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Rachmaninoff/ピアノ協奏曲第3番 [協奏曲]

ラフマニノフのピアノ協奏曲は第2番がもっとも知られていると思いますが、「のだめ」に取り上げられたりして、この曲のポピュラリティも上がってきました。今回は自作自演で。

ラフマニノフ:自作自演~ピアノ協奏曲第2番&第3番

ラフマニノフ:自作自演~ピアノ協奏曲第2番&第3番

  • アーティスト: ラフマニノフ(セルゲイ), フィラデルフィア管弦楽団, ストコフスキー(レオポルド), オーマンディ(ユージン), ラフマニノフ
  • 出版社/メーカー: BMG JAPAN
  • 発売日: 2007/11/07
  • メディア: CD

ラフマニノフの自作自演は、残りの協奏曲(このCDと同じメンバーで入れています)や独奏曲も残っています。電気録音以前(たぶん)にはピアノ・ロールも残していますので、自身が卓越したピアニストだったラフマニノフは、自分の演奏を再現できるメディアに保存することに積極的だったようです。1939~40年の収録ですから、もうすぐ喜寿(笑)になる録音です。もちろんモノラルですし、ダイナミックレンジや録音バランスなど数々の限界はありますが、彼自身の解釈が聴ける点だけでも十分価値があると思います。

ピアノという楽器が成立した初めのころ、モーツァルトやベートーヴェンなどは、自身の演奏を披露する手段としてピアノ協奏曲を作曲していたと思います。19世紀になっても、たとえばショパンやリストは自分が演奏する目的でピアノ協奏曲を作曲しており、ラフマニノフの作品もその流れを汲むものでしょう。さらに特徴的なのは、彼の協奏曲がいずれも(ブラームスの2曲に次ぐくらい)大規模であること、20世紀初頭の作品とはいえ、ロマンの香りを満々と湛えていることでしょう。

なかでもこの第3番は、技巧的な難曲として有名です。とはいえ、ただ弾けばいいというわけではなく、その先にどれだけのものを聴衆に聴かせることができるかが勝負になってきます。今年のお正月の「のだめ」で、嫉妬に狂って(?)この曲を猛練習するのだめに、「指が回るやつは他にもいっぱいいる。問題は何を表現したいかだ」というようなことを言っていたように記憶していますが、まさに音楽の本質はそこにあろうと思います。

そこでこの録音ですが、第3楽章にカットがあることを考慮に入れても、近年の録音に較べるとかなりテンポが速いようです。これだけのスピードで弾きこなすラフマニノフもすごい(彼は大男で、手もとても大きかったそうです)ですが、このスピードによって、近接音程からなるロマンティックな旋律線が浮かび上がり、曲全体の流れが大きく見えてくるように思えます。全曲を通して聴いてもあっという間に終わってしまう印象なのですが、これは物理的な速度以上に、大きなフレージングやテンポ配分に理由があるのではないでしょうか。

実は私、ラフマニノフはほとんど聴きません。若いころ何曲か聴きましたが、ピアノの技巧をひけらかすいっぽうで旋律はどうにもベタベタしたものばかりで、退屈に感じてしまって、それ以来、ロクに聴いたことはありませんでした。このCDも、購入直後に「念のため全部流してみた(苦笑)」以外にはほとんど聴かなかったように思います。ソロパートは長大なアルペジオ、高速スケール、連続和音など技巧的できらびやかなのに較べて、オーケストラは伴奏に徹していてぱっとしない、というのもオーケストラ好きにはいまひとつだったのでしょう。

今回聴きなおしてみても、ラフマニノフ作品の基本的な印象はあまり変わりませんが、それでも前よりは「いいんじゃないか」と思えるようになってきました(たいへん不遜ですが)。ラフマニノフのソロはうまいのですが、緩急や強弱をことさら強調して見得を切るわけではなく、どちらかというと淡々と弾いているように感じます。自分の技巧よりは、曲そのものを聴かせようとするように思われるのです。

一度でも実演を聴くとこの曲の印象が大きく変わるかもしれない、とは思います。協奏曲でソリストが見せる技巧は視覚的な要素も大きく、それが眼前で展開されれば曲に対する同化というか、思い入れも大きくなるでしょう。今回、ラフマニノフを聴いて、実演に接する機会が無くて協奏曲を聴くのは、想像力の乏しい私にはなかなか困難なことなのかもしれません。とはいえ、もちろんまだまだ知らない曲は山ほどあるので、なんかのきっかけから「聴く」レパートリーを増やしていきたいと思います。

なお、私の聴いているCDは上のリンク先のものではなくて、これまでにもいくつかご紹介している「20世紀の偉大な指揮者」シリーズのオーマンディのディスクで、この協奏曲とシベリウスの第1交響曲がカップリングされています。ですので、第2をはじめとする他の協奏曲の自作自演は未聴です。あくまで第3番を聴いての感想、ということです。

最後になりましたが、スコアはこちらが安価で便利でしょう。

Rachmaninoff: Piano Concerto No. 3 in D Minor, Op. 30 (Dover Miniature Scores) (Dover Miniature Scores)

Rachmaninoff: Piano Concerto No. 3 in D Minor, Op. 30 (Dover Miniature Scores) (Dover Miniature Scores)

  • 作者: Serge Rachmaninoff
  • 出版社/メーカー: Dover Pubns
  • 発売日: 2006/04/24
  • メディア: ペーパーバック

ドーヴァーは第1、2、3番が1冊になった大判も出しています。蒐集癖のある方には、第4番が入っていないのが残念ですね。

Rachmaninoff: Piano Concertos Nos. 1, 2, and 3 in Full Score (Piano Concertos, 2 & 3)

Rachmaninoff: Piano Concertos Nos. 1, 2, and 3 in Full Score (Piano Concertos, 2 & 3)

  • 作者: Serge Rachmaninoff
  • 出版社/メーカー: Dover Pubns
  • 発売日: 1990/07
  • メディア: ペーパーバック

2台ピアノ版はこちら。オーケストラをリダクションしたピアノも難しそうですが…。

Sergei Rachmaninoff Piano Concerto No. 3: Opus 30 : For Two Pianos/Four Hands

Sergei Rachmaninoff Piano Concerto No. 3: Opus 30 : For Two Pianos/Four Hands

  • 作者: Sergei Rachmaninoff
  • 出版社/メーカー: Warner Bros Pubns
  • 発売日: 1985/03/22
  • メディア: 楽譜

余談ですが、最近円高になってきているので、洋書の価格が下がってきているものもあるようです。もちろん、あくまで自己責任ということで、「高かった!」「もっと安くなった!」とかの苦情はご勘弁くださいね。


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コメント 2

サンフランシスコ人

フィラデルフィア管弦楽団では、2008~09年は音楽監督不在のシーズンです。
by サンフランシスコ人 (2008-02-21 05:39) 

stbh

そうなのですか!フィラデルフィアというと、私はオーマンディとムーティを思い浮かべます。
by stbh (2008-02-23 00:28) 

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