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Mahler/交響曲第5番 [交響曲(マーラー)]

この人、来日当時は「のだめ」とのコラボなどで話題を振りまいていましたが、昨年、任期を終えて本国に帰ってしまいました。都響はフルネ、ベルティーニ、インバルと長く良好な関係を続けました(ています)が、この人はどうなるでしょうか。

 

マーラー:交響曲 第5番 嬰ハ短調

マーラー:交響曲 第5番 嬰ハ短調

  • アーティスト: マーラー,ジェームス・デプリースト,ロンドン交響楽団,モーリス・マーフィー,ティモシー・ジョーンズ
  • 出版社/メーカー: Naxos
  • 発売日: 2007/01/01
  • メディア: CD

 

マーラーは(たしか第5ではありませんでしたが)都響でも取り上げており、彼の得意なレパートリーなのでしょう。昔のエントリーにも書きましたが、彼の指揮による第5をフィラデルフィアで聴いたのは、1991年冬、もう20年近く前になります。テンシュテットのピンチヒッターとして登場、かなり起伏の大きい情熱的な演奏で、終演後はスタンディング・オベイションでした。「地元(フィラデルフィア生まれ)の指揮者」というのを差し引いても、よい演奏会であったと思います。2005年にロンドンで行われたこの録音も、基本的な解釈は大きく変わっていないように感じました。

第5はマーラーにとって、声楽もない、(もともと「交響詩」というタイトルだった第1のように)ストーリーもない最初の交響曲で、器楽のみによる、いわゆる中期交響曲の口火を切る作品です。いっぽう、楽章をグルーピングして「第1部(第1、2楽章)」「第2部(第3楽章)」「第3部(第4、5楽章)」としていますが、このようなグルーピングがなされた曲としては最後になっており、やはりマーラーの転換点となっている作品ということが出来るでしょう。

この曲はやはり冒頭のトランペット・ソロに始まる「葬送行進曲」が印象的ですね。また、この曲でもっとも有名な第4楽章「アダージェット」はマーラーの作品としては歌曲を含めても唯一、管楽器を用いない楽章(*)で、その美しさは際立っています。第1楽章、第4楽章いずれもその後に続く楽章の「序章」のような役割を果たしています。「主構造」よりもそのまわりに施された「装飾」の方が目に付きやすく、また美しい、というのは、何も建造物に限ったことではないようです。

第1楽章はこまかいテンポの「揺らし」に特徴のある、激情的ともいえる演奏になっています。アクセントなどもはっきりつけらえており、半ば強引にデプリーストのマーラーの世界に持っていかれます。第2楽章も緩急のついたダイナミックな解釈ですが、「緩」の部分でよく歌っているのが印象的です。第1楽章と同様にアクセントが明確に演奏されていますが、陰になってしまう声部の音やデクレシェンドしたフレーズの納めの音もよく聴くことができるのは、演奏のウデと録音(ミキシング)の妙の相乗効果ですね。

第3楽章はやや遅めのテンポが主体で、これもよく歌っています(特にホルンがすばらしい!)。演奏時間19分半というのは長いほうなのではないでしょうか。第4楽章もよく歌っていますが、止まってしまいそうなテンポではなく、かえって感情移入しやすい、聴きやすい演奏ですね。第5楽章も比較的落ち着いたテンポでじっくりと聞かせてくれます。そして、全体がゆっくりめなだけに、第3楽章のコーダやフィナーレのたたみかけ方が印象的です。

マーラー第5の名盤は数々ありますが、それらに十分伍していける録音だと思います。あまり情緒的・主観的に過ぎず、カッチリあるいはアッサリしすぎてもいない、中庸の美とでもいいますか、聴きやすいのではないでしょうか。

楽譜はこちらになります。第5は1970年代後半のマーラー・ブーム以前からそこそこポピュラーだったので、いろいろ異本があってもおかしくないですね。たしか全音と音友もオーケストレーションがわずかに違っていたように記憶しているのですが、勘違いかもしれません。両方手許にあるわけではないので、どなたか確認された方、ご教示くださいm(_ _;)m

スコア マーラー 交響曲第5番 嬰ハ短調 (Zen‐on score)

スコア マーラー 交響曲第5番 嬰ハ短調 (Zen‐on score)

  • 作者: マーラー
  • 出版社/メーカー: 全音楽譜出版社
  • 発売日: 1998/12/10
  • メディア: 楽譜

OGTー1458 マーラー 交響曲第5番 (Edition Peters miniature scores)

OGTー1458 マーラー 交響曲第5番 (Edition Peters miniature scores)

  • 作者: マーラー
  • 出版社/メーカー: 音楽之友社
  • 発売日: 1998/12/10
  • メディア: 楽譜

*ところで、マーラーの作品にはまた、弦五部を用いない(ハープ、ピアノはあり)曲が1つだけあります。何だかおわかりですか?


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