Mayuzumi/NirvanaSym [交響曲(独墺以外)]
月曜日の新聞でリゲティが亡くなったことを知り、「現代音楽がまたひとつ過去に行ってしまった」と思っていたら、日本の現代音楽の普及に多大なる貢献をした人が亡くなってしまいました。これを聴かねばなりますまい。
岩城宏之さん、享年73歳。80歳以上まで活躍する大指揮者が増えてきている中では、早すぎると思います。現代音楽を紹介し続け、音楽を身近なものに感じさせてくれることに心を砕いてきました。病弱な幼少時からは想像もできないほど驚異的な活動を続けた壮年期、また晩年は首の炎症やガンと闘いながら、アンサンブル金沢を育て上げ、「振るマラソン」などとてつもない企画に挑戦し続けました。
黛敏郎氏とはN響研究員時代から親交が深く、彼の作品をたびたび録音や演奏会で取り上げています。この録音は唯一の黛敏郎監修・N響以外・デジタル録音で、シュヒター/N響以来のセッション録音でもあります。95年7月、東京芸術劇場大ホールでの録音は、音質が良くなった分、この曲の持つ雰囲気として認識されていた不気味さ、怖さ、得体の知れなさが減ったいっぽう、純粋な音の響き(カンパノロジー!)や迫力を楽しめる感じがして、かえって古典的な曲のように聞こえます。(「涅槃」の曲自体については、また別の機会に書くことにします。)
岩城さんの活躍はひとつ音楽(ステージ)にとどまらず、マスコミへの露出(CMもいくつか出ていたと思います)やさまざまな文筆活動を通じても音楽の普及に貢献してきました。数々のエッセイに残されたその飾らない人柄と暖かいまなざし、そして何より音楽への熱い想いが、多くの共感を呼んだのでしょう。彼の数多くの著作の中では最初期に入るものですが、個人的に最も印象に残ったものとして、これがあります。
新刊は無いのですね…。黄版では止むを得ないか…。実は、当然あるものと思って書架を探したのですが、無い!あれー、誰かに貸しちゃったのかなぁ。本はなくなるから、あまり貸さないのに…。「フィルハーモニーの風景」はあるんですけどね。
こちらも現役ではないようですが…。図書館ででも探してみてください。先日のNHKの追悼番組に出てきた、カラヤンに教わったエピソード(オーケストラを「ドライヴ」するな、「キャリー」せよ)が載っています。
さて、なんで「楽譜の風景」にこだわるかというと、私自身が楽譜フェチ(笑)だからというのがあるのですが、この「涅槃」について言及されているからなのです。そんなわけでうろ覚えなので、間違っていたらごめんなさい。
たぶんこのときの録音の時点でだと思うのですが、黛敏郎が「新版が出たから、君に献呈するよ」といって、この曲の楽譜を持ってきた。それまで岩城はこの作品を自筆ファクシミリ版のスコアで振っていたのですが、新しい、製版された楽譜は非常に振りにくい。冒頭の低弦の7連符とかがあるのですが、どうにも譜面から音がして来ず、非常につらい思いをして振ったということが紹介されています。
ハルサイの振り間違いの話(これも上の本に出ています)からもわかるように、楽譜は「パターン認識」による直感的な理解、というかまさに認識が重要のようです。ことにスコアは実際の練習の場面では、いちいち全部読んでいるわけではなく、スタディしたこと(どこで何が、どのように鳴っている)を思い出すトリガーになるわけですから、書かれている内容が同じでも、レイアウトや線の濃淡、文字の配置などでわかりやすさが大きく違う、というのはわかるような気がしました。
来月には東京のスーパー・アマチュア・オーケストラ、新交響楽団を振ってこの「涅槃」などを演奏する予定だったようですが、それも果たせませんでした。これまでのご活躍に敬意を表するとともに、ご冥福をお祈りいたします。合掌。
新交響楽団ってすごいですね・・・。
バイオリンのオーディション曲は、
モーツアルトのバイオリンコンチェルト 第5番の1楽章でした。
偉大な指揮者が亡くなってしまって残念ですが、
先生方の教えはきっと残ると思いました。
by おさかな♪ (2006-06-16 22:30)
おさかな♪さん。コメントありがとうございます。
新響は、首都圏の大学オケでトップをやっていたクラスの人がぞろぞろ集まっていて、すげーメンバーなのです。故芥川也寸志さんの薫陶を受け、現代音楽もやすやすとこなしてしまいます。
機会があれば、一度聴きに行ってみてください。
by stbh (2006-06-17 10:53)