SSブログ

Bruckner/交響曲第2番 [交響曲(独墺系)]

ブルックナーの交響曲の中でも最もマイナーな部類に属すると思いますが、最近はアイヒホルン、ヤングなどの録音で多少ポピュラリティが上がってきているようです。今日はデジタル初期のカラヤン盤。中古のみのリンクで恐縮です。全集も在庫切れでしたのでご勘弁ください。

Symphony 2

Symphony 2

  • アーティスト: Bruckner, Karajan, Bpo
  • 出版社/メーカー: Polygram Records
  • 発売日: 1990/10/25
  • メディア: CD

カラヤンは第4、7、8、9番は複数回録音していますし、何度も演奏会で取り上げていますが、その他の交響曲の話はあまり聞きません(50年代?の第5の録音が入手可能なようですが)。ベルリン・フィルとの唯一の全集も、デジタル時代になって、未録音の曲をばばばっと録音することで完成させています。と言うわけで、これらの録音はやっつけ仕事のように思われ(私も思っていました)、少なくとも肯定的には、あまり話題になることも無かったと記憶しています。私はたまたま第2だけ、単売になっているのを入手しました。ジャケットの写真をのせておきます。

 

DGのカラヤンのブルックナーは、この羽根のデザインで統一されていましたね。かつてのDGは、作曲家・指揮者ごとに統一したデザインで、それだけでシリーズの購買意欲をそそるくらいだったのですが、現在でも踏襲されているものはずいぶん減りました。カラヤンだとベートーヴェンの数字、ブラームスの閃光のような直線、マーラーの虹などがありましたし、同じマーラーでもクーベリックはクリムト(アバド/ウィーン・フィルのベートーヴェン旧全集もクリムトでした)、アバドは孔雀の羽のような模様、バーンスタインはオリエンタル調、シノーポリはマーラーの肖像をいろいろな処理で、そしてブーレーズは(途中からブーレーズの顔になってしまいましたが)抽象画的なもの、など、楽しめるものだったと思います。

さてブルックナーは1870年代に、第2に始まり、第3から第5までの各交響曲を作曲し、さらに、初演の機会が無かった第5を除く3曲を改訂しています。これらの作曲・改訂はいわば「順不同」で次々と行われています。演奏会での不評に意気消沈しながらも、作曲と改訂を繰り返したブルックナーのあくなき創作意欲は非常に強いものでした。特にこの第2は、前作の第0と比べて極の規模や構想が大きくなり、彼の交響曲の転換点となった作品だと思います。第1楽章のブルックナー開始、第2楽章の美しさ、第3楽章の強烈なリズムなど、以後の彼の交響曲のスタイルの原点がここにあります。特に、短調の主調に対して美しい長調の第2楽章、第4楽章結尾直前での第1楽章の回想など、全体としての構成は第3と共通点が多いです。そうそう、2連符、3連符、付点、5連符、6連符などが混在して非常に複雑なリズムになっているのもこの時期の曲の特徴ですね。第4などは改訂で5連符がかなり減りましたが、第2は第2楽章のヴァイオリンにはっきり残っています。

カラヤン/BPOの録音は、1877年ノーヴァク版を用いているとクレジットされています。ノーヴァク1877年版(下のリンクをご参照ください)によれば、1872/73年稿と1877年改訂稿をごっちゃにした(とノーヴァクが主張する)ハース版からの大きな改訂点としては第1、2、4楽章の一部のカットと、第2楽章の結尾の差し替えがあります。このカットについては、いつもハースの仕事に対して批判的なノーヴァクが「とくにフィナーレ楽章では、なくなっては惜しいたくさんの部分が抹殺されてしまうことも明らかだ」と述べており、珍しくいささか煮え切らない言い方になっています。そしてカラヤンは、まさにこの第4楽章の2箇所のカットだけ復活させているのです。カラヤンが彼の(あるいはベルリン・フィルの)演奏してきた通例に従っただけなのか、いくつかの選択肢の一つとして第4楽章だけカットを復活したのかはわかりませんが。

演奏については、レガートを基調にしたいつものカラヤン・サウンドで、特に第2楽章(通例の「アダージョ」ではなく、「アンダンテ」とつけられています)は非常に美しいと思います。この楽章はブルックナーの得意な転調のオンパレードで、楽譜上の調性もころころ変わるうえに、調号にあらわれない転調も非常にたくさんあり、いずれも違和感無く続いています。カラヤン/ベルリン・フィルの演奏を聴いていると、本当に「転調の神様」がブルックナーにやどったかのように美しく聞こえて来るのです。反面、スケルツォや終楽章の盛り上がりなどは、ちょっと荒々しさが足りないような気にもなってしまいますが、これが「カラヤンのブルックナー」のスタイルなのだと思います。

最後に、例によって楽譜をご紹介しておきましょう…と思ったら、こちらも在庫切れでした(泣)

 

