドックスだった、グイグイ進む主題部とテンポを揺らすトリオの対比が、理想的なテンポ運びで味わうことができます。
第4楽章にはアタッカで入るのが当時のスタイルでしたね。これも推進力が感じられる快演です。スタジオ録音みたいな、というと主客転倒ですが、精緻なアンサンブルで、怖いくらいです。そして、もともとよく鳴るオーケストレィションではありますが、コーダの低弦がE-D#-E-D#とうなりだすあたりからはものすごい迫力です。
ちゃん、ちゃかちゃん、ちゃかちゃん。ブラヴォーの嵐。割れんばかりの拍手。うーん、こうういう熱狂的な反応があると、やはり20年以上前から小澤はウィーンでも人気があったことを認識します。以前聴いたチャイコフスキーはいまひとつでしたが、VPO自体の対応性の高さも、ベートーヴェンに対してのほうが高いのでしょうか。
小澤の指揮を実演や映像で見ていると、アウフタクトのとり方が実に的確で非常にリズム感がよいのがわかります。「リズムはあたりまえ品質(こんな語句を使うと工場関係者だというのがわかってしまいますね)で、そのうえにどれだけ独創的な解釈をのせられるかが大事なんだろ」と怒る向きもあるかもしれませんが、リズムがよい指揮者は非常に演奏しやすく、これはアマでもプロでも同じだと思います。
特にこの曲は、リズムが命のような曲ですが、どの楽章も、気持ちよく聴けるテンポ設定やリズムの維持・微妙な変化は難しいですが、この小澤の演奏は、私としては理想に近いものだと感じます。来年のザルツブルク・イースター音楽祭でベルリン・フィルとこの曲をやるそうです。上のサイトウ・キネンも未聴ですが、最近はどのようにベートーヴェンを演奏しているのか、ちょっと聴いてみたくなりました。
私も小澤さんの指揮、大好きです。
9、3、5番を演奏した後は、7番を演奏したいなぁと思っています♪
by おさかな♪ (2005-10-31 12:44)
おさかな♪さん、いつもありがとうございます。ベートーヴェンの大物は充実感があって気持ちいいです。でも偶数番号もやってみるとそれぞれなかなか楽しめます。というわけで、めざせ全曲制覇!
by stbh (2005-11-01 21:55)
自己コメントでなんですが、記事を書くほどでもないので。先日テレビで小澤/N響の「運命」その他をやっていました。非常に流麗な「運命」でしたね。リハーサルのとき、小澤が「この曲は全員で一生懸命やらないと曲にならないんです」という意味のことを言っていました。さすがN響、世界のオザワにまでこんなことを言わせてしまうなんて!43年前と逆転してますね。NHKもそんなシーンをわざわざ選んで放送するなんざ、ちょっと自虐的すぎでは?
by stbh (2005-12-07 14:40)