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Stravinsky/春の祭典 [バレエ音楽]

前回、ドラティ盤をご紹介したときに、「版の違いをよく見ていない」ということを書きました。そのときは見つからなかったのですが、再度検索したら詳しいwebページがありましたので、参考にさせていただきました。

http://www.k4.dion.ne.jp/~jetter/cd/rite_edition.htm

私が参照できるのはBoosey&Hawkesの1947-1967年版と、Dover版(このページによると1965年版となっていますが、1921or29年版のリプリントとしているページもあります。楽譜自体には何も書いていないので、判断しかねます)なので、これらを並べて見ながら録音を聴いてみましょう。

今回聴いたのは、以前『火の鳥』の1945年版組曲をご紹介したシモノフ指揮RPOの録音(1996年録音、私のCDはRoyal Philharmonic Collectionシリーズの315円盤です)。

Stravinsky: Rite of Spring; Firebird

Stravinsky: Rite of Spring; Firebird

  • アーティスト: Igor Stravinsky,Yuri Simonov,Royal Philharmonic Orchestra
  • 出版社/メーカー: Regis
  • メディア: CD

 

これとドラティ盤(1981、「1947年版」と記載)、ドラティより前に紹介した自作自演盤(1960)、それにメータ/NYP盤(1977)を比べて聴いてみました。いちおう60~90年代を代表、ということで…。

上のリンク先では「生贄の踊り」部分についての詳細な比較がなされていますが、それ以外の部分についてもB&HとDoverではけっこう異同があります。いくつかピックアップしてみましょう。以下の譜例はすべて左がB&H、右がDoverです。

まず第1部、「春のロンド」の冒頭と最後にあらわれる旋律です。冒頭はEbクラとクラリネット、最後はアルト・フルートとEbクラで吹かれる旋律ですが、装飾音のつき方が違います。上が冒頭(練習番号49の直前)、下が最後(練習番号57の直前)です。

B048.JPG  D048.JPG

B056.JPG  D056.JPG

Dover版の冒頭だけ、最後の二分音符に装飾音がついています。これを録音で聴くと(○が装飾音あり、×がなし)

自作自演 冒頭○最後○
メータ 冒頭○最後○
ドラティ 冒頭○最後○
シモノフ 冒頭×最後×

こう聞こえるということは、1947年版?には両方に装飾音があったということでしょうか。

次は、ご紹介したページでも言及されていますが、「敵対する人々の戯れ」(本当はどういう意味なんだろう?)練習番号59の4小節前。ホルンとテューバのp<ff有無のほかに、Dover版ではテンポを落とす指定になっています。

B058.JPG  D058.JPG

ここを比べると(○がテンポを落とさない、<あり;×がテンポを落とす、<なし)

自作自演 テンポ○<○(fpで小さくしたまま)
メータ テンポ×(微妙)<×
ドラティ テンポ×<○
シモノフ テンポ×<○

自作自演の「pのまま伸ばす」は、やはりそういう版があることを想像してしまいます。

次は第2部から、「祖先の呼び出し」練習番号122。ティンパニの音程・リズムがぜんぜん違います。ただ、録音だとティンパニの衝撃音が強く、聴いただけではよくわかりません。見ればたたくタイコが違うのでわかるのですが…。

B122.JPG  D122.JPG

リズム(三連符○、八分+四分音符×)と音程(ベースに合わせる○、Fisのみ×)で見てみると 

自作自演 リズム○音程×?
メータ リズム×音程×
ドラティ リズム×音程×
シモノフ リズム○音程○

そして、「祖先の儀式」のミュートつきトランペット、練習番号132。これはフレージングの違いです。上段がB&H、下段がDoverです。

B132.JPG

D132.JPG

これは4種の録音がすべて同じでした。最初の2小節はスラー(Doverのように)、次の2小節の八分音符はスタッカートで演奏されていました。 フレージングの情報のないB&Hどおり演奏しているものはありませんでした。これも、スラー+スタッカートという版の存在が想像できます。

ということで、ざっと見たなかでも、出版されているスコアどおりの演奏はないことがわかりました。この中では最新のシモノフ盤が、もっとも1967年版に近い演奏だといえるでしょう。自作自演は1960年の録音ですから、ある意味当然ですが、70~80年代の録音でも、最新の楽譜が使われることは少ないことが想像できます。この理由としては、レンタルでなく自分の楽譜(基本的に古い)を持っているのオーケストラなら、録音するにしても、よほどこだわる指揮者でない限りその楽譜で演奏するから、ということがあると思います。

各年代で音のよさげな録音を聴いたつもりだったのですが、やはりシモノフ/RPO盤は、情報量が多くておすすめです。一列横隊的にすべての音が聞こえてくるわけではありませんが、適度なホールトーンもあってギスギスしておらず、聴きやすいと思います。特に大太鼓がいい音で捉えられていると思います。


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