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Britten/WarRequiem5 [声楽曲]

今回ご紹介する演奏は、私の「戦争レクイエム」体験、ブリテン体験の原点とも言える、ちょうど30年前のものです。

ソプラノ:ジェーン・マーシュ
テナー:ジャン・ファン・レー
バリトン:ローラント・ヘルマン
オルガン:ルドルフ・ショルツ
児童合唱:ウィーン少年合唱団
指揮:レイフ・セーゲルスタム
補助指揮:マクシミリアン・ブルーメンクロン
オーストリア放送交響楽団、合唱団
1976年7月31日、ザルツブルク音楽祭ライヴ

先日、読響で「復活」を振ったりしたセーゲルスタムの若かりしころの演奏。放送のときに何らかの紹介はあったはずですが、おぼえていません。これまで聴いてきた録音と比較すると、特に合唱のテンポのメリハリがきいていて、緩急の差が大きいです。例えば"Tuba mirum"などはぐいぐい押してきますし、"Lacrimosa"は反対に止まってしまいそうな、ため息をつきながら歩くような運びになっています。

V Agnus Dei

「戦争レクイエム」のなかでもっとも短いこの曲を、セーゲルスタムはかなりゆっくりと進めます。全6曲のうち、唯一、室内オーケストラが曲を始めますが、その旋律は遅い5/16拍子で、全曲を通して象徴的なF#とCの間をスケールで上下します。そこへテナーが木管を伴って「爆撃された道路の裂け目で絞め殺されるようなことがあるのだろうか。この戦争で、主も四肢を失った。しかしその使徒たちはばらばらに隠れ、今は兵士達が主とともに耐える。」という強烈な歌詞を、淡々と歌います。

合唱は再び座っており、無表情に"Agnus Dei"を、曲頭のスケールの旋律でひそやかにpppで歌って応えます。テナーは何度か盛り上がりますが、合唱はひたすらpppで応え、ついに合唱が嬰ヘ長調の和音を延ばすと、それに同化するかのように、これまで合唱が歌っていたスケールをやや模倣してテナーが"Dona nobis pacem."と、全曲中唯一、ラテン語で歌って曲を閉じます。

これまで、合唱が劇的な表現を受け持ち、テナーとバリトンがシニカルにオーエンの詩を歌っていたのが、ここだけ逆転したように感じます。この交替は、終曲ですべてが和することを予感させる、心憎い構成だと思います。

この演奏会は、記録には残していなかったのですが、たぶん半屋外の「フェルゼンライトシューレ」で行われたものだと思います。この"Agnus Dei"の終わり近くから雨が降り出し、屋根に雨のあたる音が聞こえるのです。終演時は雨音がしないのでどこかでやんでいるのですが、"Libera me"のどこでやんでいるか、何度聴いても音楽に耳が行ってしまって、認識できません。

むろん全曲そろってはじめて完成した作品なのですが、わけてもこの終曲は感動的です。またしばらく間をあけてご紹介します。

なお、ブリテンはこの演奏があった年の12月4日に亡くなっています。この演奏が、例えばブリテンの平癒を祈るような意図があったのかどうかも今となってはわかりません。ご存知の方がいらっしゃいましたら、ご教示いただけると幸いです。


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