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Stravinsky/Firebird1911 [バレエ音楽]

ちょっとストラヴィンスキーを聴いてみようかな…。というわけで、「火の鳥」。この曲は、ディアギレフバレエ団に委嘱されたストラヴィンスキーの出世作ですが、彼の改訂癖の対象となっていて、いくつものバージョンがあります。そのうちよく耳にするものは3つ、オリジナル4管編成・約45分の1910年バレエ全曲版と、いちばんよく演奏される、2管編成にして演奏時間も20分程度にした1919年版、そして若干曲を増やしてアレンジも変更した1945年版です。

まあ、多少詳しい方なら、実はこれらのほかに、「カスチェイの(全ての手下による凶悪な、というのが本来の題名です)踊り」で終わる1911年版というのもあるというのもご存知でしょう。知名度も低く、録音もいちばん少ないですが、天邪鬼の私ゆえ、まずはこれから聴きましょう。Towerrecordsへリンクをはります。

Stravinsky: The Firebird & Pulcinella Suite / Boulez

Amazonにもページはあり、上のより古い時代のジャケットがアップされているのですが、在庫は無いし、おまけに火の鳥は「(Suite, 1910)」と書いてあるので、かなり減点です。

Stravinsky: Firebird Suite/Pulcinella Suite

Stravinsky: Firebird Suite/Pulcinella Suite

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「火の鳥」のブーレーズの録音としては、黒地に赤い火の鳥のジャケットでおなじみのNYPとの1910年全曲版(1975年)が有名ですが、この録音はそれより以前の1967年に収録されています。以下の5部分からなり、20分あまりの演奏時間です。

1. Introduction - The Enchanted Garden of Kastchei and the Dance of the Firebird
2. The Firebird's Entreaties
3. The Princesses' Game with the Goden Apples
4. The Princesses' Khorovod
5. Infernal Dance of all the subjects of Kastchei

全体の長さは1919年版と大差ありませんが、「ベルキュース(子守歌)」と「終曲」はありません。その代わりに、第2曲の「火の鳥の嘆願」と第3曲の「金のリンゴと戯れる王女たち(スケルツォ)」が加わっています。また第1曲「序奏と火の鳥の踊り」も、全曲版に準じた、長めのバージョンになっています。そう、この1911年版は、オリジナルの翌年に編まれたものですから、オーケストラの編成もオリジナルと同じ4管で、基本的に「編曲」でなく「抜粋」して作られた組曲のようです。

4管編成の恩恵を受けているのは、やはり「カスチェイの踊り」の幅広い表情でしょう。1919年版以降の2管編成の小ぢんまりした響きと異なり、マッシヴな音の塊が飛んで来る感じ。また、「火の鳥の踊り」など、一見それほどオーケストレイションと関係無さそうな部分でも、響きが整理される前の、同属の楽器を多く使った音色は、いっそう色彩的で印象に残ります。

BBC交響楽団は当時、アンサンブルの正確さなどの面で、LSO、LPOはもとより他のロンドンのオケよりちょっとオツルという評判ではなかったでしたっけ。しかしこの録音で聴く限りは、響きも明晰で音の切れがよく、ブーレーズの意図に良く従っていたのではないかと思います。もちろん正確一辺倒と言うわけではなく、「カスチェイ」の後半など、かなりぐいぐい持っていってくれます。

この録音でブーレーズが1911年版を取り上げた意図はどこにあるのでしょう?ストラヴィンスキー初期のバレエは、発表当初の(よりロシア的・フランス的な)オーケストレイションこそがストラヴィンスキーの情熱の発露であり、当初の姿を伝えていると考えているからではないでしょうか。とはいえいきなり全曲版に望むのは指揮者として危険であるため、この1911年版「火の鳥」の録音をステップにして、1969年クリーヴランドでの「春の祭典」、そしてNYPとの71年「ペトルーシュカ」、75年「火の鳥全曲」と3大バレエを録音し、さらにDGGでの室内楽を中心とした録音へとつなげていったのだとと思われます。

1911年版、あまり例がありませんが、機会があれば、ぜひお試しください。


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コメント 4

吉田

こんにちは。
ブーレーズ盤の火の鳥は3種(でしたっけ)聴きましたが、なかではNYPOとの演奏が好きですね。精緻にして豪胆というか。赤い火の鳥のジャケットも大変よろしいようで。BBCのも変わっていて面白かったです。ただ、やはりオケは少し弱いかなと思いました。
by 吉田 (2007-09-17 10:53) 

stbh

吉田さんこんにちは。いつもありがとうございます。
NYP盤の火の鳥、良い、良いという評判をずっと聴いていて、やっと手に入れ、耳にしたときの鮮烈さは忘れられません。ブーレーズのストラヴィンスキーは、CBS時代のほうがメリハリが利いていて面白いと思います。
by stbh (2007-09-17 22:01) 

Lionbass

「火の鳥」つい先日、N響アワーでやってました。
私はこれまで、弾く機会が一度もありません。
5弦でやると楽しいらしいですが…。

版の違いは、これまで何度も聞いたのですが、すぐに忘れてしまいます…。(苦笑)
by Lionbass (2007-09-18 09:46) 

stbh

Lionbassさん、こんばんは。まだこの曲は弾いてらっしゃらないのですか。

冒頭のチェロ・バスの旋律が、下のDまで出てきます。ここは5弦がほしいところですね。版の違い、これからぼちぼちご紹介しますから、またご来訪ください。この「1911年版」は、まず演奏する機会もコンサートなどで聴く機会も無いと思いますが…。
by stbh (2007-09-18 21:28) 

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