Ravel/ボレロ [バレエ音楽]
どうも、ご無沙汰いたしております。半年近く間があいてしまいましたが、皆様いかがお過ごしでしたでしょうか(;^_^A 特に理由があったわけではないのですが、なんとなく記事を書く敷居が高くなり、思いのほか時間が経ってしまいました。特に理由もなく再開します(苦笑)ので、またときどき見に来てやってください。
久々のエントリーは、ラヴェルの自作自演、こちら(↓HMVのサイト)の超廉価ボックスの最初に入っています。
http://www.hmv.co.jp/product/detail/3803833
レギュラー盤の半値で、数々の往年の名演が聴けるのですからあり難い限りですが、まず注目はラヴェルが指揮している(と書かれている)2曲ではないでしょうか。ボレロは1930年、マルグリッド・ロンがソロをとっているピアノ協奏曲は1932年、いずれもコンセール・ラムルー管弦楽団の演奏が収録されています。
このボレロの録音、今でこそYouTubeにSPを再生した音がupされたりしていますが、数十年前はなかなか聴くことができず、「伝説の録音」と化していました。その伝説は、「トスカニーニのボレロのテンポがラヴェルの演奏したものよりはるかに早いといって非難されていたが、トスカニーニは『自分のテンポが正しい』と憤慨していた。はたして、譜面の指示どおりのテンポだったのはトスカニーニで、ラヴェルの録音のテンポは、譜面の指示よりはるかに遅かった」というものでした。
この曲は大人気曲で、現在は膨大な数の録音があり、テンポ運びや表情付けもさまざまですが、確かに、これらと比較してもラヴェルの演奏はかなり遅い部類に属します。しかし、この録音の大きな特徴は全体のテンポよりも細かい部分のフレージングにあります。一聴すればわかりますが、16分音符が詰まり気味で、微妙な「揺れ」が多いのです。有名なトロンボーンのソロでは、楽譜にないグリッサンドも出てきてビックリ!
これらのフレーズの「揺らし」は、必ずしもオーケストラメンバーの自発的な(=勝手な)ものではないようです。というのも曲の後半、旋律をテュッティ(合奏)で演奏する部分でも、同じようなフレージングになっているのです。つまりこのフレージングは、ラヴェルの意図するところなのですね。
今でこそ「スイスの時計職人」(ラヴェルのニックネーム)の代名詞にもなっていて、正確な演奏が当たり前のようになっているこの曲ですが、少なくともラヴェルとしては、エキゾティシズムにあふれた曲(例えばカルメンの「ハバネラ」のような)を目指していたことが、この録音を聴くとわかります。もともとこの曲がバレエ音楽として書かれた、ということを思い出すと、確かにエキゾティックな演出もアリだと思えますよね。
それが近年は、もっぱらオーケストラのヴィルトゥオジティを誇示するための曲になって、かなりラヴェルの当初の意図とは違った演奏が主流になってきてしまいました。まあもともとオーケストラ・ピースとしてもたいへん魅力的な作品であることは間違いなく、その意味でトスカニーニは先見の明があった、ということができるでしょう。
なお、このボックス、他にもモノラルながら魅力的な録音がいっぱい入っていますので、また機会をみてご紹介していきたいと思います。
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