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Mahler/交響曲第7番 [交響曲(マーラー)]

テンシュテットのマーラー交響曲全集から、まず93年ライヴの第7交響曲を聴きました。単発の国内版はこちらになります。

マーラー:交響曲第7番「夜の歌」

マーラー:交響曲第7番「夜の歌」

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: EMIミュージックジャパン
  • 発売日: 2010/10/20
  • メディア: CD

 

いまさらではありますが、非常に有名なテンシュテット最後の録音です。

テンシュテットのもっとも代表的なレパートリーは、やはりアナログ末期からデジタル初期にかけて交響曲全集を完成したマーラーでしょう。録音技術の向上に伴い、1970年代後半からマーラーの作品が多く録音されるようになりました。ショルティのシカゴへの(再)録音(Decca)、アバド(DG)、レヴァイン(RCA)、そして東独から亡命した「遅れてきた大指揮者」テンシュテット(EMI)と、メジャー・レーベルがそれぞれ全集を目指した企画を立ち上げてきたころでした。

テンシュテットの録音は、契約の関係で、必ずしも一流とはいえないロンドン・フィルとしか組めなかったこと、EMIの録音が悪かったこと、アバドやレヴァインなどの若手の解釈にくらべると古臭く聞こえることなどが災いして、かならずしもベストの評は得られていなかったように思いますが、後年、癌に倒れた後のライヴ録音が出てきたことによって、スタジオ録音も再評価されたのではないでしょうか。

今回取り上げた第7交響曲の録音は1993年5月に行われた演奏会のライヴで、前述のようにテンシュテット最後の録音です。85年に発病した癌が90年前後から次第に進行して、演奏会のキャンセルも頻繁にあったようですが、この録音からは、病魔に冒されていることなど微塵も感じさせない、生命力に満ち溢れた音楽を聴くことができます。

岩城宏之が生前の著作で「指揮者は病気であってはいけない」という旨のことを書いていますし、我々の世代だったら最晩年のカール・ベームが来日公演で見せた、演奏中とそれ以外での豹変振りを思い出す方も多いでしょう。ひとたび指揮台に上がれば、指揮者は我を捨てて音楽の化身とならなければならない、そんな思いが伝わってくるような、入魂の録音であると感じました。

近年はともかく、マーラーの第7交響曲は、彼の交響曲の中で長らく不人気No.1の座にあったと思います。その理由は、両端楽章と中間3楽章の表情が違い過ぎて一貫したイメージを抱きにくいこと、特に終楽章はさまざまな素材が無秩序にぶちまけられたような、まとめにくい音楽であること、イメージ形成を手伝う歌詞(声楽)の助けがなど、が挙げられるでしょう。前述のアバド、レヴァイン等のアプローチは、難解なこの曲をスッキリ解きほぐすためか、やや早めのテンポ設定や流れを重視して細かい伸縮にこだわらないことが特徴となっています。

これに対してテンシュテットは、マーラーの細かい表情記号の書き込みをかなり忠実に生かし、伸縮に富んだアプローチになっています。スコアを見ると、マーラーの書いた頻繁なテンポの変更や表情の指示を、比較的きちんと行っているのです。大きくうねる強弱やテンポは、一聴すると指揮者の解釈に拠るかと思えますが、実は、まさにマーラーを「マーラーとして」鳴らしているのだ、ということを、今回の録音を聴いて再確認しました。

細かい表情の交錯によって、この曲の不気味さ、わけのわからなさは倍加されますが、それこそが本来マーラーが望んだことなのかもしれません。最初は見通しの良い録音で馴染んで、そのあとこの録音やバーンスタイン、クレンペラーなどの「こってり系」に進むと、より多くの録音が楽しめるかもしれませんね。

スタジオ盤よりはるかにクリアな録音ですが、ライヴなのに打楽器などの直接音が生々しすぎて、手放しでほめきれないところがあります。第1楽章の前半など、ちょっと乗りきれていなくてアンサンブルがわずかに乱れるようなところ、実演ではあまり気にならないと思われますが、妙に目立つ感じがしました。総じて「EMIにしては大健闘」なのですが…。

最近はスコアもいろいろ手に入るようになりました。まずはオーソドックスな音友版↓。

OGT-1473 マーラー 交響曲第7番 (改訂版) (Philharmonia miniature scores)

OGT-1473 マーラー 交響曲第7番 (改訂版) (Philharmonia miniature scores)

  • 作者: マーラー
  • 出版社/メーカー: 音楽之友社
  • 発売日: 1980/11
  • メディア: 楽譜

 

しばらく見ないうちにずいぶん高くなってしまいましたね…。内容を見ていないので音友版(=フィルハーモニア版のリプリント)との違いがあるのかないのかわかりませんが、オイレンブルク版↓なら安くなっているようです。

Symphony 7 E Minor

Symphony 7 E Minor

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: Schott Musik Intl
  • 発売日: 1986/03
  • メディア: ペーパーバック

 

お馴染みドーヴァーは、大型版しか出ていません。場所(と腕力)に余裕のある人にはお勧め(^_^;

Mahler: Symphony No. 7 in Full Score

Mahler: Symphony No. 7 in Full Score

  • 作者: Gustav Mahler
  • 出版社/メーカー: Dover Publications
  • 発売日: 1992/11/13
  • メディア: ペーパーバック


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コメント 2

Lionbass

7番はほとんど聴きませんね。
演奏会を聴きに行ったのも1~2度のような気がしますし、CDもほとんどケースから出したことがありません。
もちろん演奏したこともないのですが、果たしてやる機会が来るのか…。
by Lionbass (2011-06-12 21:23) 

stbh

Lionbassさん、いつもありがとうございます。
そこそこポピュラーになったとはいえ、第7はまだまだマイナーなほうですね。私は某東京A管弦楽団で演奏したのが最初で最後です。個人的には一度でいいから第6をやりたいのですが…。Sオケならそのうち第7くらいやるのではないですか(^_^)
by stbh (2011-06-18 09:37) 

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