OGTー202 ブルックナー 交響曲第2番 ハ短調(1877稿) (〓sterreichische Nationalbibliothek Internationale Bruckner‐Gesellschaft miniature scores)

OGTー202 ブルックナー 交響曲第2番 ハ短調(1877稿) (〓sterreichische Nationalbibliothek Internationale Bruckner‐Gesellschaft miniature scores)

  • 作者: ブルックナー, L.ノーヴァク
  • 出版社/メーカー: 音楽之友社
  • 発売日: 1999/09/01
  • メディア: 楽譜

国際ブルックナー協会版の最新の楽譜はキャラガンの校訂によるもので、輸入楽譜の取り扱い店(例えば「アカデミア」など)で手に入れることは可能のようです。こういった楽譜が発表されてくるのを見ると、ブルックナーの研究は、第9に限らずまだまだ続きそうに思えますね。


nice!(0)  コメント(15)  トラックバック(1) 
共通テーマ:音楽

nice! 0

コメント 15

サンフランシスコ人

サンフランシスコ交響楽団も、ブロムシュテットとブルックナーの交響曲を頻繁に演奏会で取り上げました。
by サンフランシスコ人 (2008-02-08 09:40) 

吉田

こんばんは。
カラヤンのブルックナーは、聴きごたえがあります。
カラヤン節をじゅうぶんに発揮しているうえに、そのスタイルはブルックナーにあっているように思います。
普段、2番をあまりよく聴くほうではなく、カットを復活させたといわれるあたりは全然気がつきませんが…、聴いた後は、ブルックナーを堪能した満腹感を感じる演奏です。
by 吉田 (2008-02-08 21:27) 

stbh

> サンフランシスコ人さん

ブロムシュテットのブルックナーですか!SKDやN響の録音・録画でしか聴いたことがありませんが、きっとSFSとの実演はすばらしいでしょうね!ブロムシュテット/SFSはヒンデミットが愛聴盤です。
by stbh (2008-02-09 09:17) 

stbh

> 吉田さん

第2は、私の中では不人気曲(^_^; だったので、あまり聴いてませんでした。今回じっくり聴いてみて、第3、第4とならぶ名曲だと感じました。カラヤンのブルックナー、やはりいいですね。
by stbh (2008-02-09 09:21) 

サンフランシスコ人

「きっとSFSとの実演はすばらしいでしょうね!」

ブロムシュテット時代に、サンフランシスコ響の定期で、ブロムシュテットのブルックナー第8の実演を見ました。
by サンフランシスコ人 (2008-02-13 03:35) 

stbh

ブロムシュテットの第8!うらやましいですね~。
by stbh (2008-02-14 00:43) 

サンフランシスコ人

ブロムシュテットの常任指揮者としての最後のシーズンだったと思います。
by サンフランシスコ人 (2008-02-14 04:14) 

stbh

SFSのサイトを見ました!ブロムシュテットは桂冠指揮者で、今でも定期的にSFSを振っているのですね。
by stbh (2008-02-14 22:13) 

サンフランシスコ人

「今でも定期的にSFSを振っているのですね。」

毎年です。
by サンフランシスコ人 (2008-02-16 06:40) 

stbh

MTTもブロムシュテットも(他の指揮者も)、SFSで毎年楽しめるわけですね、いいですね!
by stbh (2008-02-16 16:14) 

サンフランシスコ人

ブロムシュテットのブルックナーの交響曲第2番
サンフランシスコ 2008年10月 (2008-2009シーズン)

"SFS Conductor Laureate Herbert Blomstedt takes the helm to conduct the Orchestra for two subscription weeks in the 2008-09 season beginning in October, leading pianist Krystian Zimerman in Lutosławski’s Piano Concerto and Bruckner’s Symphony No. 2. The following week features guest violinist Nikolaj Znaider in Brahms’ Violin Concerto in D Major and Nielsen’s Symphony No. 3."
by サンフランシスコ人 (2008-03-04 06:27) 

サンフランシスコ人

http://www.sfsymphony.org/pdfs/0809_CHART_renewal_final.pdf
by サンフランシスコ人 (2008-03-04 08:31) 

stbh

翌週はニールセンですか!新作も多くあるのですねー。
by stbh (2008-03-05 18:40) 

サンフランシスコ人

「ブロムシュテットも.....毎年楽しめるわけですね....」

"Blomstedt conducts the Orchestra for two weeks in February 2010, when he leads the Orchestra in Beethoven’s Symphony No. 3, Eroica. SFS Principal Cello Michael Grebanier is the soloist with the SFS in Haydn’s Cello Concerto No. 1. Maestro Blomstedt will also conduct performances of Bruckner’s Symphony No. 6 and Mozart’s Symphony No. 36, Linz. "


by サンフランシスコ人 (2009-03-03 04:26) 

stbh

来シーズンのブロムシュテットは、古典的なプログラムなのですね。お聴きになったら感想を聞かせてください。
by stbh (2009-03-07 23:54) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 1

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。