SSブログ

Turandot三日坊主日記(3) [実演]

9月3日(日)晴れ

いよいよ千秋楽。今日は14時開演なので、リハーサルも開場前数十分、ちょこちょこっとテンポ運びの確認だけ。昨日に比べて緩急をつける歌手の方が多く、指揮者やオーケストラは心してかかる腹積もり。オペラは始まってしまえば歌手が主役ですから、オーケストラもコンサートと違って基本は伴奏。しかし出るところは出る。そのへんの駆け引き・バランスは奏者にはわからないので、指揮者・副指揮者の指示に従うことになります。

 

写真は2階(3階)席から見たピット。今日は本当に時間がなく、リハ中の写真はとれませんでした。もう開場した(^^;客席へ駆け上がって、とってきました。こうやってみても、本当にピットは狭いですね。そうそう、緞帳の上に白く字が書いてあるのがおわかりになるでしょうか。「Turandot/トゥーランドット」と2行に書いてありまして、ここが字幕になります。リハ中に天井のほうに巨大なウィンドウが出ていたこともあったので、PCを使って表示させているようです。こういう字幕はもう一般的なものなのでしょうか?技術は進んでいますねえ。でも「めくり」(ページ切り替え)は進行に合わせて手作業でやっているようで、リハーサルでは時々行き過ぎたりしていました(^^;

昨日から、ステージ上の楽器の足元に、落下防止か目隠しか、黒い板が立てられました。上の写真だと、オルガンペダルの前の部分にあるのがわかるでしょうか。これのおかげでマレットやスコアなどを放り出しておいても大丈夫。多少の物音も客席には聞こえません。精神的にかなり楽になります。毎日楽器のセッティングをわずかずつ変えてきましたが、そういう楽しみも今日でおしまい。

今日も1階はほぼ満席、2階席も中央ブロックは最後列まで人が入っている、大入りです。昨日、いちど本番を経ているので、オーケストラもややリラックス・ムードで開演。…あれ?ちょっと縦の線がそろってないかな?お互いの音を聞いてしまっている?王子の緩急は予想通り強烈だ。負けるな、異国の人よ!じゃなかった、負けるな、オーケストラ!音楽が進むうちにだんだんテンポ変化にも追従できるようになって、3大臣登場のシーンも何とか無事通過。

舞台上にいると、ピットでは経験できないことがいろいろあります。今回の演出では、刑吏がペルシャの王子の首をぶら下げて去っていくのを、カラフが呆然と見送るシーンがあります。このとき、私の真正面に首が来るのです。別に苦悶の形相とか血みどろとかではないのですが、最初リハーサルで見たときはちょっとぎょっとしました。また、リューのアリアは、カラフの背中に向けて歌いはじめられるのですが、このときはカラフもリューも上手、すなわち私の方を向いているので、私だけが真正面からリューの表情を堪能できる、という、これはお得なほうのお話。

第2幕の3大臣は今日も快調。踊ったりしぐさをしたりしながら声はきちんと聞かせなければいけないので、すっくと立って朗々と歌うより、こういう役はある意味むずかしいかもしれません。場面転換はバンダの金管が大活躍。今回はトランペット・トロンボーン計8人でこなしています。表に比べると出番は少ないですが、劇の構成には重要です。練習中はいろいろありましたが、本番は両日ともしっかりやっていました。

チャイニーズ・ゴング唯一の重音で唯一のソロ(ほかに誰も音を出していない)は、皇帝が3度のカラフの挑戦宣言に「よろしい」というところ。CDなどではあまり目立たない(;_;)のですが、やるほうは緊張します。ここはさすがに指揮者とアイコンタクトしなければならないので、譜面ももちろん、楽器もぜんぜん見られません。直前にたたく場所を確認したら、「うりゃ!」 あとは野となれ(^^; 本番は幸いに2回とも成功したと思います。

緊迫した謎の場面から、王子が"La mia vittoria"と歌いだして"Turandot!"と叫び、合唱が呼応してクライマックスに至る急速な転換は、いつ聴いてもゾクゾクします。聞きほれていると直後の出番にオチるのよ(^^; 一度くらい客席で通して聞きたかったなあ、と、これはかなわぬ願い。聴く機会はこれからもあるかもしれませんが、演奏する機会はまあまず二度とないでしょうから。

王子の謎、"Nessun dorma"の旋律のあとの、アンサンブルの難しい弱音の部分が過ぎると、一気に終幕のクライマックスへ。オルガンも入り、全曲中最大の音量が鳴り響く。「グランド・オペラ」としての面目躍如ですね。合唱の方々も、人数はあまり多くなく、失礼ながらお年を召した方が多いようでしたが、声はよく出ていて、オーケストラに負けていない。やっぱりオペラが好きな人たちなんだろうなあ。話の筋としては、皇帝がすっかり王子のファンになって応援しているところが面白いですね。「こいつなら謎が解けるかもしれない」と思ったのでしょうか。

第3幕、冒頭の役人のお触れの裏に「(舞台上の)遠くのドラ」というパートがあるのですが、二転三転の末、チャイニーズ・ゴングの低音を使うことに。カラフが第1幕で叩いた44インチの大ドラを使いたかったな…。決まったのは最後の練習のあとなので、ステリハの初日の合間に音色の検討をあたふたとやって本番に臨みました。そのあとは"Nessun dorma"のアリア、今日の王子も絶好調、大拍手も絶好調でした。そして、色仕掛け、宝物仕掛けも通じないところへとらわれのリューとティムールが登場。「皇女様、それは、愛でございます」からリューの自害へ、いちばん悲痛な場面を迎えるところは、客席も固唾を呑んで見ているようでした。やっぱり泣ける…

