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Puccini/Turandot3b [オペラ]

トゥーランドットのご紹介、最後は、プッチーニが完成できなかった補作部分になります。今回は明らかに反則(車で聴けない)なのですが、これを取り上げます。

プッチーニ:歌劇《トゥーランドット》全曲

プッチーニ:歌劇《トゥーランドット》全曲

  • 出版社/メーカー: ユニバーサルクラシック
  • 発売日: 2006/06/07
  • メディア: DVD

 

ありゃあ、アマゾンではもうユーズドしか出ていないのですね…。リアル店頭ではまだ売っていたのに…。さすがに今年、この値段(税込2940円)で出たら売れるだろうなあ。おまけに、定番ともいえるゼッフィレッリの舞台ですからね。実は私も行きました、1988年のスカラ座引越し公演@NHKホール。数少ない生オペラ経験のうちのひとつです。だから多少舞台の様子はちがいますが、やはりこの絢爛豪華な舞台=「トゥーランドット」となってしまっています。同じゼッフィレッリの「ラ・ボエーム」と同じ(こちらはMETで見たのですよ…えへへ)くらい、個人的には曲と舞台が切っても切れない関係にあります。

1987年4月の録画ですから、約20年前ですね。最初に通してみて感じたのは、ちょっと不思議なカメラワーク。いちばんの大写しは終始王子=カラフのドミンゴ、次はリューのレオナ・ミッチェル。なぜか、エヴァ・マルトンはいつでもちょっと引いたアップになっています。これ以上近づくとボロが出るから?いえいえ、豪華な衣装を皆さんに少しでも多く見ていただきたいから… まあ本当の根拠は、カラフとリューが主役だ(と映像の編集者が考えている)、というあたりなのではないかと思っています。

冗談はさておき、CDで音楽に集中するのもよいですが、やはりオペラは動くもの、それこそ百聞は一見に如かず…と思うでしょ?でも、私は舞台ものを映像で見るのは、正直いまひとつなのです。音楽は好きなところに集中して、あるいは全体を聴けますが、舞台を映像化したものはそうはいかない。客席からは見られないような角度や大きさで見ることができる反面、舞台全体を見渡すチャンスが限られます。これは現在の再生技術ではどうしようもないことなのですが、どうも物足りなさを感じてしまいます。

とはいえ、この曲とか、「カルメン」とか、「椿姫」とか、「フィガロ」とか、有名曲を映像で親しむのは、視覚的インパクトがあってわかりやすいと思います。もうひとつ、映像の利点は字幕が出ること。対訳をいっしょうけんめい見ながら聴く、というのはもう何年もしていないですから、だいたいの内容はわかっていても、せりふひとつひとつの意味は不明瞭でした。映像を見ていれば自然に何を言っているかわかるのですから、たいへんありがたいことです。

さて、おもな「トゥーランドット」の映像というと、あとはこの2つでしょうか。

プッチーニ:歌劇「トゥーランドット」

プッチーニ:歌劇「トゥーランドット」

  • 出版社/メーカー: BMG JAPAN
  • 発売日: 2005/06/22
  • メディア: DVD

 

紫禁城ライヴ↑と、↓ベリオ補作版。

プッチーニ:トゥーランドット(ベリオ補作版)

プッチーニ:トゥーランドット(ベリオ補作版)

  • 出版社/メーカー: TDKコア
  • 発売日: 2003/12/03
  • メディア: DVD

いずれも、私は見ていないので何ともいえませんが、正統派というよりはイベント的な意味合いが強いのではないかと思います。ベリオ版は未視聴です。日本でも取り上げられたりして、急速に広がる気配を感じなくもないのですが、まだ「ベリオ版を知らずにトゥーランドットを語るべからず」みたいなことには、なっていないでしょう。ベリオ版については、例えばこちらのサイト

http://de.geocities.com/ella_und_louis/beriosturandot.htm

などに詳述されているので、探してみてください。

今回は、公演で使うアルファーノ慣用版(多くの録音で普通に使われている版)に準拠します。

リューが死んで群集も去ってしまうと、いきなり王子はトゥーランドットに迫ります。あまりに唐突な展開は、アルファーノの補作がまず批判される部分ですが、実はここに、もともと間奏があったのにトスカニーニが切ってしまったようです。トゥーランドットは「私は神の娘なのだ!」と王子を拒み続けます。しかしついに(低音と打楽器の「ダン!ダン!ダダン!」)トゥーランドットは屈し、王子に口づけを許してしまいます。そして、夜明けが迫っていることを舞台裏の子供や男が歌います。

