Saegusa/Radiation Mass [その他の音楽]
作曲家はクラシックの人だし、歌詞はラテン語の典礼文だけど、やってる人たちは、ぜんぜんクラシックじゃないんですよね…。「声楽曲」というには違和感があります。ということで、困ったときの「その他の音楽」に分類。この曲、CDは買いそびれちゃったのですが、数年に1回、聴いています。
ユニット名(DKW-57349)は謎(確か、何かの意味があったはず)ですが、メンバーは、キーボードが向谷実、難波弘之、なかむらさとし、倉田信雄、ヴォコーダーに森本恭正、ドラムスに岡井大二と、この録音が行われた1981年時点の、ロックやフュージョンでバリバリならしているプレイヤーばかりです。
上にもちょっと書きましたが、サウンドは完璧ロック(プログレ)、歌詞はミサ典礼文(通常文)という、野心的な作品。曲は「キリエ」、「グローリア」、「クレド」、「サンクトゥス」、「ベネディクトゥス」、「アニュス・デイ」の6曲からなっています。歌詞も、通常のミサ曲で歌われるものがそのまま使われています。アナログ楽器はドラムス(とピアノ?)だけという編成で、ギターやベースに似て聞こえる音も全部キーボードです。また、ヴォーカルはひとりだけなので、フーガとかはありません。
「キリエ」はドラムスの入らない、幻想SF的なナンバー。いかにもコスミックな「ひゅうううう」という音をバックに、曲が始まり、ゆったりとしたメロディーが無限に続くかのように繰り返されます。「グローリア」は一転して、奇数拍子中心の大変拍子大会。その手のプログレをかなり意識して書かれているようです。「クレド」はいちばん長い楽章。9/8拍子で始まり、ブルースチックな12/8拍子が主体になっています。
「サンクトゥス」はベースラインの効いた、ロックンロール調のナンバー。次の「ベネディクトゥス」は唯一ピアノ(アコースティックっぽい音ですが合成音かもしれません)が入る、ゆったりとした曲で、最後に"Hosanna"は繰り返します。「アニュス・デイ」の音楽は「キリエ」の繰り返しになりますが、最後にドラムスも入り、シーケンサーが"pacem"を繰り返すパターンになり、それがいきなり途切れて唐突に曲を閉じます。
初演から四半世紀以上が過ぎ、当時の最先端のサウンドも、今聴くとちょっと古めかしく聞こえるのは止むを得ないところでしょう。とはいえ、ロックやフュージョンの語法を消化して、そのうえで自分の表現を作っている三枝成章という人は、やはりなかなかの才人だったと思います。どこかでリマスターして再発売してくれないでしょうか。
コメント 0