Mahler/交響曲第6番 [交響曲(マーラー)]
今回はこの演奏の録音を聴きました。私はエアチェックのテープですが、CD-Rも出ているようですから、聴いたことのある方も多いのではないでしょうか。
マーラー/交響曲第6番「悲劇的」
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン
1977年8月27日 ザルツブルク祝祭大劇場にて
スタジオ録音
を取り上げたのは、もう6年前になります。
http://classicalandsoon.blog.so-net.ne.jp/2005-09-29
今なら、国内盤もずいぶん廉価で出ているのですね。
さて、この演奏会ですが、
スタジオ録音が1977年初頭に完成し、その後何回か取り上げられた演奏会のうちのひとつになります。カラヤンが録音直後の曲を演奏会に乗せるのはよくあったことで、「地元」のウィーン・フィルでなく手兵のベルリン・フィルと組んでいるのも、この曲を「持って回る」一環ということだったのでしょう。
ちなみに、この年の最大の呼び物は先ごろ亡くなってしまったヒルデガルト・ベーレンスがタイトル・ロールを歌った「サロメ」(もちろんカラヤンの指揮)でした。今でもこの曲の代表的名盤であるスタジオ録音は1977年と78年に行われていますが、すでに1977年に舞台にかけられていることから、録音の主体も1977年であったことが想像できます。
話をマーラーに戻しましょう<(^_^; 先にも書いたとおり、この演奏会の録音は市場に出回っていて、聴いた方のサイトを見ると、スタジオ録音とまったく趣を異にすることが必ず言及されています。もちろんセッション録音と演奏会の違いは大きいですが、特に第1楽章冒頭の緊張感は、ライヴのほうがぜんぜん高いです。テンポはそれほど大きく違わないように感じますが、前へつんのめるような弦の音を聴くと、煽られているような気になります。
スタジオ録音と違って第1楽章の提示部の繰り返しを行っていないのも特徴です。これは単に実演では繰り返すと長すぎる、ということなのか、スタジオ録音後、他に何か繰り返さないほうが良い理由があったのかはわかりません。他の演奏会ではどうなっていたのかも興味があるところです。
第2楽章(スケルツォ)は、イケイケの第1楽章にくらべて緩急の差がはっきりしているように思います。「ストン」と弱音に落とすところのダイナミック・レンジの広さは、さすがベルリン・フィルというところでしょうか。第3楽章(アンダンテ)のフレージングは、さすがにカラヤン節。黙ってどっぷり浸るのが気持ちいいですね。
普門館での来日公演ではこの楽章のカウベルに録音を使ったということですが、この演奏会ではどうだったのでしょうか、録音ではよくわかりません。とあるサイトで、「アルプス交響曲」の特殊楽器(ウィンドマシンかサンダーマシンだったと思います)を録音で流したことについて、カラヤンが「(珍しい)楽器に聴衆の注意が向くのを避けるため」と言ったことから、このカウベルについても同じだったのではないかと書いてありましたが、うーん、ちょっと首肯しがたいですね。私なぞは本来ステージ上にあるはずの楽器がないと「あれ?あれ?」と探してしまって注意が散漫になるクチですが、そういうのは例外ですか(苦笑)。
また話が脱線しましたが、第4楽章は、序奏こそやや抑制されていますが、イ短調の主題から再び怒涛の攻めがやってきます。小さな瑕疵はともかく、ベルリン・フィルにしては珍しく縦の線が乱れたりする部分もあり、録音だけ聴くとカラヤンのドライヴに100%追随できていないような印象も受けます。とはいえ、延々と続く音の洪水には翻弄されるしかなく、終結部まで一気に持っていかれてしまう勢いはものすごいです。曲が終わったあとの拍手が、「ブラヴォー」の声はありますがなんか呆然とした感じに聞こえるのは、実は自分が呆然としているからなのかもしれません。
若いころは知りませんが、「帝王」として君臨して以降(1960年代後半くらいから)のカラヤンはマーラーを限られた曲だけ、ごく短期間に取り上げているにすぎません。しかしその録音や演奏がいまでも色褪せないのは、さすがに先見の明というか、非凡なものを感じずにはいられません。
この曲は、マーラーの交響曲の中でいちばん楽譜の問題が多いのではないかと思いますが、今回はその辺は割愛して、ご紹介にとどめておきます。
いちばん容易に手に入る楽譜は、ドーヴァーの小型スコアですね。
これは最初の出版譜に準拠しているようなので、ハンマーの回数以外にもオーケストレーションが協会版とところどころで違います。今回取り上げた録音は協会版でなくこちらに近いように思われますが、確信は持てません…。
音友版も再発売されたようですが…
OGTー95 マーラー 交響曲第6番(改訂版) (Edition Peters miniature scores)
- 作者: マーラー
- 出版社/メーカー: 音楽之友社
- 発売日: 1986/09
- メディア: 楽譜
この音友版は1963年の協会版に準拠たもののままで、新しい校訂は反映されていないようです。
6番は大学1年の定期演奏会で弾いたうえに、当然ながら初マーラーだったので、私にとっては特別な意味を持っている曲です。
このカラヤン=BPOの演奏とほぼ同じ時期のことになりますね。
そういえばスコアも2冊持ってます。
(当時スコアを写譜しようかと思ったのですが、さすがに挫折しました。)
by Lionbass (2011-09-15 17:45)
Lionbassさん、いつもありがとうございます。
当時、少なくとも第6番はまだ「難解な」曲として捉えられていたと思います。それを学生オケで演奏するというのは、本当にすごいことですね。まだスコアはヤマハやアカデミアなどで買うしかありませんでしたし、国内版もなかった頃ですから2冊では相当な出費のはず。気合入っていたんですね!
by stbh (2011-09-16 07:46)