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Mahler/Sym10 [交響曲(マーラー)]

何度か回しているマーラー・シリーズ、この曲を紹介したくてやっている部分も、かなりあります。

マーラー:交響曲第10番(クック版)(紙ジャケット仕様)

マーラー:交響曲第10番(クック版)(紙ジャケット仕様)

  • アーティスト: オーマンディ(ユージン), フィラデルフィア管弦楽団, マーラー
  • 出版社/メーカー: ソニーミュージックエンタテインメント
  • 発売日: 2006/10/18
  • メディア: CD

この録音で閉じることをねらって、今回のシリーズの最初も、オーマンディ/フィラデルフィアの第1でした。あちらはRCA録音ですが、この第10はCBS原盤です。当時は「アメリカの両雄」のような2社でしたが、今やSONY/BMGという、ひとつの組織になってしまいました。隔世の感がありますね。

この録音、長らく廃盤になっていたようで、金子建志さんの本(例えば↓)

マーラーの交響曲〈2〉 (こだわり派のための名曲徹底分析)

マーラーの交響曲〈2〉 (こだわり派のための名曲徹底分析)

  • 作者: 金子 建志
  • 出版社/メーカー: 音楽之友社
  • 発売日: 2001/11/01
  • メディア: 単行本

で知ってはいましたが、聴く機会がありませんでした。SONY/BMGになってから旧譜がいろいろな形で再発売されており、この録音も昨年、復刻されています。国内盤は上記のように二つ折りの紙ジャケ仕様ですが、私の持っている米盤は普通のプラケースです。クック以前にショスタコーヴィッチやシェーンベルクにリアリゼーションを依頼したり、アルマ・マーラーにクック版を許可するよう勧めるなど、第10交響曲全曲版の成立に尽力した、アメリカの音楽学者ジャック・ディーサーによる、初出のときのライナー・ノートが再現されています。国内盤にも翻訳があるのでしょうか?

いくつかの「交響曲全集」中にも取り上げられ、着実に市民権を得つつある「クック版」の最初の録音がこのオーマンディ盤です。1964年にイギリスで初演された「第2稿」と呼ばれるバージョンの唯一の録音で、翌1965年にオーマンディ/フィラデルフィアがアメリカ初演と初録音を果たしました。上記ディーサーの記述によれば、オーマンディが初演を「希望し、許可された」そうです。「第1稿」にあたるバージョンは、1960年に放送され、1963年にアルマが耳にしたもので、まだ両スケルツォの一部を欠いており、演奏会のプログラムに載せるには耐えられないものでした。したがって、この第2稿がコンサートで演奏された最初のヴァージョンということになります。

細かい部分で第3稿との異同は多く、を聴きなれていると、時たま「おっ!?」という響きのところがありますが、全体の流れは変わっていません。これは1963年にアルマが第1稿の録音を聴き感動して、この時点で「第10の作編曲まかりならん」という態度を覆して、これまで未公開だった資料が公になったからで、クックの第2稿もこれらの新しい資料を反映したものとなっています。初演など、実際に音になったものを聴いて、(あたかもマーラーが生前していたように)細部のオーケストレーションを中心になおしただけのようで、実は1966年には第3稿は完成していました。しかし第3稿の実現もそうそう容易ではなく、モリス/フィルハーモニアの初演・録音まではその後6年を要し、出版は結局1976年、クックの亡くなる直前になってしまいました。楽譜はその後さらに、第1稿からクックの仕事に深くかかわってきたゴルトシュミットとマシューズ兄弟によって再改訂され、1989年に出版されています。

オーマンディは、この長大な曲全体をよどみなく仕上げており、聴きやすい演奏になっています。例えば冒頭のヴィオラはかなり遅く演奏されるのが通例ですが、"Andante"の標語のイメージどおり、するすると進んでいきます。決して情緒が無いわけではないのですが、あまり表情過多にならず、淡々と展開していくのを聴いていると、これまでの(というか、正確にいうとこれ以降の)録音とは明らかに違います。おどろおどろしくないのです。それがかえって新鮮ですし、曲の長さ、難しさを忘れさせてくれることにつながっていると思います。惜しむらくは音がイマイチなことですが、これは65年当時のCBS録音の実力で、しかたがないのかもしれません。

前にも書きましたが、「第9」と比べて、この交響曲は死の影が薄いと思います。最終楽章は「第9」と同じ緩徐楽章ですが、各旋律はこちらのほうが生き生きと聞こえますし、中間楽章も、「第9」の潔さよりは、第6、第7あたりの現世的な、どろどろした感じに近いものがあります。マーラーがスケッチに残した「アルマよ、お前のために生き、お前のために死ぬ!」のことばは、死への諦観ではなく、アルマへの愛=生への強烈な執着であったのだということの証が、この第10交響曲なのです。


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コメント 4

おさかな♪

10番の弦楽器の美しさは、5番の4楽章と同じ位大好きです。
ベルリンでお世話になっている、ミカエル先生も好きと言ってました♪
by おさかな♪ (2007-10-09 22:57) 

stbh

おさかな♪さん、ご来訪ありがとう!お久しぶりです!(^_^)/

第10、美しいですよねー。演奏する機会があるといいですね!ミカエル先生によろしくお伝えください!?
by stbh (2007-10-09 23:12) 

サンフランシスコ人

オーマンディ/フィラデルフィアのコンサートに、1回だけ行けました。


by サンフランシスコ人 (2008-12-01 05:48) 

stbh

それはすばらしいですね!私は、フィラデルフィアは大昔に1回しか聴いたことがありません。
by stbh (2008-12-06 09:24) 

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