Ravel/管弦楽曲：音楽よしなしごと：SSブログ

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Ravel/管弦楽曲　[管弦楽曲] [編集]

1960年代の録音は、どのオーケストラもその個性が豊かだと思います。中でもこの録音は、その最たるものでしょう。

Ravel: Rhapsodie Espagnole / Cluytens, Paris Conservatoire Orchestra

クリュイタンス/パリ音楽院管弦楽団の初来日公演、1964年5月7日、東京文化会館のコンサートを収録した2枚組。

上のリンク先（Towerrecords）を見ると、いまは半額以下になっているようです（終わってしまっていたらごめんなさい）。以前ご紹介した「幻想」などのCDと同じツアーの記録ですが、あちらはステレオでかなりクリアな音なのに、こちらはモノラルで、テープが何箇所かでちょっとよれています。しかしそんな録音のハンデを差し引いても、このCDも一聴に値すると思います。

ラヴェルが6曲の本プロに加えて、アンコールのベルリオーズが収録されています。

１．スペイン狂詩曲
２．組曲”マ・メール・ロア”
３．ラ・ヴァルス
４．クープランの墓
５．亡き女王へのパヴァーヌ
６．”ダフニスとクロエ”第2組曲
７．ラコッツィ行進曲

まず冒頭の「スペイン狂詩曲」から、コンセルヴァトワール・オケの音色に圧倒されてしまいます。弦・木管・金管の各楽器が、もう、「これがフランスだ」といわんばかりの音で、あるときは濃厚に、またあるときは軽やかにと、変幻自在の音楽を奏でてくれます。しばらく聴いていれば、録音のハンデなど忘れて、ラヴェルの世界に引きずり込まれてしまいます。

もともと子供用のピアノ連弾をバレエ用に管弦楽編曲したのが「マ・メール・ロア」（マザー・グース）ですが、ここでは連弾に近い構成の「組曲版」が演奏されています。個人的には全曲がつながってひとつの世界を作り上げる「全曲版」のほうが好きなのですが、組曲でもラヴェルの描く童話がしっとりと再現されています。この「しっとり」とした感触は、やはりピアノ曲からの編曲である「パヴァーヌ」にも共通しています。

同じピアノからの編曲でも、「クープランの墓」は古典に範を取った、どちらかというとかっちりとした構成のためか、ラヴェルの精密な面の色彩が強い作品ですが、特に木管楽器奏者ひとりひとりが豊かな表情を保ったまま精巧なアンサンブルを築いているのは驚異的です。

そして休憩前最後（たぶん）のラ･ヴァルスと演奏会最後の曲である「ダフニスとクロエ」第2組曲では、精妙なアンサンブルのまま、大編成ならではの分厚い音楽を聴かせてくれます。「これがラヴェルの聴きたかった音に違いない」と疑いなく思えてしまう、精緻かつ豊潤な音楽は、ある意味、80年代のデュトワの録音でもかなわないでしょう。そのすばらしさは、文字通り「息をのむ」名演です。

さて、近年の版権切れにより、ラヴェルのスコアもずいぶん安く手に入るようになりました。