「私の栄光は終わってしまった」というトゥーランドットに、王子が「違う、栄光はこれから始まるのだ!」と返します。かつてここで、フランコ・コレッリがヴィルギット・ニルソンに向かって「そうだ、終わってしまった!」と歌ったとか。

(このあとのトゥーランドットが歌う「初めての涙の」の前後は、今回の公演では省略されます。)そして王子は、自分がティムールの息子、カラフであると名乗ったところで、夜明けを告げるラッパが響き、カラフは「お前が勝ったのだ!」とトゥーランドットに向かって告げます。

そして皇帝が出てきて第2場になり、トゥーランドットが「この人の名がわかりました。その名は、愛!」と歌って、さあどうなることかと思うと、いきなり終幕の合唱(太陽の賛歌、旋律は第2幕にも出てきた「誰も寝てはならぬ」のサビの部分)になって、いささか唐突に終わってしまいます。これはどうやらトスカニーニが、アルファーノの補作の「アルファーノ色」を嫌って、短くしてしまったからのようです(「リューの死」の直後も同様)。

リコルディのスコアも、初版は初演用に用意されたアルファーノのオリジナルだったそうですが、第2版以降はトスカニーニによる短縮版に変わって、現在に至っています。通常「アルファーノの補作」といわれるものが、実はトスカニーニの影響が大きかったのですね。

さて、第2幕後半のときに、最後は第3幕より第2幕のほうが盛り上がる、という話を書きました。第2幕でのオルガン、バンダという物量攻撃もさることながら、伸ばす合唱に対してオーケストラが付点音符で効果的にクレッシェンドしてあおっているのに対し、第3幕は合唱とオーケストラがただ重なって八分音符や全音符を奏でているだけなのですね。最後から2小節目に、ff のままの合唱に対していったんオーケストラがppになってクレッシェンドしますが、仕掛けと言えそうなのはそれだけ。

あちらこちらに細かい音符をちりばめていやがうえにもエキゾチックな第3幕前半までに対して、ストレートすぎるという印象はぬぐえません。この曲のサウンドを大きく支配している、クロマティック・パーカッション(音程のある打楽器のことを総称してこう言います。通常、ティンパニは含みません。)の木琴、バス・シロフォン、鉄琴、チャイム、ゴングの出番も、リューの死以降はほとんどありません。さすがにちょっと一本調子で、トスカニーニが第2場をばっさり切ってしまい、時間的にはアンバランスになってしまったのも、やむをえないかもしれません。

さて、新宿オペラのトゥーランドット、いよいよ次の週末が本番です。

http://www.shinjuku-opera.com/

練習もいよいよ大詰めで、今回は声楽との合わせになりました。全員そろうと音響も充実しますし、なによりソリストたちが素敵。

真ん中がソリスト陣、右側の立っている方達が合唱。左奥がバンダで、練習中に指揮者が見えないように(本番では舞台裏で吹くため)、反対向きに座っています(奥で立っているのが副指揮者)。右の楽器はチューブラー・ベルズですね。上段のチューブが半音の位置にあるのがわかりますか?

実際の練習場所ではもっとダイナミックに見えるのですが、いかんせん練習中に指揮者をとるわけにもいかんし…。まあこのくらいで勘弁してください。


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コメント 3

stonez

こんにちは、コメントではご無沙汰してしまいましたが、いつも拝見しております(^^
今回のトゥーランドット公演、あれこれと計画を練っていたのですが諸事情で行けず、とても残念です。。。ご成功をお祈りしています!
ところで、stbhさんが取り上げられたトゥーランドットDVD(メトロポリタン歌劇場盤)を最近初めて見ました。アルファーノが担当した部分に入るとちょっとした「空気の違い」の様なものを感じましたが、それでも豪華なセットと圧倒的な演出がとても印象的ですね。公演でもアルファーノ版とのこと、きっと感動的なトゥーランドットになるでしょうね!
by stonez (2006-09-02 08:19) 

stbh

stonezさん、ご来訪とご声援ありがとうございます。初日が終わり、これから千秋楽(笑)に向かうところです。昨日は大成功でした。今日はそれに輪をかけた成功にするべく、邁進してきます(^^
なかなかMETのようなセットは使えません。今回の舞台はシンプルでちょっと抽象的な演出です。オペラは総合芸術とはいえやはり、プッチーニの音楽が最大の感動の源だと思います。それに参加できる貴重な機会が得られたのは、ありがたいことだと思います。
by stbh (2006-09-03 09:12) 

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