Bruckner/交響曲第4番「ロマンティック」 [交響曲(独墺系)]
この間の日曜日、ご他聞に漏れず「N響アワー」の朝比奈特集を見ていたわけですが、家人がいみじくも言いました、「こういうの見てると、細切れで欲求不満にならない?」…そのとおりです。
というわけで、「ロマンティック」を聴きました。ムーティ/ウィーン・フィル、1984年ザルツブルク音楽祭のライヴ録音。CDは、ほぼ同時期のベルリン・フィルとの録音が出ています。
再発売なのですね。ムーティのレパートリーとしては
ブルックナーは珍しいです。フィラデルフィアの常任時代など、ベートーヴェンやブラームスなどのドイツ系交響曲はいろいろ録音していますが、私にとってはムーティというとどうしてもヴェルディのイメージが強いです。ドイツものだったらモーツァルトのオペラでしょうか。そうそう、カルミナ・ブラーナも録音していますけど、マーラーは第1番しか覚えがありません。
全体的には「よく歌う」ブルックナーで、イタリア人のジュリーニやアバドに相通ずるものがあるように感じます。とはいえ、例えば第1楽章の第1主題に端的にあらわれていますが、付点の短い音符は短めに、フレーズの終わりの音はfpやディミニエンドはせずどちらかというと「ぶちっ」と切れるように演奏させています。旋律の歌わせ方は、あくまできびきびとカッコよく、特に第1楽章はムーティの「颯爽とした」雰囲気がよくあらわれていると思います。
対照的に第2楽章は、テンポもやや遅めでなかなか重厚です。リタルダンドを多用してテンポの変わり目を滑らかにつないでいるのが好みのわかれるところでしょうか。第3楽章は金管が鳴らしきっている感じなのですが、決して騒々しくならないのがさすがウィーン・フィルですね。
最終楽章も、どっしりとした構えで和音がよく鳴って聞こえてきます。「ブルックナーの響き」を十分楽しめました。全体を振り返ってみると、思ったよりオーソドックスなブルックナーでした。他の交響曲も録音すればよかったのに…と、素直に思いました。「朝比奈の欲求不満」も解消できましたね。
なお、使用されている版は(たぶん)ノーヴァク版を基本にした折衷版のようです。主なポイントの異同は以下のとおりです:第1楽章再現部前のト長調の部分:ティンパニあり、第3楽章のトリオ:旋律はフルート、第4楽章のシンバル:なし、第4楽章最後の主題の回帰:なし。
これはイイ演奏でした。よく歌い、しかも若武者の勢いがある、素晴らしいブルックナーでした。
このコンビで、5番や7・8・9番を聴いてみたかったと思いますが、録音からもう20年以上たちましたので、ムーティはもうやる気はないでしょうねえ。
ああ、勿体ないくらい、格好良く颯爽としたブルックナーでした。
by mozart1889 (2008-07-03 17:44)
mozart1889さん、コメントをありがとうございます。重厚なブルックナーを好む人は歯牙にもかけないかもしれませんが、気持ちいい演奏ですよね。ムーティは、思いのほか(というと失礼かもしれませんが)レパートリーを厳選しているように感じます。ブルックナーは最近、第2を演奏しているようなのですが、例えば第7などきっと似合うのに。そんな想像をさせるくらい、素敵な演奏だと思います。
by stbh (2008-07-05 18:59)
ムーティは、アメリカの作品をシカゴ響でもやるようです。
by サンフランシスコ人 (2008-07-10 06:59)
そうですか、楽しみですね!
by stbh (2008-07-11 08:01)
シカゴでバレンボイムは、アメリカの作品を無視しました。
by サンフランシスコ人 (2008-07-12 04:11)
あれ?そうなんですか。
コリリアーノのシンフォニーのCD持ってますので、あまりそういう印象はありませんでした。
by stbh (2008-07-12 22:07)
シカゴの保守派のファンは、現代の作品が嫌いでした。
by サンフランシスコ人 (2008-09-07 02:21)
なるほど、NYの聴衆はコンサバだという話は聞きましたが、シカゴでもそうなのですね。
by stbh (2008-09-07 09:37)
「ムーティのレパートリーとしてはブルックナーは珍しいです。」
10月に、ムーティ/シカゴ響が、2番をやるようです。
http://www.cso.org/main.taf?p=3,11,6,1&EventID=3002
by サンフランシスコ人 (2009-02-21 05:09)
ムーティはブルックナーの2、4、6をとりあげたことがあるようです。あまり壮大なのは好きじゃないんでしょうか。
by stbh (2009-02-22 23:47)
ブルーノ・ワルター/サンフランシスコ響/ブルックナー4番
http://www.sfsymphony.org/music/ProgramNotes.aspx?id=36126
"The San Francisco Symphony first played the Bruckner Fourth in April 1951, under the direction of Bruno Walter; "
by サンフランシスコ人 (2009-03-09 04:05)
初めてのブルックナーがワルターの指揮ですか。時代とはいえ、うらやましいですね。
by stbh (2009-03-14 16:23)
「初めてのブルックナーが....」
ブルックナー4番です.......ワルターが、初めてサンフランシスコ響を指揮したのが大正時代、最後が昭和30年代です。
by サンフランシスコ人 (2009-03-15 02:22)
あくまで「4番」でしたね、失礼しました。
「大正時代」といわれると遠い昔のように聞こえますが、ワルターのキャリアの中で考えると40年そこそこですから、当たり前なのですね…。
by stbh (2009-03-15 11:13)
ワルターが、40年代でした。
by サンフランシスコ人 (2009-03-16 06:26)
ワルターの写真は晩年のCBSのもので親しんでいたので、若いころのイメージが沸かないのですが、相当イイ男だったようですね。
by stbh (2009-03-24 23:44)