第3幕も後半になると、「ああもう終わってしまう」感が次第に強くなってきて、せつなくなります。とはいえ、ここでやめるわけにはいかず(^^; 全員が終幕に向けてまっしぐら。怒涛の幕切れとともに暗転-大拍手。終わったという充実感が6、終わっちゃったという空虚感が4くらいの気分のなか、カーテンコール。今日はバンダの人も登場しました。オルガンやサックスは副指揮者やピアニストが担当していたのか、カーテンコールにはいなかったようでした。ちょっと残念かも。

今日も主役3人へは一段と大きい歓声。堪能させてくれました。そして、トゥーランドット最後のフレーズ「その名は、愛!」からフィナーレまでをアンコールに演奏して、イッツ・オール・オーヴァー・ナウ。準備段階から長きに渡ったトゥーランドット公演は、すべてを終えたのでした。

終演後は急いで着替えて楽器のかたづけ(「リセッティング」といいます)。シロフォンやチャイニーズ・ゴングを分解してコンパクトなケースにしまうのは、はじめてみるとなかなか面白いのですが、さすがにそれをサボって写真を撮るわけにはいきません…。今回は膨大なレンタル楽器が必要で、多くの方にいろいろな形でお世話になりました。そのほかにも木琴のMさんは自分のマリンバから音板を外して来たし、最後のクライマックスなど用にほぼ全員がトライアングルを持ってきたし、「通常演奏されるオペラとしては最大級の打楽器を必要とする」この曲を、打楽器陣全員、大いに堪能させていただきました。

ロビーでは、打族は昨日も今日もリューさんと記念撮影(私のカメラではなかったので、残念ながら写真はありません)。昨日のリューさんは、ご自身のブログをもってらっしゃいます。今日のリューさんにはサインもしていただいてしまいました。ちなみに男性陣からの人気は、昨日のかわいいリューさんと今日のスリムなリューさんでまっぷたつ(^^;

さて、打族の打ち上げは歌舞伎町の「上海小吃」へ。うわさどおりのなかなかディープなお店。普段は食べられないようなものを、ということで豚の脳みそ、鳩(頭はあまりおいしくなかったそうです)、蛙などに一同舌鼓を打ちました。一番人気は鴨の血のにこごり。上海から送ってくるということでしたが、さっぱり、とろーりしてたいへん美味でした。

われわれが大騒ぎした奥の部屋から、狭い通路を通して入り口の目印「童男童女」を見ています…よくわかりませんね。はっきり見たい人は上のリンクからお店のHPへどうぞ。北京でなく上海でしたが、こちらでも中国を堪能して、トゥーランドット三日坊主日記の書き納め。ごらんいただきありがとうございました。当ブログは、しばらくリハビリのためお休みのあと、いつものようにぼそぼそと再開します。


nice!(1)  コメント(6)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

nice! 1

コメント 6

leeswijzer

> 今日のリューさん
にも実はミクシィのサイトがこっそりあったりして,実は実は私信メールもいただいたりしたのですが,それはヒ・ミ・ツということで.ハイ.
by leeswijzer (2006-09-05 18:45) 

stbh

おおー。日常ヴァーチャルの当ブログへ、非日常リアルから初のお客様ですね。こ、これはネット上のX攻撃か!
> 実は実は私信メールもいただいたりしたのですが
え゛ー、い゛い゛な゛ー、ずるいなー
おっといけない、非日常モードにトラップされてしまった。えーでもいーなー。リューさんおふたりともすてきでした。ほかの歌手の方たちともお話したかった…
by stbh (2006-09-05 22:34) 

ようちゃん

お疲れさまでした。ご盛況のご様子、記事にて拝見させていただきました。
それにしても、この様にオペラを演奏できるのは、羨ましい限りです。
私もいつかオケ・ピットで弾いてみたいです。
「終わったという充実感」と「終わっちゃったという空虚感」、これは本当にそうですよね。この相反する気持ち。この気持ちを引きづったまま、いつもの会社生活に戻る時などは、かなりキツイ思いをしております。
by ようちゃん (2006-09-07 00:00) 

stbh

ようちゃん さん、コメントありがとうございます。おかげさまで、ほぼ3日間、堪能しました。たくさんのお客様においでいただき、燃えましたね~(笑)
しかし2日連続本番というのがこれほどつらいとは。おっしゃるとおり、「かなりキツイ思い」をしております。ほんとに(^^;
by stbh (2006-09-07 19:43) 

mozart1889

オペラの演奏できるなんて、stbhさん、スゴイです。
素晴らしいですね。
そして、ご盛況、何よりでした。お疲れ様でした。
トゥーランドットはビデオでしか観たことがありません。音楽はさすがプッチーニ、美しい旋律が湧出しますね。大好きなオペラです。
荒川静香さんのおかげで、クラシック音楽に無縁な愚妻まで「トゥーランドット」という言葉を知るようになりました・・・・(^^ゞ。
by mozart1889 (2006-09-10 05:34) 

stbh

mozart1889さん、ご来訪とコメント、ありがとうございます。
知人に誘われて参加しました。もともと、曲が壮麗で大好きだったので、しばらくぶりの演奏だったのですが、やらせてもらいました。貴重な体験ができたと思います。
荒川静香さんの前からこの曲に決まっていたそうですが、タイムリーだったことも幸いして、多くのお客様の前で演奏できて幸せでした。
通常の記事もぼちぼちupしますので、またよろしくお願いします。
by stbh (2006-09-10 10:01) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。