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Verdi/Maschera1&2 [オペラ]

本番まで残り1週間を切った、新宿区民オペラの「仮面舞踏会」公演。せっかくですから、本番前に、オペラのあらすじやCDをご紹介したいと思います。まずCDを出しておきましょう。

ヴェルディ:仮面舞踏会

ヴェルディ:仮面舞踏会

  • アーティスト: ドミンゴ(プラシド), カラヤン(ヘルベルト・フォン), ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団, バーストゥ(ジョセフィーヌ), ヨー(スミ), クイバー(フローレンス), ヌッチ(レオ)
  • 出版社/メーカー: ユニバーサルクラシック
  • 発売日: 1996/07/25
  • メディア: CD

カラヤン最後のオペラ録音です。1989年1~2月の録音で、同年夏のザルツブルク音楽祭のプロダクションに予定されていた歌手たちがそのまま歌っています。このプロダクションの直前にカラヤンは亡くなってしまいました。

膨大な録音を残したカラヤンですが、全集のように網羅的に入れているわけではなく、何度も録音している曲が多いのはご存知のとおりです。しかし晩年に至り、その原則は崩れてきました。その一因はデジタル録音の実用化にあると、私は思っています。80年、「魔笛」を皮切りにカラヤンの録音はデジタルに移っていきますが、ここから、これまで録音されなかったレパートリーがいきなり増えてきました。交響曲ならニールセンの第4、サン=サーンスの第3、ブルックナーの第1~第3、チャイコフスキーの第1~第3、アルペン等、オペラなら「トゥーランドット」(これは、ステージプロダクションをやらなかった、という意味でも特殊でした)、「ドン・ジョバンニ」、「カルメン」等が思い当たります。この「仮面舞踏会」も、カラヤンにとって初録音でした。

ところで、耳学問で仕入れたばかりの知識なのですが、知り合いの歌手の人によれば、「オペラ」というのはもともと悲劇なんだそうです。喜劇は、「オペレッタ」。でも「フィガロ」とか「コジ」って、悲劇じゃないよね…。まあ、モーツァルトはイタリア人じゃないから、いいのかな。「ファルスタッフ」も、別格か。「トゥーランドット」もなんともいえない(「リューの死」で終われば悲劇なんだけど)。でもヴェルディ、プッチーニの多くの作品は、確かにこれでもかというくらい悲しいお話が多いですね。

というわけで、この「仮面舞踏会」も悲劇です。で、お話をご紹介する段取りになるのですが、ここで困ったことがひとつ。あらすじのご紹介というと、「時は元禄、所はお江戸」のように、時代と場所からはじめるわけですが、この曲の舞台は2種類あるのです。それもいずれもイタリアと遠く離れた、スウェーデンとアメリカ。

何でこんなことになったかという背景をちょっと書きましょう。この曲はそもそもナポリの劇場のために作曲されていたのです。このオリジナルはスウェーデンが舞台で、「国王グスタフ3世の暗殺」という実話を元に作られていました(ただし、三角関係はフィクションです)。ところが、ちょうど王制が揺らいでいるナポレオン3世時代のこと、ナポリでの検閲であれこれ文句をつけられ、何度か修正案を提示したものの、調整は不調に終わり、とうとうヴェルディはナポリでの上演を撤回してしまいます。

すでに20作のオペラを発表し、人気の高かったヴェルディの新作ですから、そこは引く手あまたで、検閲が比較的緩やかといわれていたローマで上演の許可が出ます。しかし、やはりここでもオリジナルの舞台設定は受け入れられず、結局、時代を1世紀さかのぼらせ大西洋を渡り、植民地時代のアメリカでのできごととする(当然、国王は出てきません)ことで決着がつきました。このことについては、資料によって「ヴェルディは納得した」というものと「ヴェルディはまだ不満だった」というものがありますが、もともとの台本で音楽を練ったヴェルディとしては、やはり設定を変えるのは喜べなかったのではないかと思います。

こういった経緯を経て、アメリカが舞台の「慣用版」と、スウェーデンが舞台の「原典版」ともいうべき設定が並立するようになりました。カラヤンの録音は、一部の配役を除き、舞台・登場人物名は「原典版」によっていますが、今回の公演は「慣用版」によっているので、以下の記述は、あえて「慣用版」に準拠します。また、人物名は新宿区民オペラでの表記に準じました。

