Mahler/交響曲第9番 [交響曲(マーラー)]
まとまった時間が取れなかったり、PCの調子が悪かったりしてなかなかエントリーが進みませんが、遅々として続けて参りますのでどうぞお付き合いをお願いします。今回はこのCDをご紹介します。
1967年モスクワ・フィル来日公演のライヴです。CD解説にある日程表によると、チャイコフスキーを中心にツアーを続けてきたモスクワ・フィルは、帰国間際に東京だけでこの曲、そしてショスタコーヴィチの交響曲第6、8番を1回ずつ演奏しています。なぜマーラーを1回だけ、それも第9を持ってきたかよくわかりませんが、当時すでにクレンペラーやワルターの新録音もあったことを思うと、第1、第5あたりとならんで、器楽のみで比較的演奏しやすい、と思われていたのかもしれません。
いずれにしても、この演奏会がこの曲の「日本初演」となったわけです。当時、この曲を知っているというのはそうとうコアなクラシック・ファンだったのではないでしょうか。そもそもクラシックの裾野も今ほど広くなかったでしょう。当時の聴衆は、どういう思いでこの曲・この演奏を聴いていたのでしょうか。
これもあちこちのサイトですでに言及されていることですが、この演奏は全体で70分を切っており、かなり速い(時間が短い)部類に属します。とはいえ、決して単調な演奏ではなく、テンポや強弱の揺れはかなり大きいです。同時に推進力というか、グイグイと前に進む勢いが強いので、結果的に時間が短くなっているということのようです。
第1楽章冒頭は、オリジナルのテープが不調のようで、音が揺れたり、セパレーションがおかしかったりと3分ほど聴きづらい状態が続きます。これをもってこの録音は聴くに値しない、と断じているかたもいらっしゃるようですが、ここはぜひ我慢していただきたい。ここを抜ければ、コンドラシンの作る「生命感溢れる」マーラーの世界へ連れて行ってもらえます。金管の強奏などは「おお、ロシアのオケ!(^_^;」という場面もありますが、非常に心地よく聴ける演奏だと思います。
第2・3楽章はいっそうメリハリが利いていて、コンドラシンの面目躍如、といったところです。細かい話ですがアンサンブルの精度も案じていたほど(?)悪くはなく、テンポが遅い部分もダレることなく聴くことができました。
第4楽章の印象も第1楽章と共通で、下手な例えですが「死にたくなるような」演奏ではありません。生き生きとしていて、聴いたあと、明日への活力が沸いてくるような、かといって馬力一辺倒でなく情緒があふれた演奏です。もちろん、「第4楽章は死にそうに遅くないと」という向きにはオススメできませんが。
この録音を最初に聴いてしまうと、他のマーラー第9の演奏・録音を聴いたときに違和感をおぼえるかもしれませんので、ファースト・チョイスとしては適切でないのかもしれませんが、この曲のひとつのアプローチとして、十分アリだと思いました。機会があれば(特にこの曲のファンで未聴のかた)ぜひ聴いてみてください。
こんばんは。
先日、アンチェルの第九を聴きました。66年の録音なので、このコンドラシン盤に近い頃のものです。
コンドラシンが日本初演というのは何か意外な気もしますが、当時のソ連でもこの第九は特別な音楽だったのかもしれませんね。
このCD、前からちょっと気になっていましたが、良さそうです。聴いてみたいと思います。
by 吉田 (2009-03-08 20:30)
吉田さん、こんばんは。
アンチェルですか!私はアンチェルのマーラー、聴いたことがないんです。第9はありませんが、ノイマン=ゲヴァントハウスの録音もこのころでしたね。ウィーンよりもボヘミアに近い人が先にマーラーに目覚めたのでしょうか。モスクワも意外と東欧に近いですし(ちょっと無理がありますか)。
コンドラシンの録音、「マラ9は遅くないとダメ」という方以外でしたら、けっこう起伏があって楽しめると思います。ぜひお試しください。
by stbh (2009-03-08 23:05)