舞台:17世紀末、植民地時代のアメリカ・ボストン
主な登場人物:ボストン総督リッカルド(Ten)、総督の秘書で親友のレナート(Bar)、その妻アメリア(Sop)、総督の政敵サミュエル(Bs)とトム(Bs)、小姓オスカル(Sop)、占い女ウルリカ(MS)、水夫シルヴァーノ(Bar)、判事(Ten)、アメリアの召使(Ten)

第1幕第1場(総督府の広間)
総督をたたえる者と憎む者がいる中、総督リッカルドが登場し、オスカルから仮面舞踏会の招待者名簿を受け取り、愛しいアメリアの名前を見つけて心をときめかす。そのときアメリアの夫レナートが現れ、リッカルドは一瞬取り乱すが、それに気づかずレナートは、リッカルドが政敵から狙われているので注意するようにと忠告する。そこへ判事が入ってきて、占い女ウルリカを追放するよう申し立てるが、オスカルが懸命に弁護し、それを聞いたリッカルドが、漁師に変装してウルリカの家に行くと言い出す。

第1幕第2場(ウルリカの家)
リッカルドがウルリカの家へ到着すると、彼女が水夫シルヴァーノを占うところだった。「間もなく金と地位が与えられるだろう」というウルリカの予言を聞いたリッカルドは、シルヴァーノのポケットに辞令を書いた紙を入れる。シルヴァーノはそれを見つけて狂喜し、一同は予言の正しさに驚く。そこへアメリアの召使が現れ、内密に占ってほしいとウルリカに告げる。これを見たリッカルドは、ウルリカが一同を退場させても部屋に隠れて、アメリアが「不倫の人を愛しく思う、苦しい心を消す方法を教えてほしい」と告白するのを聞いてしまう。ウルリカは死刑台に生える薬草を真夜中に摘んでそのしずくを飲むように指図する。勇を鼓して薬草を摘みに行く決心をするアメリアを見て、リッカルドは一緒に死刑台に行こうと決心する。
アメリアが立ち去り、入れ替わりに人々が戻ってきたところで、変装しているリッカルドが自分の未来を占うようウルリカに言う。リッカルドの手を見たウルリカは、何度か拒否するが、ついに間もなくリッカルドが死ぬことを告げ、「最初に握手したものに殺される」とまで言う。リッカルドは周りのものに手を出すが、誰も握手しようとしない。そこへレナートが現れ、リッカルドは駆け寄り、彼の手を握る。リッカルドは変装がばれてしまい、彼をたたえる合唱と、暗殺に失敗した政敵のぼやきとで幕となる。

第2幕(死刑台のある野原)
暗闇からアメリアが怯えながら歩いてくる。真夜中の鐘を聞いて倒れそうになってしまうところへリッカルドが現れ、彼女への愛を告げると、アメリアも自分の心のうちを告白し、「愛の二重唱」となる。そこへレナートがやってきて、政敵が狙っているとリッカルドに告げる。リッカルドはひとりで逃げることを躊躇するが、レナートに、女性のヴェールを取らず、話さずに連れて行くことを誓わせて、その場を去る。入れ替わりにサミュエル、トムと仲間たちがやって来るが、すでにリッカルドがいないことを知り、腹いせにアメリアの顔を見ようとする。レナートはこれを防ごうとするが、もみあううちにヴェールが落ち、アメリアの正体がばれてしまう。レナートに哄笑を向けるサミュエル・トム一派、妻を奪われた怒りに震えるレナート、なすすべの無いアメリアのアンサンブルで幕。

カラヤン晩年の録音は、ゆったりとしたテンポで滔々と歌い上げるものが多いように思えますが、この録音は、全体のテンポこそ遅めなものの、軽快なところも随所にあり、幅の広い表現を聞かせてくれます。ただ、慣習なのかもしれませんが、第3幕で一部にカットがあります。最初に楽譜を見ながら聴いたときは、何が起きたのかわからなくて、かなりうろたえました(苦笑)。


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コメント 3

サンフランシスコ人

ドミンゴは、サンフランシスコ・オペラに頻繁に出演しました。
by サンフランシスコ人 (2009-05-04 04:16) 

stbh

そうでしたか。SFオペラと相性がよかったのでしょうか。
by stbh (2009-05-05 19:24) 

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